『スーパーマリオ 3Dランド』
開発スタッフ 篇
4. 「高すぎて怖い」!?
- 岩田
- ちょっと視点を変えて、
今回はじめて「立体視」のゲームをつくってみて、
苦労したことや印象に残ったことがあれば教えてください。
- 林田
- ニンテンドー3DSの立体視は、
画面の奥のほうにゲームの世界があるように表現することが得意で、
僕らも最初はずっとそれでつくってきました。
奥行きが深い画像というのは、
右目用の絵と左目用の絵のブレ量が大きいんですね。
ブレ量が大きいということは、
本体をしっかり正面から持たずにプレイすると、
画像がブレて見えてしまう可能性が大きいということなんです。
普通のゲームだったら問題ないですが、
アクションゲームってみなさん、
体を動かして遊ばれますよね。 - 岩田
- コントローラを動かしても、
マリオの跳ぶ距離は変わらないけれど、
ついついこう(体を動かす)してしまいますからね。
そこに力を入れさせてこその、マリオでもあるので(笑)。 - 林田
- そうなんです。
体が動くのがいいアクションゲームなんです。
でも、それで画像がブレてしまうと困る。
そんなときに宮本さんが、
「『マリオカート』(※13)はブレない」って言うんですよ。
試してみたら、確かにブレないんですよね。
『マリオカート』では、
ちょうど左目と右目の視差がない位置に
自分の車が描かれているのですが、
お客さんがカートを運転しているときは、
ずっと自分の車を見ているので、あまりブレて見えないんです。
じゃあお客さんが3Dランドで何を見ているかというと・・・。
『マリオカート』=2011年12月に発売予定のニンテンドー3DS用レースゲーム『マリオカート7』のこと。
- 岩田
- それはもちろん、マリオですよね。
- 林田
- そう、マリオなんです。
それならば、
右目と左目の視差がなくなるところを「基準面」というんですが、
この基準面をマリオに合わせて、
マリオがブレにくくなるようにしようと。
そうして誕生したのが「おすすめビュー」です。 - 岩田
- これは・・・けっこう完成間際になってから
変更が入りましたよね。
いまさらカメラを触ったと聞いたときに
ビックリしましたから。 - 林田
- 完成まで1カ月切ってました(笑)。
この「おすすめビュー」で、
8割の人は「快適になった」と答えてもらえました。
でも1割2割の人は、「違う、前のほうがいい」と。
じゃあ、やっぱり前のも残しておきましょうということで、
できたのが「ディープビュー」。
ふたつのビューを、十字ボタンで変えられるようにしました。 - 岩田
- 元倉さんはどうですか?
- 元倉
- デザイン的には情報量が多くなると立体感は出しやすいのですが
目が疲れやすくなってしまうことがあるんです。
今回は密度を落としてわかりやすい絵をつくっていましたので
おすすめビューは歓迎でした。
- 林田
- じつは元倉さん、開発初期のときに、
「基準面をマリオに合わせませんか?」
って言ってたんですよ。
でも、初期の段階では、
それをやったらものが飛び出すぎてしまったんです。
だから一度は諦めたんです。 - 岩田
- 基準であるマリオが基準面にあると、
マリオよりも手前にあるものは
すべて飛び出すことになりますから、
かなり調整をしないと目が疲れやすくなるんですよね。 - 林田
- そうなんです。でも、最後の最後に、
『マリオカート』ではできてるって話を聞いて。
立体視の強さを弱めたり、カメラを変えたりして、
ものが飛び出すぎないようにしました。
ちなみに3Dボリュームをオフにしていても、
きちんと遊べるようにつくりました。
たとえば、3Dマリオのルールなんですが、
空中にものがあったら、必ずその真下に影が落ちています。
コインやブロックの影を見て、
その真下からジャンプすればいいわけです。 - 元倉
- 敵の上に落とす影も、そうですね。
立体視なしでも遊びやすいように、
敵の上にプレイヤーの影をしっかりと落とせるようにして、
上から踏みやすくしてみました。 - 岩田
- そこは「立体視だからわかる」のではなくて、
「立体視じゃなくてもわかる」ようにつくられているんですね。
もちろん、「立体視だからわかりやすい」のは間違いないんですけど。
逆に、3DSならでは、立体視ならではの遊びには、
どんなものがあるんですか? - 辻村
- やはり、3DSならではの迫力がある遊びですね。
振り子の鉄球が前後に振れるのをかわしていく遊びとか、
金棒が奥から手前にガーン! と出てくるとか・・・。
- 菅原
- クッパが炎を奥から手前にはいてくるところなんかも
そうだと思います。 - 林田
- やっぱり立体視と言われると、
チームのみんなが飛び出させたがるんですよね(笑)。
たとえばいちばんはじめのステージで、
コインが川を下ってきてビヨーンって飛ぶという、
変な動きをしているんですけれども、
それなんかまさしく・・・。
- 岩田
- 3Dで見てもらいたいからですね(笑)。
- 辻村
- あと今回、おもしろいモニター意見があったんです。
よくある、マリオが谷底へ落ちるシーンなんですが、
そのシーンが「高すぎて怖い」って。
それでもう一度、高さの調整をしたんです。 - 岩田
- 怖いから・・・それで調整するんですか(笑)。
- 辻村
- もともと過去のシリーズにもあったシーンなんですけれど、
こういう感想が出たのは、今回がはじめてでした。 - 岩田
- それはやはり“臨場感の差”ってことですね。
- 林田
- それと、これまでの3Dマリオは「ジャンプ補助」として、
『マリオサンシャイン』ではホバー、
『マリオギャラクシー』ではスピン、
『マリオギャラクシー2』ではヨッシーの踏ん張りがあったんです。
今回は、「立体視がある」ということで、
足場の位置がわかりやすくなる分、
「ジャンプ補助」機能をなくしてみました。 - 岩田
- それは潔いですね。
- 林田
- はい、潔く(笑)。
・・・とはいうものの、
変身マリオである「
タヌキマリオ」のときは、
「ゆっくり落下」というジャンプ補助が入る、
という構造にしてあります。
初心者の方はタヌキマリオでプレイしていただいて、
上級者の方には、ぜひ普通のマリオで挑戦してみていただきたいです。