『リズムハンター ハーモナイト』
2. シンプル操作で奥深い遊びを
- 岩田
- 操作をシンプルにするというのは、
誰にとっても入りやすくなるんですけど、
一方で、すぐにパターンが決まってしまって、
単調に感じてしまうというか、
深みを感じにくいというか、
そういうことが起こりやすくなりますよね。 - ジェイムス
- そうですね。
- 岩田
- その課題はどうやって乗り越えていったんですか?
- 大森
- 僕は、試作期間の6か月が過ぎ、
このプロジェクトが正式にスタートしてから
プランナーとして参加したのですが、
やはりその課題に直面しました。 - 岩田
- 大森さんが参加したとき、
どの程度できていたんですか? - 大森
- その当時はまだDSでつくっていて、
単純な横スクロールのコースと
ボスステージがあるだけで、
ボリューム的には3ステージくらいだったんですけど、
ジェイムスの考えたアイデアは、
シンプルでとても面白いと思いました。 - 岩田
- 面白いとは思ったけど、
どうすれば、商品として認めてもらえるような、
ボリュームなり、遊びの深さなりを実現できるかを
考えていく必要があったんですね。 - 大森
- そうです。
そこでバリエーションを出すために、
新たにギミックを足したりしてみたんです。 - 岩田
- どんなギミックですか?
- 大森
- このゲームは、
リズムに合わせて
ステージ内の音符を拾い集めたり、
タイミングよく敵を倒すのが目的なんですけど、
ステージの上に叩くと音が鳴る、楽器の花を咲かせてみたんです。
敵ではないので、叩かなくてもいいんですけど・・・。
- 岩田
- でも、叩かずにはいられないんですよね(笑)。
- 大森
- そうなんです。
楽器の花には、シンバルとかトライアングルとか、
太鼓のように、いろいろな種類があって、
それをリズムに合わせて叩くと
すごく気持ちよくなるんです。
- ジェイムス
- 通常流れているサウンドに
自分が叩いたシンバルとかの音が足されるので、
ハーモニーが生まれて、
すごく気持ちがいいんです。 - 大森
- 開発中にテストをしていると、
うまいプレイヤーは、勝手に叩きにいって、
自分で難しいプレイに
チャレンジすることに気づいたんです。 - 岩田
- つまり、うまい人は
自分で選んで難易度を高くするわけですね。 - ジェイムス
- そうなんです。
なので、ジャンプしないと届かないような
ズルイところに、あえて楽器の花を置いたりして(笑)。 - 大森
- でも、自信のない人は、
それらをスルーしてもかまわないんです。
敵にやられて、HPのハートがなくならない限り、
どんどん先に進めるようになっていますので。
もちろん楽器の花を叩けば、
スコアは当然高くなるんですけど。
- 岩田
- だから、楽器の花を入れることで
それぞれの難易度で遊べるということなんですね。
この、「敷居は低くてやさしいけど、
腕自慢のプレイヤーも楽しめる」というのは、
『星のカービィ』シリーズと同じ構造ですね。 - 大森
- そうです。
あと、主人公はテンポくんといって、
もともと1人だけだったんですけど、
コースによって変化をつけるために、
操作性の異なる仲間を2人加えて、
途中で交代できるようにもしました。
そのように、最初につくったものに
どんどん足すようなことをしたんですけど、
それでもバリエーションがなかなか出せなかったんです。
そこで、いろんなジャンルの曲を入れてみました。 - 岩田
- 多彩なジャンルの音楽を採用したのは、
すごく効いている気がしますね。
曲調が変わると、がらっと
別のゲームになるような印象があります。 - 大森
- そうなんです。
最初は
ロックっぽくスピードも速いステージにして、
というふうにやっていったんですけど、
途中で
三拍子のステージを入れたりしたんです。
そうすると、タンタンタン、タンタンタンとなって
ちょっと難易度があがったりするんです。
このように曲調を変えることで、
ゲームのバリエーションにつながりました。
- 岩田
- 曲選びに関しては、
どんなことを考えたんですか? - ジェイムス
- 個人的には、テクノとか、
ヒップホップとかが好きなんですけど、
このゲームの世界観は、どちらかというと
ファンタジー系なんです。
なので、あまり現代っぽい音楽だと合わないんです。
そこで、シンフォニー系とか、
ジャズやカリプソ、行進曲のようなマーチ、
それにギリギリこの世界に合うということでロックとか、
いろんなジャンルの音楽を選びました。 - 大森
- それらを全部、オリジナルでつくったんですね。
- ジェイムス
- はい。あと、意識したのはメリハリです。
新しいワールドに入ると、
「あ、さっきとは違う」と感じてもらえるような、
音楽的なメリハリもすごく大事にしました。
ところが実際に、通して遊んでみると、
それだけではまだ、
飽きてしまうところもあって・・・。 - 大森
- そうなんです。
プレゼン用のロムをつくったときに、
いろんな曲調のステージを、
1個のワールドに詰めてみたんですけど、
すごくバリエーションが出て、
そのワールドはとても面白くなったんですけど、
それが何ワールドも続くと・・・。 - 岩田
- 変化を感じなくなるんですね。
- ジェイムス
- そうそう、そうなんです。
- 大森
- そこでワールドごとに
テーマを設けることにしました。 - ジェイムス
- ひとつのワールドに
いろんなジャンルの曲を詰め込むのではなく、
ここはシンフォニーのワールドで、
次はロックのワールド、そのあとはカリプソみたいに、
ワールドをジャンルごとにつくりかえてみたんです。
すると、次のワールドに進むと
とても新鮮な気持ちで遊ぶことができたんです。
それで、スタッフたちも
「おお、これはいい!」ということになりまして。
- 大森
- そのとき、ゲームの完成図が、
ようやく見えたという感じになりました。 - ジェイムス
- 本当にそうでしたね。
あと、けっこう広い層の人たちに遊んでほしいので、
シンプルな遊びにすることを目標にして
このゲームをつくっていたんですけど、
やっぱりビデオゲームが好きな人とかにも
満足してほしいので・・・。 - 岩田
- 「ぬるい」とか言われないようにしたい、
ということですか? - ジェイムス
- そうそう、そのとおりです(笑)。
そこで考えたのが「
スピードモード」です。
テンポアップするだけで、
ものすごく難易度があがるんです。
- 岩田
- テンポを速くするだけで、
まったく違うゲームに化けたんですね。 - 大森
- そうです。実際に触ってみると、
すごく面白くて「これはいける!」と思いました。
しかも、通常のモードでは簡単でも、
「スピードモード」で遊ぶと、
「あれ? できないぞ?」ということになって、
それがけっこう悔しいんです。
結果、何度も挑戦したくなるという、
新しい効果も生まれたように思います。 - 岩田
- その「スピードモード」は
最初から遊べるようになっているんですか?
- ジェイムス
- いえ。もともとこのゲームには
ストーリーがありますので、
ワールドマップの順に遊んでいくんです。
ひとつのワールドをクリアすると、
ステージセレクトの画面が出てきますので、
そこで好きなコースの
「スピードモード」を選べば、
何度でも遊べるようになります。
ですから、腕に自信のある人は、
何度もチャレンジしてほしいと思います。 - 岩田
- ゲームが得意な人も
満足できる遊びになったんですね。 - ジェイムス
- はい。いろんな人が満足できる
ゲームバランスになったんじゃないかと思います。