『ペーパーマリオ スーパーシール』
4. 納めに行くか、すぐ使うか
- 岩田
- 徹底的にシールにこだわるということが
チーム全員に浸透するまでには、
きっとけっこう時間がかかっていますよね。
そこにはどんな問題があって
何をきっかけに解決されていったんですか? - 碧山
- そういう意味ではたぶん最初、
みんな共通してモヤモヤしていたのは、
バトルにおいてシールを使うと
シールがなくなってしまうことだったと思います。
「あとで足りなくなったらどうしよう」とか
「入手したものを取っておきたい」という人には
けっこうしんどいイメージがあったんです。 - 岩田
- 普通のRPGにたとえると、
バトルで無限に使える「たたかう」が
使うとなくなってしまう感覚ですよね。 - 碧山
- そこで、シールをバンバン使ってもらおうと
マップの随所からシールがはがせたり、
お金でいつでも買えるようにして、
「どんどん使ってください」という
ゲームの流れをていねいにつくっていきました。
- 岩田
- 取るたび使っても、
シールが足りなくならないようにしたんですね。 - 碧山
- そうです。あとバトルでいうと
シールの効力をきっちり差別化することで、
相性のいい敵に惜しみなく使うことのほうが
気持ちよくなるようにしたんです。
そこでまず「これはいける」と感じました。
シールを探すのが、すごく楽しくなったんですね。 - 岩田
- あの、シールをはがすとき
ひっぱって、パン! という手触りも
すごく気持ちいいですよね。
こだわってつくられた感じがしました。 - 田邊
- あれも一度、宮本さんの
ダメ出しを食らいました(笑)。
「ゲーム中で何度も行うアクションなので、
もうすこし小気味よく早いほうがいい」
ということで、1フレーム(※30)単位の
調整をしています。
1フレーム=1秒あたりの動画に含まれる画像の1コマのこと。
- 碧山
- あれはマリオの一連のアクションに加えて、
シールの大きさによるタメのちがいもあるんです。
それぞれ本当に微妙な調整をした成果ですね。 - 岩田
- 田邊さんから見て、どうでしたか?
- 田邊
- わたし自身の印象で言うと、
「投げてつくるモノシールが魔法代わりになる」
ということを工藤さんに理解してもらって、
おもしろいネタが次々出てきたあたりから
変わってきた気がしますね。
- 岩田
- モノシールはどのくらい数があるんですか?
- 工藤
- フィールドで使うモノも含めて、
最終的には50種類以上入っています。 - 田邊
- あと
“バトルスロット”を入れて、
バトルにメリハリがつけられたことも
大きいんじゃないですかね。
- 岩田
- スロットはどんな役割なんですか?
- 碧山
- スロットの絵柄がそろった数だけ
いっぺんにシールが貼れて、
ハデかつ有利に戦うことができます。
たくさんお金を入れれば回転数を遅くして、
そろえやすくすることもできます。
ここでも、もともとアクションであった
目押しの手触り感にこだわっていますね。 - 岩田
- シールを使ったバトルの構造を
明確にしたことが、ゲーム全体の
テンポ感にもつながっているんですね。 - 田邊
- はい。普段のザコ戦でお金をためて、
ボス戦は、ためたお金をスロットに注ぎ込んで戦う、
というスタイルが確立されたとき、
みんな「いける」って
思ってくれたんじゃないですかね。 - 碧山
- でも、ものすごく最後ですよね、それ。
- 一同
- (笑)
- 井方
- 僕は個人的には、
シール博物館の存在がすごく大きかったです。 - 岩田
- シール博物館ですか?
- 井方
- 自分で集めたシールを納めると
展示してくれる施設なんですけど、
僕はあれがあったおかげで
モチベーションがすごくあがったんですね。
見たことないシールをみつけたときとか、
アルバムに貼ってあるシールをやりくりして、
どうにか納める方法を考えるんです。 - 碧山
- 井方みたいに、
はじめてのシールをみつけたら
とりあえずアルバムに埋め込んで、
シール博物館に納めに行くというスタイルで
プレイしている人がけっこういるんですよね。 - 井方
- あの、基本はアルバムに貼っているシールを
必要最小限にしたいんです。
それで博物館に行って貼れるものがあると、
アルバムに空きができるんで、
そしたらまたそこに新しいシールを貼れるという、
そのくりかえし続くサイクルが
すごく気持ちいいんです。 - 中嶋
- そのサイクルができるまでが、たいへんでした(笑)。
- 岩田
- それは、どういう意味ですか?
- 中嶋
- モノシールはサイズも大きくて、
アルバムに1枚ずつしか貼れないんです。
かつ、ゲーム中に同時に1枚しか存在しないんです。
だから博物館に納めようとすると使えないし、
また取りに行かないと
使って効果を見ることができないんです。 - 岩田
- それはそうなりますよね。
- 中嶋
- そこはもちろん、
手に入れたらぜひ使ってもらいたいけれど、
博物館に納めたい人には二度手間になって
「ストレスになるんじゃないか?」って、
けっこう悩んだんです。 - 井方
- いや、それが僕的にはむしろ、
楽しい悩みなんです。 - 岩田
- 結果的にプレイヤーが
「いい意味で葛藤する」
そういう構造が生まれているわけですね。 - 中嶋
- そうですね。
でもみんなが「それでいい」と感じるまで、
かなり議論をしています。
博物館賛成派と反対派で。 - 井方
- 賛成派にとっては、納めることが
すごく快感なんですけどね(笑)。 - 中嶋
- まあ、本当に両者がせめぎ合う感じでした。
だいたい最初に博物館に納めに行く人は
どこにどんなシールがあるかを覚えて
もう一度取りに行くので、
そこをある程度意識したつくりにしました。
どんどん先に進みたい人に対しては、
基本、取ったらすぐに効果を活用できるような
配置にしています。
それぞれのプレイヤーに合わせて、
どちらの遊びかたもうまくまわるような
バランスになっていると思います。
- 岩田
- つまり、人によって遊びかたが
変わるゲームになっているんですね。 - 碧山
- 単純なところでいうと、
アルバムの貼りかたや普段使うシールも
人によってすごくちがうんです。 - 岩田
- だとすると、その人のアルバムを見ると、
性格もある程度わかるんじゃないですか? - 碧山
- はい(笑)。
ファイアばっかり使う人は
「面倒くさがりだろうな」とか、
「キラキラでそろえたいんだろうな」って
わかるアルバムがありますね。 - 田邊
- わたしはちゃんと手動で
カテゴリ別に並べ直すタイプですね。
靴は靴のページとか・・・。 - 工藤
- あれは、そういった整理マニアには
たまらないと思います(笑)。 - 田邊
- たしかに、フラワーはぜんぶこっちとか、
コツコツやってました。 - 岩田
- 「ペーパーマリオのアルバムで性格占い」みたいな
こともできそうですね。 - 一同
- (笑)