『New スーパーマリオブラザーズ 2』
2. 『3Dランド』のスタッフと共に
- 岩田
- まずグラフィックに関してお訊きしますけど、
今回は、『3Dランド』の開発に関わっていた、
東京制作部からもスタッフが参加したんですよね。 - 石川
- はい。そのスタッフが加わったことで、
2Dマリオの新たな表現に挑戦することができました。
そもそも『3Dランド』というタイトルは、
立体視をうまく使って、いろんな表現を試していた
プロジェクトだったと思うんです。 - 岩田
- そうですね。
- 石川
- ですからもし、東京制作部の人たちの
そういった経験や、ノウハウがない状態で
単純に2Dマリオをつくろうとすると、
たぶん、「立体視を活かす方向には
いかなかったのではないか」と思います。 - 岩田
- ふつうに考えようとすると、
横スクロールのゲームだから、
手前と背景があって、それが立体に見えるところで
発想が止まってしまいますよね。 - 石川
- そうだと思います。
なので、最初につくった試作は、
キャラクターのモデルだけを
3Dでつくっていたので、
立体的には見えたんですけど、
地形は平面的でペタッとしていたんです。
ところが、東京制作部から来たスタッフが
そこをうまいぐあいに昇華してくれました。
具体的に言うと、背景の地形が1枚絵なのに、
ちょっと立体的に見えるようになって、
なおかつ3Dボリュームをオンにすると、
背景に奥行きが出るだけじゃなく、
“ぼかす”という表現が入ったんです。 - 岩田
- “ぼかす”。
もともとはカメラ用語で、CG用語にもなった
被写界深度と呼ばれる、ピントのあっているところはクッキリと、
ピントのあっていないところはぼけて見える表現ですね。 - 石川
- そうです。
被写界深度というのは、ピントの合う奥行きの範囲のことで、
被写界深度が浅いとか深いとか言うんですが、
3Dボリュームをスライドさせると、
それに連動して被写界深度が浅くなり、
背景がぼけるようになっているんです。
これ、言葉で言うより、
実物を見ていただいたほうが・・・。 - 岩田
- はい・・・3Dボリュームをオンにして・・・
わ、ほんとだ(笑)(※9)。
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- 石川
- 最近のデジカメには、奥がぼけて、
手前もぼかすような仕様が入っていたりしますけど、
「それと似たようなことができないか」と、
手塚さんが東京から来たスタッフに対して
依頼した結果、実現できた表現なんです。
- 岩田
- これ、すごいですね。
自社のソフトに対して、
「すごい」と言うのも何ですけど(笑)。 - 石川
- (笑)
- 岩田
- つまり、カメラのレンズの絞りを変えるような感じで
見えるんですね。 - 石川
- そうです。
被写界深度を浅くするということは、
カメラでいうとレンズの絞りを開いて
取り入れる光の量を多くして映像を明るくすることになりますから、
ちょっと光がぼやっと明るくなったりするんです。
そういうところまでこだわってつくりました。
さらに、手前のキャラにピントが合うので、
とても遊びやすくなったと思います。 - 岩田
- つまり、見た目で「おおっ」と驚くだけでなく、
手前のキャラに集中できるので、
遊びやすさにもつながったんですね。 - 石川
- そうです。ゲームで
こういった表現はあまりなかったと思いますし、
『3Dランド』のスタッフという、
別の血が加わったことで、実現できたんだと思います。 - 岩田
- そもそも2Dマリオというのは、
伝統的なグラフィック表現をしてきましたけど、
その世界観を、従来どおりに延長、発展させる以外に、
何か新しいトライはありましたか? - 石川
- 今回は、
夜や夕方のシーンを入れてみました。
これ、いままでとは雰囲気が違うと思うんです。
- 岩田
- いつでも青空でしたからね。
- 石川
- そうです。でも、今回は
そこを「ちょっと変えたい」という気持ちが、
デザイナーのなかにあったんです。
デザイン的にはいままでの延長上なんですけど、
夜景になると、ちょっと違う印象になるので・・・。 - 岩田
- 間違いなく『マリオ』なんだけど、
ちょっと見たことのない世界ですよね。 - 石川
- はい。そこで、みんなが
「おっ」と感じて、いい意味で
「違和感が生まれるといいな」と思いました。
あと、キャラクターに関しても、
たとえばテレドンという新しい敵がいるんです。
テレサをすごく大きくしたようなキャラなんですけど、
テレサって、マリオのほうを向くと、
恥ずかしがって止まりますよね。 - 岩田
- 照れるからテレサなんですよね。
- 石川
- はい(笑)。だからテレドンも
最初は恥ずかしがって
顔を手でおおうんですけど、
チラ見しながらにじり寄ってくるんです。 - 岩田
- はい(笑)。
- 石川
- いままでの『マリオ』を知っている人にとっては、
「あれ? にじり寄ってきた!」
と裏切られた感じがあって
「面白いかなぁ」と思いました。
今回は、ところどころで
いい意味でお約束が裏切られることで
新しい感じが味わえると思います。 - 岩田
- そもそも今回の『Newマリオ2』を少しだけ見て、
「あ、単なるいつもの『マリオ』だな」
と感じている方も少なくないと思うんですね。 - 石川
- そうですね。
- 岩田
- だけど、実際に触って遊んだときの感覚でいうと、
「またいつもと同じだろう」と思ってなめていると、
「ケガをしますよ」というような印象がありますね。 - 天野
- そうなんです。今回は
「怒られるかな・・・というくらい尖ったものを考えよう」
という意識がスタッフのなかに強かったので、
いままでにあった仕組みでも、
ちょっと違うかたちにすることで、
新しく感じられるように変えた部分があるんです。
たとえば、今回は「ダッシュマリオ」というのが
特別なコースで遊べるようになっています。
- 岩田
- 「ダッシュマリオ」ですか。
- 天野
- 大砲に入るとバーンと撃ち出されて、
するとマリオがBダッシュする状態になって、
タイミングよく、Aボタンを押しながら遊ぶんです。 - 石川
- 最初からBダッシュ状態になって、
止まることができないんです。 - 天野
- これも実際に触っていただいたほうが・・・。
- 岩田
- はい・・・(しばらくプレイに熱中して)
・・・あ、うれしい、これ(笑)。 - 天野
- え、ノーミスでクリアですか?
- 石川
- はじめてなのに。
- 岩田
- これ、アドレナリンが出ますねぇ(笑)。
まるで
『スーパードンキーコング』(※10)の
トロッコみたいな感じで。
- 天野
- そうです。
アクションゲームが苦手な人って、
Bダッシュができないので、
「その気持ちよさを味わってほしい」と思って、
今回はこのようにシンプルな遊びも入れてみました。
『スーパードンキーコング』=スーパーファミコン用ソフトとして、1994年11月に発売されたアクションゲーム。