『スーパーマリオ 3Dランド』
開発スタッフ 篇
5. 「生やしちゃえ、生やしちゃえ」
- 岩田
- そういえば、タヌキで思い出したんですけれど・・・
この間のカンファレンス(※14)で流れたビデオに、
しっぽの生えたクッパがいましたよね。
わたしもそのときにはじめて見たもので、
「何だこれは!?」ってビックリしたんです(笑)。
- 一同
- (笑)
カンファレンス=「ニンテンドー3DSカンファレンス 2011」。2011年9月13日に行われた、業界関係者向けの発表会。
- 岩田
- 「どういうこと?
いろいろなクッパが出てくるの? 」
と困惑しました(笑)。 - 辻村
- ああ、もうそのツッコミが、
うれしくてたまらないですね。 - 岩田
- しっぽクッパの話を訊かせてください。
どうやってしっぽクッパが生まれたのか、
許可はどうやって取ったのかとか・・・。 - 元倉
- 許可は・・・そうですね・・・。
結論から言うと、「生やしちゃえ、生やしちゃえ」のノリです。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 「生やしちゃえ、生やしちゃえ」ですか?(笑)
- 元倉
- はい。まず、しっぽというものの前に、
タヌキマリオがいたんです。
「どういう風にデザインをまとめていくか?」
「新しい軸がほしいな・・・」と考えていたときに、
「クリボーにしっぽをつけよう」と思ったんです。
クリボーにしっぽを生やしたイラストを描いて
敵キャラクターのデザイナーのところに行ったら、
「ちょうど僕も(しっぽをつけようかと)考えてました」と。 - 岩田
- え? 偶然の一致なんですか!?
- 元倉
- はい。そのデザイナーに、
「林田さんに聞いておいてください」って頼んでおいたら
林田さんも・・・。 - 林田
- 「いいね!」と即答しました。
「生やしちゃえ、生やしちゃえ」って言ってました(笑)。 - 岩田
- それが「生やしちゃえ、生やしちゃえ」ということなんですね(笑)。
でもやっぱり、クリボーにしっぽを生やすのと、
クッパにしっぽを生やすのとでは、
ちょっと段階が違ってくるんじゃないですか? - 元倉
- そうですね。ただ、マリオにしっぽが生えている時点で
いちばん高いハードルは越えているんです。
初代『スーパーマリオ』に、
「
クッパにファイアボールを当てると、
じつはクリボーだった!」・・・というネタが入っているので、
それをオマージュしたいと思って。
クリボーが「スーパーこのは」を使って変身して、
しっぽクッパになっていることにしようかな、と。
それでしっぽクッパができました。
- 岩田
- なるほど。それをドキドキしながら、
宮本さんにプレゼンしたんですね。
宮本さんはどうでしたか?
- 元倉
- 意外と普通に・・・OKでしたね。
- 一同
- (笑)
- 元倉
- 2Dマリオをメインに手がけている手塚(卓志)さん(※15)からも、
「もっといろいろなものに生えてたらいいのに」
というコメントをもらいました。
手塚卓志=情報開発本部制作部部長。『ゼルダの伝説』シリーズなど、これまで多数のソフトの制作やプロデュースに携わる。
- 岩田
- 手塚さんも「生やしちゃえ、生やしちゃえ」なんですね(笑)。
- 元倉
- 気がついたら、
担当のデザイナーが、
キラーとか、ドッスン、
テレサにも生やしてました。
- 岩田
- ちなみに、ロゴにまで生やしたのは、
一連の設定が決まった後だったんですか? - 元倉
- いや、決まる前です。
- 岩田
- そうなんですか!
いや~、しっぽに導かれてますねえ(笑)。 - 元倉
- ロゴは、
『マリオ3』(※16)のロゴに生えていた、
しっぽのシルエットが元になっています。
『マリオ3』=『スーパーマリオブラザーズ3』。1988年10月に、ファミコン用ソフトとして発売されたアクションゲーム。ロゴにしっぽのシルエットが描かれており、ゲーム内でタヌキマリオが登場した。
- 岩田
- 確かにロゴを見ると、
これは『マリオ3』と関係があるのかな?
と思いますよね。 - 林田
- そうなんです。宮本さんは
「タヌキマリオといえば『マリオ3』だし、
今回ハードが『3DS』だし、
『スーパーマリオ3DS』とかいうタイトルになったら
ピッタリはまるんじゃない?」と・・・。 - 岩田
- え? ダジャレですか!?
- 一同
- (笑)
- 林田
- あと、「タヌキマリオが出る」という話をすると、
必ず聞かれるのが「地蔵は出るんですか?」ということなんです。 - 元倉
- それから林田さんが呪文のように
「地蔵、地蔵」と唱えるので入れました・・・。 - 岩田
- これも「入れちゃえ、入れちゃえ」ですね(笑)。
- 林田
- でも今回、「地蔵を入れてほしい」と言われて、
いちばん困ったのはプログラマーの菅原さんなんです。 - 菅原
- 地蔵になったときって、
敵キャラクターが追いかけて来ないんですね。
クリボーなんかはマリオを追いかけてくるんですけど、
地蔵のときに追いかけてくるのはやっぱりおかしい。
だから、
敵キャラは地蔵を無視するという、
大改造を入れなくてはならなくて・・・。
- 岩田
- 全システムに影響が及んでしまったんですね。
- 菅原
- そういうことを何回もくりかえしつつ・・・。
- 岩田
- そういうことをさらっと頼むんですよねぇ。
- 林田
- しかも今回は、3Dマリオでは初なんですが、
なんと変身を次のステージに引き継げるんです。
そのため、すべてのステージで、
地蔵の反応をつくらなくてはならないんです。 - 菅原
- そうなんです。海に出るはずのウツボに、
地蔵がぶつかったらどうなるかとか、
いままでは絶対に考えなかったことを
いろいろと突っ込まれて。
「地蔵でヒップドロップしたら、
ウツボは倒せるんですか?」とか。 - 一同
- (笑)
- 菅原
- そういうのもつくらないといけなくなるんです。
- 岩田
- 頼もしいですね、プログラマー。
菅原さんに謝るならば、
この場を借りて謝ったほうがいいですよ(笑)。 - 林田
- ええ、プログラマーのみんなは本当に大変だったと思います(笑)。
- 元倉
- 地蔵マリオのほかにも、今回は追加で
「
ハンマーマリオ」(※17)へのオマージュなんです。
このブーメランは、ファイアとは違って
敵を貫通して戻ってくるのが特徴で、
一度投げて、もし外れてしまっても
マリオの方に向かって戻ってくるので、
敵に当たりやすいという性能があります。
「ハンマーマリオ」=『スーパーマリオブラザーズ3』で、マリオがハンマースーツを取ることで変身する変身マリオ。ハンマーを投げて攻撃できる。
- 林田
- それに、なんと
マリオが自分で取れないスターメダルを
ブーメランが回収してくれるという、
便利な機能もつけてもらっています。
- 元倉
- ちなみに、「プロペラボックス」は
ビジュアル的におかしいんですけど、
「プロペラボックス」という箱をかぶっているようにしています。
3D空間との相性も良いので、ぜひ遊んでみてほしいです。
- 林田
- 「ビジュアル的におかしい」って・・・、
元倉さんがつくりたかったんじゃないんですか!(笑)
『ギャラクシー』の頃から、「箱マリオ、箱マリオ」って
つぶやいてましたよね。 - 元倉
- あ、そうでした(笑)。