『ニンテンドー3DSガイド ルーヴル美術館』
4. 不思議な体験を
- 岩田
- こういった商品は、
そもそもルーヴル美術館さんと
強いパートナーシップをもたないと、
絶対出せないものですからね。 - 宮本
- そうですね。
- 岩田
- そういう意味でも、こういうものが気軽に
手元で楽しめる形になったわけで、
実際行った方やこれから行く方、
そして行く予定はないけど興味のある方といった
「さまざまな人にとって、
それぞれにちがう価値あるものになった」
というところがおもしろいですよね。
同じ人でも、そのときどきの知識や状況によって、
またちがう価値も生まれるわけで。 - 宮本
- かなり、実験的な商品だとは思います。
個人的にはぜひとも、学校の美術の教材などにも
使ってもらいたいですね。
さわって、見て聴いているうちに
きっと興味がわいてくると思うんですね。 - 岩田
- 本物を見に行きたくなりますよね。
- 宮本
- 本当にちょこちょことボタンを押して、
「へえ」とか言いながら、つい見てしまうんです。
自然に新しいことを覚えられるのもうれしいですし。
検索機能もけっこう充実しているので、
作品や場所ごとにチェックをしたり、
コースでオススメを選んだり。
自動モードにして進めると、
実際のツアーと同じ体験ができるんです。 - 岩田
- それでいつか、現地に行けたら、
きっと見えかたがまた変わりますよね。
そんな不思議な体験ができるものに
なっている気がします。 - 宮本
- ぜひ、さわってみてほしいですね。
- 岩田
- やっぱり広い意味で、
「これはイクスピアリの実験から全部
つながってできたことなんだ」と思いますね。
宮本さんが5年とか6年越しで、
やったことなんですよね。 - 宮本
- そうですね、たしかに。
- 岩田
- 宮本さんのやっていることの中には、
数年越しのものが多いんですけど、
わたしが知る限りでいちばん長いのは、
Mii(※24)構想ですかね。
それこそファミコンディスクシステム(※25)の頃から、
宮本さんは「今度は似顔絵だよね」って
言ってましたから・・・。
Mii=ニンテンドー3DSやWii、Wii Uなどでプレイヤーキャラクターとしてつくることができる似顔絵キャラクター。
ファミコンディスクシステム=ファミリーコンピュータ ディスクシステム。1986年2月に発売された、ファミリーコンピュータの周辺機器。メディアに磁気ディスクを採用し、ディスクカードにソフトを安価で書き込むことができた。
- 宮本
- あぁ、そこから入れると
30年近くになってしまいますよ。 - 岩田
- ディスクシステムが出たのが1986年ですから、
27年モノ、ですか(笑)。
さすがにそれはちょっと例外的に長いですけど、
まあ5年モノとかはゴロゴロあって、
まだお話しできないこともありますし。 - 宮本
- そういう意味では、去年海外のインタビューで
「今後は小さなプロジェクトにかかわっていく」
という話をしたら、
引退報道になってしまった背景のひとつに、
たぶんこのプロジェクトがあったんですね。 - 岩田
- はい、そんな話もありましたね。
まあ、けっして小さなプロジェクトでは
ないですけれど(笑)。 - 宮本
- どれがそうなるかは、
自分でもわからない場合がほとんどなんですね。
結果が出てはじめて、
「あっ、これがそうか」という感じなんです。
- 岩田
- 最後の完成型が最初から見えているとは限らなくて、
それこそあこがれとか、妄想のように
言っていたことの切れ端がつながっていく感じで。 - 宮本
- 「いつかルーヴルや」と言っていた頃には、
まさかこういう形で実現するとは
思ってもみなかったんですが、
でも実際に自分たちが目指してきたことは、
当時からまったく変わってないんです。 - 岩田
- 「これはおもしろいはずだ」というのを
宮本さんが感じていることをみつけたとき、
その道を歩くために背中を押したり、
邪魔なものがあったら片付けたり、
ほかの人が協力してくれるように説得したりすることが、
この間、わたしがしてきたことのような気がしています。 - 宮本
- そうですね。ありがとうございます。
- 岩田
- では、そろそろ最後になります。
今日わたしは、宮本さんと話をして、
「宮本さんの野望は、なぜ実現できたのだろう」
ということを改めて考えたんですが、
まずはやっぱり、成功も失敗も含めた
小さな積み重ねがあってこそなんですよね。
イクスピアリでのテストもそうですし、
大小さまざまな施設と人々との取り組みで、
思い知らされたことがたくさんありました。
そこに3DSというハードが登場して、
本当に「ここしかない」というタイミングで、
ルーヴル美術館さんとのご縁ができて、
成立した気がするんです。
- 宮本
- タイミングというのはありますね。
3D写真とか3Dモデルという
アイデアがあったので、ルーヴルの関係者の方も、
「3DSでやりたい」と受け入れていただけたので。
もしDSの時に同じ話をしていても、
断られていたでしょうね。
だから、幸運なんです。 - 岩田
- だから、漠然と妄想していただけでなく、
いろんなことをしていって、
結果として準備が整っていたんですよね。
それも先を読んでいたわけではなく、
備えていたところに、チャンスが巡ってきた。
「幸運というものは、準備と機会が巡り会うものだ」
という言葉が、わたしはとても好きなんです。
だから今回はそういう不思議な
ご縁を活かせて、本当にラッキーでしたね。 - 宮本
- たしかに、そう思います。
- 岩田
- ぜひみなさんもご自宅で、
ルーヴル美術館を体験してみてください。
そしてもし、ルーヴル美術館に実際に
行けるチャンスができたら、
ソフトを持って行って、
その体験をいっそうリッチに
楽しんでいただければと思います。
ちなみに、ソフトの中に
宮本さんが写りこんでいる写真が
1枚だけどこかにあるんですよね。 - 宮本
- ああ、誰かが勝手に入れてしまったんですよ。
僕も止めなかったので、
そのまま搭載されてしまいました。
ぜひみなさん、みつけてみてください。
あと、現地のショップでは特別に
パッケージ版の販売もしていますので、
記念のおみやげとしてもオススメです。 - 岩田
- はい。ありがとうございました。