『心霊カメラ ~憑いてる手帳~』
4. “持ち運べる恐怖”をみんなで遊ぶ
- 岩田
- 菊地さんが任天堂と一緒に
ゲームをつくっていくなかで
何か影響を受けたことはありますか? - 菊地
- さきほどもチラっと言いましたが
遊びの幅を広げるという考え方は、
とても感化されるものがありました。
わたしたちはどちらかというと
一点に集中して深掘りするような
つくり方が多いんですけど、
そこを別の視点から広げていくような
提案をいただくことが多かったんです。 - 岩田
- 別の角度から切り込んできたり、
ときには無茶をふったり、
ということですよね?(笑) - 菊地
- まさにそうです(笑)。
開発中に起こるさまざまな問題に対して
行き詰まる場面というのはよくあるんですが、
いままで築いてきたことをパッと捨てて
別の方面からのアプローチを次々に考えていく、
その粘り強いスピリットは、
うちのスタッフも非常に感化されました。
また、伊豆野さん、牧野さんたちと一緒に
チームがひとつになって動けたことがよかったです。
経験上、とくに複数の会社をまたがる場合、
一枚岩になれる開発チームは一朝一夕にはできないので。 - 岩田
- 複数の会社にまたがるプロジェクトで
シリーズを重ねて
「次もやりましょう」と言える関係って、
そうそうできることではないんですよね。 - 菊地
- 5年前に『月蝕の仮面』で岩田さんにチャンスをいただいて、
そのときうまくできなかったことも多かったんですが、
その経験と苦労、喜びを共有して、
なんでも言いあえる間柄になったというのは
得難いものだと感じています。 - 岩田
- ネガティブなことを言っても
それがお互いの批判なわけではなくて、
問題と目指すものを共有したひとつの組織として
同じレベルで認識できているわけですね。 - 菊地
- はい。
- 岩田
- 逆に任天堂社内では、
伊豆野さんが、菊地さんが乗り移ったかのように
わたしのところに相談に来ることもあったんです。
これはもう、ひとつのチームなんですよね。
そこは常々感じていたことでしたので、
今日、お話を伺いながら、改めて感じました。 - 伊豆野
- ですので、今回構築した遊びや技術を
次にどう活かすかはまだわかりませんが、
またこの仕組みを発展させて、
コーエーテクモさんと一緒に
新たにおもしろい商品をつくりたいと思っています。 - 岩田
- それでは最後に、みなさんから
お客さんへのメッセージをいただけますか。
『零』シリーズのファンの人に向けてと、
遊んだことがない方に向けて、それぞれお願いします。
まずは、牧野さんから。 - 牧野
- シリーズファンの方に向けてですが、
今回もかわいい女の子は出てきますので、
その期待は、裏切りません!(笑)
それと、遊びのスタイルはこれまでと少し変わりましたが、
ストーリーを楽しむことで感じられる
『零』のテイストはしっかり残っています。
間違いなく、コーエーテクモさんと任天堂がつくる
「新しいホラーゲームの形」というのを
体験していただけるんじゃないかなと思ってます。
- 岩田
- 遊んだことのない方へはどうですか?
- 牧野
- 怖いのがちょっと苦手な方には、
まずは“ゴーストカメラ”をオススメします。
みんなが集まる場や、
きもだめしや合コンツールとしても楽しいので。 - 岩田
- ・・・なんだかホラーゲームと
合コンツールっていう響きが、
一体になってるのがすごく変でおもしろいですね(笑)。 - 牧野
- こんな風に、
誰かに見せたくなるホラーゲームって、
これまでなかったと思うんです。 - 岩田
- そもそもホラーゲームをちゃんと味わうには
それなりの時間と環境が必要で、
人に見せる遊びには
いちばん遠いジャンルだったかもしれませんよね。 - 牧野
- そうですね。そこはある意味、
くつがえすことができたと思っています。 - 岩田
- 伊豆野さんはどうですか?
- 伊豆野
- これまでの『零』ファンの方へは、
牧野さんが言ったことに加えて、
ぜひ
バトルにも注目してもらいたいです。
怨霊の撃退法は、怖いものが近づくといやだけど、
近づかないと大ダメージを与えられない、
という部分は『零』シリーズを踏襲していますが、
その心理的なかけひきは、何割増しかで、
おもしろいものになったと感じています。
- 岩田
- 当社比×割増しってやつですね。
- 伊豆野
- はい(笑)。で、一般のお客さんには、
怖いホラーゲームではあるんですけど、
身構えないで気軽に手にとってほしいですね。
ニンテンドー3DSでしかできない
新しくて不思議な体験を
たくさん用意していますので。 - 岩田
- けっして“後味の悪い遊び”にはなっていません、
といったところでしょうか。 - 伊豆野
- そうですね。
怖さのツボはおさえつつ、
ちょっと驚きのある不思議な体験を
味わってもらえると思います。 - 岩田
- では、最後に菊地さんお願いします。
- 菊地
- 『零』をつくりはじめてから今年で10年、
その間、たくさんのファンの方々から応援いただき、
ここまで続けることができたことを感謝しています。
そのうえで今回、原点に立ち戻りつつ
新しい構造と文法でつくったのが、
この『心霊カメラ ~憑いてる手帳~』です。
仕組みはこれまでとがらっと変わっていますが、
『零』をいままで遊んでいただいた方には、
必ず『零』のエッセンスを随所に感じられる内容に
なっていると思います。
- 岩田
- 『零』にいちばんこだわりを持つ
菊地さん自身がそう感じられるものになった、
ということですよね。 - 菊地
- そうですね。
ニンテンドー3DS自体が、
いままでゲームの中だけの存在だった
“射影機”そのものになっていて、
そのカメラを通じて周りを見まわすと、
本当に身近なところに
『零』の世界を感じられるんです。 - 岩田
- 本当の意味で、
実世界と地続きになった、ということですね。 - 菊地
- もちろん、映像や演出をはじめ、開発チームは
わたしと一緒に『零』をつくってきたスタッフですし、
クオリティに関しても満足いただけると思います。
また『零』をやったことがない方へは、
みなさんの怖いもの見たさであるとか、
お化け屋敷的な、少しだけ怖い体験を
手軽に味わえる商品になっています。 - 岩田
- ゲームの操作が苦手な人も、大丈夫ですか?
- 菊地
- ええ、指先の器用さはさほど重要ではないですね。
- 岩田
- するとたとえば、
家族みんなでもキャーキャー言いながら
楽しめますね(笑)。 - 菊地
- そう思います。
また“恐怖の共感”を意識したつくりなので、
自然と人に見せたくなると思います。
旅先で撮った心霊写真を一緒に怖がるとか、
持ち運べることも相まって
そこからコミュニケーションが生まれる、
言ってみれば“持ち運べる恐怖”です。 - 岩田
- 持ち運べる恐怖ですか!
キャッチーな言葉ですねぇ(笑)。 - 菊地
- ありがとうございます(笑)。
そういう意味でもニンテンドー3DSの機能は、
本当にあますところなく、使っています。
携帯性、カメラ、ジャイロ、立体視、ARといった
3DSとは切っても切れない遊びを用意してあり、
遊ぶ方々のコミュニケーションが生まれる
ホラーゲームに仕上がりました。
ぜひ多くの方に手にとっていただいて
この新しいARホラー体験を味わっていただけたらと思います。 - 岩田
- 今日はみなさん、ありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。