『ファイアーエムブレム 覚醒』
4. 「もう1回結婚したい」
- 山上
- そもそも、僕が『エムブレム』の集大成の話をしたとき
「もう1回結婚したいんだよなぁ」って言ったんです(笑)。
というのも、僕は『エムブレム』のシリーズの中で、
結婚システム(※8)がいちばん印象に残っているんですね。
結婚システム=1996年5月にスーパーファミコン用として発売された、シリーズ4作目にあたる『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』に導入されたシステム。ゲーム中に男女のキャラクターが恋に落ち、その組み合わせによって子どもたちの能力が変化する。
- 横田
- 今回は“キャラクターへの愛”が大きなテーマということで、
僕も結婚システムはぜひ入れたかったし、
イズさんとも意見が合致しました。 - 岩田
- それは順調に進みましたか?
- 横田
- コンセプト自体はスムーズでした。
結婚やカップルの組み合わせのバリエーションを増やして、
マイユニットは全員と恋人になれるようにしたかったので、
時間的な問題はありましたけど。 - 前田
- 仲間とは誰とでも結婚できるんですよね。
そうすると今度は、
「結婚するときに
専用グラフィックがほしい」とか、
「告白ボイスもほしい」とかいう感じで、
けっきょく全員分、用意しました(笑)。
- コザキ
- 最初、草木原さんは「全員のキス顔を入れよう!」
とまで言い出しましたね。 - 一同
- (爆笑)
- コザキ
- ものすごい勢いで反対しましたけど(笑)。
- 横田
- まあ、それに近いものはありますので、
ぜひ見ていただきたいです。 - 草木原
- 臨場感が増すと思ったんです。
そこも“絶句ポイント”ですかね。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- でも今回、これだけ予定より多い量をこなしたにもかかわらず、
最初にお約束いただいた納期からずれていないですよね。
その秘訣はなんでしたか?
- 樋口
- うーーーん、それは難しいです(笑)。
じつはなぜかっていうのも、
いま考えるとよくわからないんです・・・。
ただ、予定よりもすごく物量が増えるものだから、
締切りだけ決めて、そこでダメなら諦めるようにしていました。 - 岩田
- ああ、そうなんですね。
ここまでに積まないと、船は出てしまう。
それをみんなが不思議に共有しているので、
助け合いながら必死に頑張って船に積み込むことを
繰り返していたんですね。 - 樋口
- そうです。
- 山上
- みんな、入れたかったんですよね。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 極端な話、机の上にやらなきゃいけない仕事が積んであって、
誰が指示するでもなくみんなが勝手に持っていって片づけていくことが
プロジェクト運営の理想の形だと思うんですが、
それに近いものを感じますね。
「『エムブレム』の超集大成をつくりたい」というエネルギーが、
みなさんを突き動かしていた感じがします。 - 樋口
- はい、目標が見えやすかったです。
締切りだけは決めてガンガンこなしていけたのも、
集大成というテーマが大きかったと思います。 - 岩田
- でも、この集団に巻き込まれたコザキさんは大変でしたね。
- コザキ
- そうですね(笑)。
送られてくるスケジュールが、どうみても重なっていて・・・。
とにかく、現場の“熱”がすごかったんです。
だから「いっしょに声を掛け合いながらやっているのが
うらやましいなぁ」って、作業をしながら思っていました。
- 岩田
- でも、エネルギーの大きいときは、
離れていてもいっしょに引きずられるように
動いてしまうことがありませんか?
こちらがしたことに対して、
向こうから大きな反響が返ってくると
こちらも喜んでやれますよね。 - コザキ
- はい。とくにこの企画をつくっているのが
昔からの『エムブレム』ファンの方でしたので、
「そういうコアな方にも、新規の方にも、
納得できるものをつくりたい」という気持ちがありました。
仕事を受けた後、すぐにファンサイトを回って、
ファンの方のイラストなどを全部見て、
「みんな『エムブレム』のどこが好きなのか」とか、
「どういう部分が欠けているのか」とかを
とにかく全部分析したんです。
だから新しくなりすぎず、
古くなりすぎないデザインを目指したつもりです。 - 樋口
- 実際のやりとりは草木原とやっていて、
やばくなったら草木原が
コザキさんのところに行ってましたよね。 - コザキ
- そうですね。
うちのアシスタントさんの机に座ってもらって、
朝起きてから寝るまで、
ず~っといっしょに仕事をしました。 - 草木原
- 4泊5日コースを3回やっているはずです。
それで僕がいざ現場に帰ったら、
浦島太郎みたいな気分になっちゃって(笑)。 - 岩田
- 4泊5日でも、進行スピードが速いと
内容はけっこう変わりますよね。 - 草木原
- 変わりますねー。
とにかく実作業で目が回るような忙しさだったので、
まとめてちゃんとプレイできたのが終盤だったんですけど、
そのとき「こんなにできてたのか!」って驚きました。
コザキさんに描いてもらっている横で、
しばらく遊んでいたこともありました(笑)。
- コザキ
- 描いたものがどんどん実装されていって、
びっくりするほど速かったです。 - 草木原
- ゲーム中に実装されているキャラクターのグラフィックですが、
主要キャラはほとんどコザキさんにつくってもらっています。
人数が多かったから、締切りはなかなか厳しかったですよね。
同時に通常の漫画作業も入ってきて、
「うわー、どうしよう!」って樋口と頭を抱えるんですが(笑)、
上がってきたデータがものすごくいいんですよ。
そんなことを繰り返していくうちに、なんとかデータも揃ってきて
無事に最後までやり遂げていただくことができました。 - 横田
- そんな中、コザキさんのこだわりも
十分に入れていただけましたね。 - コザキ
- はい、そうですね。
- 横田
- 印象的なのは、
最初にキャラクターのデザインを相談したとき
「緑髪はちょっと・・・」とお話しされていたんです。
従来の『エムブレム』には緑髪やピンク髪がいたんですけど、
そこは作家さんのこだわりということで、
こちらも「まぁいっか」とそこは了解しました。 - コザキ
- はい、わりと柔軟な感じでした。
- 一同
- (笑)
- 横田
- でも、あとから
「重要なところだけは緑髪もOKです」と
言ってくださいました。 - コザキ
- 描いていたら、
「あ、わりといいな」と思ってきたんです(笑)。
それから、とにかく今回は、王子様がメインなので、
60年代ぐらいからあるような、
いわゆる
“王子様”的なアイコンを意識して入れました。
- 横田
- そういうコザキさんのテイストも入って、
新しさが存分に出ていると思います。