『ファイアーエムブレム 覚醒』
3. “覚醒”という言葉とシンクロ
- 岩田
- 横田さんはこれまで
いろんなゲームを担当してきましたけど、
今回の現場の特徴はなんですか? - 横田
- 前田さんがタフで、アイデアをどん欲に取り入れて、
物事をすごくポジティブに考えるところが特徴だと思います。
前田さんが疲れている顔を見たことがなかったんで、
そこがいちばんすごいです。 - 山上
- 新しい企画のときは
あんなに死にそうな顔をしていたのに・・・。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- 火星の『エムブレム』を考えていたときは、
もっと疲れていましたか? - 前田
- はい・・・迷っていたかもしれません(笑)。
- 横田
- でも新しいことをポジティブに積み重ねていった結果、
プレイスタイルも新しいものになったと思います。
たとえば、今回は際限なくキャラクターを育成できるので、
レベルアップ時のパラメーターの上がりが悪くても
「あとでチャンスはあるな!」と
気にすることなくプレイすることができるようになりました。
くわえてカジュアルモード(※6)なら、
仲間がやられてしまっても気兼ねなく育てられますし。
カジュアルモード=仲間キャラクターが戦闘不能となっても喪失されず、次のマップ以降も使用可能となるモード。前作『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』から搭載された。
- 岩田
- やっぱりカジュアルモードの論争は、
いまでもあるんですか? - 樋口
- いや・・・大丈夫です。
- 山上
- 聞きたいなー、本音。
- 樋口
- いえいえ、大丈夫ですよ!(笑)
社内でもカジュアルでやっているメンバーが多いんです。 - 岩田
- 「カジュアルは邪道だ」と思っている人もいれば、
「カジュアルがあるから『エムブレム』の面白さがわかった」
という人もきっといると思います。 - 樋口
- はい、後者はけっこう多いです。
とくにはじめてやったメンバーからは
「カジュアルでないと難しい」という声が多いので、
「山上さんは先見の明があったなぁ」と思いました。
その節は電話でどなりこんで、申し訳ございません!(笑) - 山上
- いえいえ。
でもすごかったよ、もー。本当にすごかった! - 一同
- (爆笑)
- 横田
- 僕も最初はめちゃ反対しましたからね。
でも担当になったら、カジュアルサイコーでした(笑)。 - 岩田
- ストイックに遊ぶのと、いろんなことを冒険的に遊ぶのと、
違う遊びの面白さなんですよね。 - 横田
- そうですね。
ふたつのモードと3つの難易度なので、
ボリューム的には大変なことになりましたけど(笑)。
難易度ノーマルとカジュアルモードの組み合わせだと、
やや簡単かもしれません。 - 前田
- でも実際、新入社員にテストプレイしてもらうと、
クラシックモードでは厳しくても
カジュアルモードなら最後までいけたので、
いろんなモードがあることは価値があることだなと実感しました。
多くの方に最後までプレイしてもらえると思います。 - 横田
- それから樋口さんと前田さんは、
奥さんにもプレイしてもらうために難易度調整を頑張った、
という話をしておかないといけませんね(笑)。 - 樋口
- いやいや・・・奥さんの件は置いといて(笑)。
難易度はノーマル、ハード、ルナティック(※7)とあるんですが、
それぞれ役割分担があります。
ノーマルは、普段はRPGをよくやられる方など、
はじめての方にもオススメできる難易度です。
逆にルナティックは『エムブレム』の
達人クラスの方にぜひやってほしいです。
ルナティック=前作『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』から採用された、『ファイアーエムブレム』における最高難易度。敵の能力が軒並み上昇しており、敵の武器も上級クラスのものに変化している。
- 岩田
- 開発者からの挑戦状ですね。
- 草木原
- 前田さんはクリアしたんですよね。
- 前田
- はい。ルナティックはクリアしましたが、
難易度は半端じゃないものになっています。 - 成広
- ・・・・・・(苦笑)
- 岩田
- いま、成広さんが首をかしげていましたよ。
- 成広
- 僕は、ルナティックは無理だからなぁ。
- 岩田
- 成広さんが「無理」って言っています(笑)。
- 前田
- じつは・・・その上も、隠し要素としてあります。
- 岩田
- 開発者からの挑戦状も、“超集大成”ですね。
- 成広
- 役割分担という意味では
ハードぐらいがちょうどいいとは思うんですが、
いや、ハードでもけっこう厳しいんですよ。
ルナティックはもう・・・尋常じゃないっ! - 岩田
- 十分なストイックと、マゾ、みたいな違いでしょうか(笑)。
- 成広
- そうですね(笑)。
でも今回は、一度ノーマルをプレイした方でも、
次はハードで遊びたくなってくれると思うんです。 - 岩田
- あ、それができていたとしたら、
難易度の磨き方がとてもいい感じですね。 - 成広
- はい。いい塩梅(あんばい)な気がします。
一般プレイヤーの立場に近いようなスタンスで今回、
経緯を見てきたんですが、
自分がノーマルで気持ちよくプレイをおえた後、
「ちょっと物足りないな」と思って
ハードへの挑戦意欲が湧いたというのが、
「これは最近の『エムブレム』にはなかったかな」と思っています。
今回、それを本当に狙っていたのかはわからないですけど、
結果的に「すごくいいバリエーションがつくれているなあ」と。
だから一応、難易度設定みたいな形でいっているんですけど、
「もしかしたらちょっと違う遊びを
それぞれ楽しめるものになっているのかな」
っていう感じがしています。
- 岩田
- それはもう、単純に“難易度”という
表現ではないもののような気がしますね。 - 成広
- そうですね。
いまのは一応、褒め言葉やからな(笑)。 - 前田
- はい(笑)。
- 成広
- 先ほどの話にもあったように、
構想を含めると長い期間になるんですが、
もし最初から集大成を目指していたら、
いまの形にはなっていないと思うし、
結果的に、苦しんだ時代を乗り越えたからこその
集大成になったのかなと思います。 - 岩田
- そうですね。
「変えよう」というところからはじまって、
火星バージョンや2011バージョンまで考えたからこそ、
たどり着いている集大成なのかもしれません。
「広げよう」「変えよう」と、
議論していた何らかのエッセンスが、
いまの集大成にきっと入っているんですよ。 - 成広
- はい。だから悩み抜いた“暗黒時代”は、
いい結果に結びついていると思います。 - 岩田
- いまの成広さんの話は、
妙にタイトルと相性がいいですね。
いままでの“××の××”というサブタイトルやロゴの変更は、
伝統ある商品ではけっこう勇気がいることです。
これは誰がきっかけをつくったんですか? - 横田
- まずタイトルについては、
僕もイズさんも変えたくていろいろな案を出したんです。
でもどれもしっくりこなくて、けっきょくいつもの
“××の××”って形で山上さんに見せたら、
「やっぱり違う」と言われたんです。 - 岩田
- いままでと同じだと、変えようという決意が
タイトルから感じられないですもんね。 - 山上
- そうなんです。それで僕が
「バーンとインパクトあるひとことを出せばいい!
たとえば『覚醒』とか!」と言い放ったら、
「お、けっこういいかも?」って(笑)。
- 横田
- すごくしっくりきた言葉でしたし、
その段階では勝てる案が出なくて、一発で
「『覚醒』でいきましょう」と決まりました。 - 山上
- ロゴを変えたのは、『覚醒』って名前をつけるからには
それに見合うロゴにしたいというところから、
自然に変える流れになりました。 - 横田
- 「もっとデザイン全体をスタイリッシュにしたい」
という意見で一致したので、わりとすぐに決まりましたよね。 - 岩田
- お客さんに発表したときはドキドキしましたか?
- 樋口
- ドキドキはしましたけど、
いつもどおりと思われるより、
インパクトを与えたかったので、
むしろ早くみなさんの印象を知りたかったです。
「いろんなところでうわさになったほうがうれしいな」
と思っていました。 - 岩田
- “覚醒”っていう言葉が、
「“超集大成”をつくる」というみんなの感覚に
見事にシンクロしたんでしょうね。 - 横田
- そうかもしれません。
それから“超集大成”として絶対に外せない、
満場一致で入れたシステムについて
ぜひお話ししなければなりませんね。
それについては山上さんから・・・。