『マリオカート7』
レトロスタジオとの共同開発 篇
4. 「ピンチはチャンス」
- 岩田
- では、最後にみなさんからひとことずつ、
このゲームの自分なりのオススメポイント、
また印象的なできごとがあればお願いします。
トムさんからいいですか? - トム
- はい。まず開発視点からお話ししますと、
『マリオカート』にかかわることで
多くの情報開発チームの方と知り合えて
本当にワクワクしました。
プレイヤー視点では、毎日新しいロムが上がってきて、
仕事として『マリオカート』を遊べたので、
これ以上ない楽しい体験でした(笑)。
空中や海中でのプレイという新しい要素が、
これからどのようにお客さんに評価してもらえるか、
気になりますね。
そして忘れられないできごとは、情報開発さんと
ネットワークを通してはじめて遊んだときのことです。
レトロが恥をかかないように、
よいレースをしなければという気持ちもありましたし、
はじめて一緒にプレイできたというだけでとても楽しかったです。
また、それによってチームとしての連帯感が強まったと思います。
- 岩田
- はい、ではヴィンスさん。
- ヴィンス
- まず何より『マリオカート』にかかわれたことが光栄でした。
最初にこの話が来たとき、家に帰ってすぐに
『マリオカートWii』(※15)を立ち上げまして、
情報開発チームのゴーストデータとレースをしながら
「そうか、この人たちと・・・」と
しみじみ思ったものです(笑)。
新機能についても、とても新鮮な感覚を
お客さんに味わってもらえると思います。
石川さんとやりとりをしたウィルや、
コミュニケーションや進捗管理をしやすくするツールについて
助言してくれたブライアン・ウォーカーにも、
この場を借りて感謝したいと思います。
『マリオカートWii』=2008年4月、Wii用ソフトとして発売されたアクションレースゲーム。
- 岩田
- はい、ライアンさん。
- ライアン
- スーパーファミコン時代から長年のファンでしたので、
わたしも非常にエキサイティングな体験でした。
情報開発チームのみなさんが
どのようにコースについてアプローチしているのか、
またツールについてなどを学ぶことができて、
デザイナーとして見識を深めることができたと思います。
開発終盤にゴーストデータの作成を頼まれたときも
わたしやほかのデザイナーみんなでチャレンジして、
達成タイムの厳しさを学んだと同時に楽しくプレイしました。
本当にすばらしい体験をありがとうございました。
- 岩田
- 一条さん。
- 一条
- はい、レトロのみなさんと連絡を密に取り合うことで、
お互いのよさがすごく活きた、いいゲームになったと思います。
今回はインターネットで8人対戦できるので、
みんなで一緒に遊べたことが楽しかったです。
チェックの一環で遊んでいるんですが、
情報開発から4名、レトロさんから4名、
各部署を代表するメンバーが集結して・・・。 - 岩田
- それはマジな対戦ですね?(笑)
- 一条
- そう、マジな対戦でした(笑)。
さらに出張でレトロさんのところに行ったときは
ローカル通信で対戦できて、それも
ものすごく楽しかったです。
そこではまさにお互いのプライドをかけて、
社を代表して本気の対戦をしました。
こんな感じでお客さんにも
楽しんでいただけるのではないかなと思います。 - 岩田
- レトロのみなさんも、相当うまいんですか?
- 一条
- すごくうまいです。
しかも、対戦のときに限って
上手な人たちを集めてくるんです(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 会社のプライドがかかっている、ということですね。
はい、石川さん。 - 石川
- キャラクターとカートのデザインに関してですが、
今回はカスタム機能があり、
さまざまなカートにいろいろなパーツを付けることができます。
また、手ごたえのあるキャラクターたちがそろっています。
ですので、ぜひ自分好みの組み合わせを見つけて
レースを楽しんでいただきたいです。
見ごたえのあるアニメーションもありますので、
ゴール後のリプレイもしっかり見てくださいね。
あと、これは開発中のエピソードなんですが、
深夜遅くにテレビ会議でレトロさんと、
アニメーションについて話し合いをする機会があって、
回線が悪くて向こうの音声が聞こえなかったんです。 - 岩田
- ああ、たまに、そういうことが起こりますよね。
- 石川
- だから僕が「ジェスチャーでもいい?」と聞いたら、
レトロさんがカメラに向かって「ウェルカム!」と
ジェスチャーで返してくれたんですね。
それが非常に頼もしかったと言いますか・・・
深夜遅くにおじさんたちが激しくジェスチャーをしながら、
やりとりをしたのが面白くて、
それが忘れられない思い出です(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- はい、森本さん。
- 森本
- では新コースについて
あまり触れていなかったので、補足しますね。
こちらはレトロさんから提案されたコンセプトアートで、
実際に新コースとして使われているものです。 - 新コースについては、今作が4作目である僕自身も
「なぜ思いつかなかったんだろう!?」っていうくらい、
いいアイデアをレトロさんが出してくれて、
互いに刺激し合えました。 - 岩田
- うん、新しい人の視点って大事ですね。
- 森本
- そう思います。
じつはアメリカの方のグラフィックや
デザインのセンスに興味がありましたので、
どこかで学ぶ機会があればと思っていましたが、
今回実現することができてラッキーでした。
今後、自分でも取り入れていきたいと思います。
それからオススメポイントですが、
今回、情報開発スタッフとレトロさんとでアイデアを出し合い、
互いにバリエーション豊かなコースをつくりました。
新コースもクラシックコースもバトルステージも
いいものができたと思います。
そこに加えて、宙に舞う火の粉や桜の花びらや
水中のマリンスノーなどのエフェクト効果で、
奥行きや臨場感がすごく増しているんです。
3DSならではの新感覚の『マリオカート』を楽しんでください。
- 岩田
- はい、最後に紺野さん。
- 紺野
- 『マリオカート7』がようやく完成しました。
今回はレトロスタジオさんと情報開発とのコラボレーションで、
とても完成度の高いものができたと思います。
携帯機ですが機能はかなり充実していて、
すれちがい通信(※16)やいつの間に通信(※17)、
インターネット対戦なども含めて
末永く遊んでいただけるような商品になりましたので、
いまはお客さんに早く遊んでいただきたい、
という気持ちでいっぱいです。
すれちがい通信=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。
いつの間に通信=ニンテンドー3DSが、インターネット無線アクセスポイントを探して自動的に通信を行い、さまざまな情報やコンテンツを受信する機能。
- 岩田
- では最後に、わたしから。
わたしは「ピンチはチャンス」という言葉が好きなんです。
当然、物事は予定どおりに進まないことが多いですが、
それは言い換えれば、
普段やらないことにトライするチャンスなんですよね。
今回、社内のデザインスタッフの手が空かず、
レトロさんにお声がけしたことからはじまったんですが、
逆にレトロさんとつくったからこそ
できたことがいっぱいあると思うんです。
だから、今回は「ピンチはチャンス」ということを
地でいくようなプロジェクトだったなという印象です。
これはまぎれもなく『マリオカート』ではありますが、
同時にいままでのシリーズになかった魅力も加わりました。
それは情報開発チームの努力と共に、
レトロのみなさんと協力し合えたことで
実現できたことだと思っています。
本当にみなさん、ご苦労さまでした。
そしてサンキュー、マイケル(※18)&ブライアン!
マイケル・ケルバー(Michael Kelbaugh)さん=レトロスタジオの社長。
- マイケル&
ブライアン - (顔を出し、ビデオに向かって手を振る)
- 岩田
- みなさん、今日は本当にありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。