『スーパーマリオ 3Dランド』
開発スタッフ 篇
1. キーワードは「リセット」
- 岩田
- では、『スーパーマリオ 3Dランド』の開発を担当した
東京制作部のみなさんに集まっていただきました。
どうぞよろしくお願いします。 - 一同
- よろしくお願いします。
- 岩田
- いろいろとチャレンジの多い開発だったと聞いていますが、
まずは自己紹介からお願いします。 - 林田
- ディレクターを担当した、東京制作部の林田です。
今回の企画の言い出しっぺです。
ゲームを立体映像でプレイするのは
子どもの頃からの夢でした。
ですから、立体映像のマリオを
どうしてもつくりたかったんです。
- 岩田
- 林田の野望、ですね。
- 林田
- はい(笑)。
さまざまな仕様の作成や全体調整を行いました。 - 元倉
- 同じく東京制作部の元倉です。
デザインリーダーを担当しました。
デザインのとりまとめや、マリオの動きの設計、デモ設計、
大まかなストーリー決めなど、いろいろ担当しました。
- 菅原
- 同じく東京制作部の菅原です。
今回はプログラムリーダーを担当したり、
個人の仕事としては、クッパやクリボーのような
敵キャラクターのプログラミングを担当しました。
よろしくお願いします。
- 辻村
- 同じく東京制作部の辻村です。
プランナーリーダーとして
プランナーメンバーのとりまとめと、
チームメンバーから引き出したアイデアを
商品に反映させる橋渡しなどをしてきました。
- 岩田
- このチームは、『スーパーマリオギャラクシー』シリーズ(※1)など、
長年3Dマリオを制作してきたチームですよね。
ちなみに、ここでいう3Dマリオとは
ポリゴンでつくられた空間の中で遊ぶマリオのことで、
今回はそれに立体映像が加わったということになります。
今回は林田さんの子ども時代からの夢である「立体映像のマリオ」で、
どのような遊びをつくろうと思ったのか、
そのとっかかりから教えてもらえますか?
『スーパーマリオギャラクシー』シリーズ=1作目は、2007年11月にWii用ソフトとして発売された、3Dアクションゲーム『スーパーマリオギャラクシー』。2010年5月には、2作目『スーパーマリオギャラクシー2』が発売された。
- 林田
- 僕らは『マリオサンシャイン』(※2)から
『ギャラクシー2』まで
ずっと3Dマリオをつくってきたので、
普通なら『ギャラクシー』をそのままニンテンドー3DSへ・・・
と考えるんですが、
「はたしてそれでいいのかな?」と思っていました。
だから、今回、僕がいちばんはじめにチームに言ったのは
「リセット」でした。
『マリオサンシャイン』=『スーパーマリオサンシャイン』。2002年7月に、ゲームキューブ用ソフトとして発売されたアクションゲーム。
- 岩田
- キーワードは「リセット」ですか。
- 林田
- そうです。
これまでのルールをすべて一から見直して、
いろいろ考えてみようと思いました。 - 岩田
- 3Dマリオのリセットでもあるわけですね。
- 林田
- はい。そもそも、僕たちはずっと、
据置機のソフトをつくってきたので・・・。 - 岩田
- あ、そういえば・・・携帯機初仕事ですか?
- 林田
- ええ、初仕事です。
だから、いろいろとわからないこともありました。
たとえば、携帯機は持ち歩けるから、
通勤中の電車の中でプレイする方もいますよね。
僕、自宅の最寄り駅から会社まで数駅なんです。
だったら、その時間でクリアできるくらいのもの・・・
いつでも電車を降りてやめられるくらいの
手軽なコースを目指すのがいいんじゃないか、
とはじめに思ったんです。 - 岩田
- 『ギャラクシー』シリーズとの、大きな違いのひとつですね。
- 林田
- そうです。
『ギャラクシー2』は僕の中で、
中華料理の“満漢全席”のイメージなんです。 - 岩田
- はい(笑)。
- 林田
- 「こんなにいろいろありますから、どれでも食べてください!」
というゲームですね。
全部食べるには何時間もかかるし、
食べおわるとお腹がいっぱいになる。
『サンシャイン』から蓄積していったものを
すべて詰め込んだので、
それこそ「何でもあります!」というゲームを
『ギャラクシー2』でつくったつもりだったんです。 - 岩田
- 次はもっと、次はもっと、とした結果、
どんどん大きく、豪華になっていった、ということですね。
でも一方で、「それはお客さん全員にとっていいことなのか」
という課題が生まれたわけですよね。 - 林田
- ええ。ですから、今度は“満漢全席”じゃなくて、
手軽にサクサク食べられる
“ハンバーガー”みたいな気軽なゲームを目指そう、と。
そこから考えていくことにしました。 - 岩田
- 携帯機ならではのゲームづくりですね。
- 林田
- それともうひとつ、『ギャラクシー2』からの課題として、
「『2Dマリオのお客さん』と『3Dマリオのお客さん』の乖離」
がありました。 - 岩田
- 確かに、
「わたしは2Dマリオは遊ぶけれど、3Dマリオは遊ばない」
と言い切る方もいらっしゃいますよね。
わたしが『ギャラクシー2』のときに
「はじめてDVD」(※3)をつける提案をしたのも、
3Dマリオに慣れ親しんだ人と
そうでない人の差がすごく広がっていて、
触る前から「3Dマリオなんてわたしには無理無理!」
というお客さんが多かったからなんです。
これは、林田さんたち3Dマリオ一筋の人からすると、
かなり寂しいことですよね。
「はじめてDVD」=「はじめてのスーパーマリオギャラクシー2」。『スーパーマリオギャラクシー2』についていた、はじめて遊ぶ方のために操作をわかりやすく解説するDVD。
- 林田
- 僕らは「3Dマリオはおもしろい!」という強い思いがあるので、
「もっと多くの人に、このおもしろさをわかってもらいたい!」
と感じていました(笑)。
だから今回は、そんな『ギャラクシー2』のときよりもさらに、
これまでつくってきた3Dマリオへの入り口となるような
ゲームを目指すことにしたんです。