『ルイージマンション2』
1. “羊飼い”のように
※この社長が訊くインタビューは通訳を介して行われたものですが、
全文を日本語にして掲載しています。
- 岩田
- (テレビ会議のモニターに映っている
ネクストレベルゲームズのスタッフの姿を見て)
ありがとう、ルイージの帽子をかぶってくれて(笑)。
- 宮本
- 今日は僕、かぶらないです(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 今日は『ルイージマンション2』の
インタビューということで、
まず、長期の開発、お疲れ様でした。 - ブライス
- ありがとうございます。
- 岩田
- 2012年のクリスマスシーズンまでには
ゆっくりできるかと思っていたら、
2013年までかかってしまいました。
みなさん、いまはニコニコしていますけど、
去年の終わりの頃は、
すごく大変だったんでしょうね。 - ブライス
- ええ。それはもう、
髪の毛をかきむしるような状態でした(笑)。 - 岩田
- でも、みなさんのがんばりもあって、
宮本プロデュースの作品に恥じない、
しっかりした内容になったと思います。 - ブライス
- ありがとうございます。
最後の数か月間に行ったことは、
とても誇りに思っています。 - 岩田
- では、今作にかかわったみなさんに
自己紹介をお願いします。
ネクストレベルゲームズ(※1)のみなさんからどうぞ。
ネクストレベルゲームズ=Next Level Games Inc. カナダのバンクーバーにあるゲーム開発会社。2002年設立。これまで『マリオストライカーズ』シリーズや『PUNCH-OUT!!』などの開発を手がけてきた。
- ブライス
- ブライス・ホリディです。
『ルイージマンション2』では
ゲームディレクターとしてかかわりました。
- チャド
- チャド・ヨークです。
『ルイージマンション2』では、
オーディオディレクターという仕事をしました。
- 岩田
- このジャンルのゲームでは、
オーディオもとても重要な要素ですよね。 - チャド
- そうですね。
- ブライアン
- ブライアン・デイビスです。
ゲームプレイプログラマーとしてかかわりました。
スパイダーのボスや階段のボスなどの
開発を担当しました。
今日はこのような場にいることができて、
とても光栄に感じています。
- 池端
- 企画開発部の池端です。
今作ではスーパーバイザーとしてかかわりました。
カナダにいるディレクターのブライスさんたちと、
ゲームのネタや仕様をいっしょに考えたり、
あとは宮本さんに定期的に進行状況を報告に行って、
その時に聞いた反応を彼らに伝えるようなことをしていました。
- 岩田
- 池端さんは、
任天堂側でディレクター的な役割と同時に
宮本さんとの窓口も務めたわけですね。 - 池端
- はい。
- 岩田
- 宮本さんは・・・
改めて自己紹介をすることもないですが。 - 宮本
- え、一応、させてほしいんですけど・・・
あのう・・・任天堂の宮本です(笑)。
- 一同
- (笑)
- 宮本
- 僕はこれまで
いろんな種類のプロデュースをしてきましたけど。 - 岩田
- そうですね。
- 宮本
- でも、今回はちょっと特殊だったんです。
ひとつは『ルイージマンション』(※2)の原作者として、
もうひとつはディレクター陣の後見人として、
2週間に1度、池端さんと話をするという、
わりと薄く長く、というかたちでかかわったので、
とても珍しいスタイルのプロデュースになりました。
しかも基本的にクリエイティブは現場がして、
僕は担当しない、という意味での後見人でした。
『ルイージマンション』=2001年9月に、ゲームキューブと同時に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- ブライス
- でも、わたしたちにとっては
ベストなコーチでした。 - 岩田
- 今回はメンター型の
プロデュースだったんでしょうか? - 宮本
- メンター型、というのは?
- 岩田
- メンターというのは
英語では「師匠」とか「指導者」という意味なんですが、
「開発現場の人たちにとっては
“心の師匠”のような感じだったんじゃないかな」
と思ったんですが。 - 宮本
- そんなかっこいいもんじゃなくって、
まあ、言ってみれば
“羊飼い”のようなもんだったんです。 - 岩田
- “羊飼い”ですか?(笑)
- 宮本
- はい。それも、
「こっちに行け」みたいに
明確な指示を出すんじゃなくて、
「そっちに行ってはいけないよ」
というようなことを言うだけの
“シープドッグ”のような役だったんです。 - 岩田
- つまり「こういう方向でつくりなさい」
ということは言わないけど、
「その方向は間違っているよ」
ということだけを伝えるわけですね。 - 宮本
- そうです。
すると、よけいなことをしなくなるので、
みんながかかわった仕事が、ほとんど全部、
結果につながっていくんです。 - ブライス
- 自分たちとしては、時には自由に
放牧されたい時もあったんですけど(笑)。
「うまく誘導していただけた」と思います。 - 宮本
- そうやって、3年以上走ったぶん、
今回は、それが丸ごとロムに詰まっていますから。 - 岩田
- たしかにこのプロジェクトは
とても開発期間が長かったですよね。 - 池端
- はい、長かったです。
2009年からずっとこのタイトルにかかわってきて、
3年ちょっとになるんですけど。 - チャド
- わたしの子どもがふたり、生まれましたから(笑)。
- 岩田
- それはおめでとうございます(笑)。
でも、「開発に3年以上かかった」とは言っても
とくに迷走したわけでもなかったんですよね? - 池端
- そうですね。
あっと言う間に過ぎた印象です。 - 岩田
- 3年もかかわったのに、
あっと言う間、なんですか? - 池端
- はい。それくらい密度が濃かったんです。
- 岩田
- “羊飼い”の誘導がよかったから、
そのぶん、充実した開発ができたんですね。 - 池端
- はい。おかげさまで
迷える羊にならなくてすみました(笑)。 - 岩田
- そもそも、このプロジェクトの話を聞いた時、
ネクストレベルゲームズのみなさんは
どんな感想を持ちましたか?
- ブライス
- じつはその当時、任天堂関連の
まったく別のプロジェクトにかかわっていて、
ある日、テレビ会議を使って
それについてのミーティングをすることになったんです。 - チャド
- わたしたちは試作品をつくって、
そのミーティングに備えていたんです。 - ブライス
- すると、田邊(賢輔)(※3)さんが
いきなりドラムロールのような音を鳴らしはじめて、
「『ルイージマンション2』をつくってもらいます!」
と突然言われたので、その時はもう
声が出ないくらい、驚きました。
田邊賢輔=企画開発本部 企画開発部 統括。これまで『メトロイドプライム』シリーズ(ゲームキューブ / Wii)、『ドンキーコング リターンズ』(Wii)などを担当。過去、社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』に登場。
- チャド
- みんなすごく興奮しましたよね。
オーディオ担当の自分としても、
これまで『マリオストライカーズ』(※4)や
『PUNCH-OUT!!』(※5)などにかかわってきましたけど、
『ルイージマンション』は
そういったスポーツゲームではありませんので、
「いろんな音楽をつくることができる」と思って、
それはもう天に昇るくらい、うれしかったです。
『マリオストライカーズ』=1作目の『スーパーマリオストライカーズ』(ゲームキューブ)は2006年1月に、2作目の『マリオストライカーズ チャージド』(Wii)は2007年9月に発売されたファイティングサッカーゲーム。
『PUNCH-OUT!!』=2009年7月に、Wii用ソフトとして発売されたボクシングゲーム。
- ブライアン
- わたしはもともと
すごい任天堂ファンなんです。
池端さんはよくご存じなんですけど(笑)。 - 池端
- はい。よく知ってます(笑)。
- ブライアン
- ずっと任天堂のゲームで遊んできましたし、
なかでも『ルイージマンション』は
今日ここに、ゲームキューブの
ソフトを持ってきているくらいお気に入りなんです。
そのソフトの続編にかかわれるということで、
「自分のそれまでの経験や知識が活かされるだろう」と、
すごくワクワクしたことを覚えています。