『新・光神話 パルテナの鏡』
5. 「奇跡」と「神器」
- 岩田
- 今作の最大のポイントは
「悪魔の釜」という話でしたけど、
他にはどんな新しい要素があるんですか? - 桜井
- もうひとつは「
奇跡」というシステムです。
これは特殊能力のことで、
たとえば高くジャンプできたり、
猛スピードでダッシュできたり、
ときには相手に攻撃させないようにするために、
ナスビに変化させることもできます。
- 岩田
- ナスビになると、
手も足も出なくなりますね(笑)。 - 桜井
- まあ、足はついてるんですけど。
- 岩田
- あ、そうか(笑)。
- 桜井
- ただ、やみくもに「奇跡」を選べばよいわけではなく、
「神器」の特徴なども、ある程度は
考慮する必要があります。 - 岩田
- 自分の装備している「神器」の能力を
活かしたりすることのできるような、
「奇跡」を選ぶといいんですね。 - 桜井
- そうですね。
しかも手に入れた「奇跡」は、
好きなだけ持っていけるのではなくて、
パネルのなかにピースを組み込む必要があります。
弁当箱におかずを詰め込むみたいな感じです。
- 岩田
- はい(笑)。
- 桜井
- で、その「奇跡」と「神器」の2つは
1人用においても、対戦においても、
「うまく循環して使えるようにしたい」
というのが今作のテーマでもあったんです。
- 岩田
- それは、1人用でも対戦でも、
その遊びで得られたものは、そのまんま
どっちにも持っていける、
ということなんですね。 - 桜井
- そうです。
- 岩田
- 能力の高い「神器」は、
「悪魔の釜」でホンキ度を上げて、
それをクリアして手に入れるという話でしたけど、
対戦でもそれができるんですか? - 桜井
- はい。ただ、対戦をするときに、
いい「神器」が勝ち続ける人に得られるようになると、
かたよるんですよね。
強い人はたくさんの「神器」を持ってるし、
そうでない人はぜんぜん手に入らないみたいな。 - 岩田
- すると、強い人はいいけど、
そうでない人はイヤになってしまいますよね。 - 桜井
- そこで、くじ引きに近いようなかたちで
「神器」がもらえるようにしました。 - 岩田
- じゃあ、負けている人にも、
いい「神器」が当たったりするんですか。 - 桜井
- はい。がんばっていれば、ですけど。
- 岩田
- がんばらないとどうなるんですか?
- 桜井
- 対戦中にまったく動かないような人には、
ご褒美は入らないようになっています。 - 岩田
- つまり、「汗をかかないヤツは認めない」、
「そこにはご褒美はない」ということですね(笑)。
- 桜井
- ですから、対戦セッションを組んで、
何もしないで何かを手にするのを期待する、
そんなプレイはできません。
やっぱり勝敗にかかわらず、
一生懸命にやってる人を優先するというのは
とても大事なことだと思っていますので。 - 岩田
- なるほど。そのほかにも
いい「神器」を手に入れる方法はあるんですか? - 桜井
- 「
融合」というシステムがあります。
「神器」と「神器」を合体させると、異なる種類になって
強さやスキルを引き継ぐことができます。
これを繰り返し、
好みの「神器」に好みのスキルを加える遊びは
かなりハマります。
また、すれちがい通信(※14)で、
「神器のタネ」がたまるようになっています。
すれちがい通信=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。
- 岩田
- すれちがうことでもらえるのは、
「タネ」なんですね。 - 桜井
- はい。
タネをつくっても「神器」はなくなりません。
また、「神器」の強さをそのまま引き継ぎます。
ゲットしたタネの還元には
お金、つまりハートが必要ですね。
ハートを払えば持っているタネを還元して、
「神器」を自分のものにすることができます。
ただし、高性能の武器を得ようとすると、
すごくお金がかかって10万くらいします。
- 岩田
- それは高いですね(笑)。
- 桜井
- でも、安く済ませる方法もあります。
「タネ融合」といって、
別々のタネを融合することができます。
これは、直接タネを還元するよりも安く済みます。
また、
要らないタネはすりつぶして
ハートにすることができます。
つまりすれちがえばすれちがうほど・・・。
- 岩田
- いろんな意味で、リッチになれるんですね。
- 桜井
- はい。それにタネは、いつの間に通信(※15)で、
1日1個配信する予定になっていますから・・・。
いつの間に通信=ニンテンドー3DSが、インターネット無線アクセスポイントを探して自動的に通信を行い、さまざまな情報やコンテンツを受信する機能。
- 岩田
- ますますリッチになるということですね(笑)。
そうやって「神器」の価値を高めていくなかで、
究極のゴールみたいなものはあるんですか? - 桜井
- いえ、ありません。
「神器」の価値が高ければ、つまり強ければ、
1人用では有利になっていきますが、
対戦で使うときは、そうとは限らないんです。
- 岩田
- それはどういうことですか?
- 桜井
- 対戦における3対3での戦闘は、
「チーム力」がゼロになったときに、
プレイヤーが天使に変身して、
それを倒したほうが勝ち、というルールです。
で、バトルをするときに、
とても価値の高い「神器」を持っている人がいて、
その人が倒されてしまうと、
「チーム力」がゴリッと減ってしまうんです。
- 岩田
- だから、身の丈に合わないような
価値の高い「神器」を持っていると・・・。 - 桜井
- はい。すぐにやられてしまえば
チーム力に大ダメージを受けることになります。 - 岩田
- それもまた“リスクとリターン”ですね。
- 桜井
- そうですね。
しかし、1人用と対戦における性質の差はあります。
1人用を勝ち抜くなら
じつは誘導性の低い「神器」が、やや有利なんです。
というのも敵のサイズは比較的大きいですから、
誘導性があんまりなくても
攻略できることもあって・・・。 - 岩田
- でも、対戦となると、
敵は自分と同じ大きさになるから・・・。 - 桜井
- そうです、そうです。
誘導性が高いということは
どこかが弱くなっているということですが、
1人用の誘導性より
対戦の誘導性のほうが重視されるので、
誘導性より他に重きを置いたもののほうが
使えるということです。 - 岩田
- なるほど。そういう意味では、
「ヤリコミできる要素をものすごく深く用意してあります」
という感じなんですね。
- 桜井
- そのとおりです。
ただ、いろいろなパターンが試せるので、
デバッグもとても大変でした。
対戦バランスは、『スマブラ』のときとは違う方針で
調整をしています。 - 岩田
- どこが違っていたんですか?
- 桜井
- 『スマブラ』のときは、
モニターの感想を直接聞くよりも、
モニターが対戦しているビデオを見て、戦績や戦法、
傾向を研究してパラメータを打つ、という感じだったんです。
意外とモニターの意見は偏見が根付くことが多く、
毎日のワザの強さの変化も把握しきれませんから。
でも、今回は、モニターの意見を
より適切に吸い出すことを考えました。
単純に言われた意見を鵜呑みにするのではなく、
まず1対1と、3対3のチームに分けて、
それぞれの視点の意見を互いにチェックするような
ことをしてみたんです。
たとえば、3対3のチームから
「これは強すぎるので、もっと弱く」
というような意見が出てきても、
1対1のチームから
「いや、これには、こういう効果があるから弱くしたらダメ」
という意見が出たりしました。 - 岩田
- 『スマブラ』より、遊ぶときの状況が異なるから、
それぞれプレイした人に意見を言ってもらったんですね。 - 桜井
- そうです。かんじんの特徴づけをざっと行ってから、
モニター結果を受けつつ、わりと率直に調整を行いました。
やっぱり何カ月もやりこんだ人たちが
出した結論のひとつですし、
意味のあることだったと思っています。
やっぱり「神器」の数が多かったですし、
チューニングが本当に大変でした。
が、そのぶん幅広い楽しみがありますので、
ぜひ多人数で、できれば顔と顔を向き合わせる
ローカル対戦で楽しんでほしいですね。