『スティールダイバー』
2. 陸海空を完全制覇
- 岩田
- さて、杉山さんにとって、
今回の『スティールダイバー』の企画は
かなり長いテーマになりましたね。 - 杉山
- はい。2004年のE3(※5)で
初めてニンテンドーDSを出展しましたが、
そのときにテクニカルデモとして出したのが
そもそものはじまりでした。 - 岩田
- あのときのわたしの印象では、
体験してくださった方々から、とても評判がよくて、
「あれ、遊べましたよ」という声もけっこうあったんですけど、
すぐに陽の目を見るようなこともなく、
そのあと杉山さんは『Wii Fit』(※6)などの開発で
忙しくなってしまったんですよね。 - 杉山
- そうです。
E3=Electronic Entertainment Expo(エレクトロニック エンターテインメント エキスポ)の略で、年に1度、米国のロサンゼルスで開催されるコンピューターゲーム関連の見本市のこと。
『Wii Fit』=2007年12月に、Wii用ソフトとして発売されたフィットネスゲーム。
- 岩田
- いつ頃から、「これ、仕上げへんの?」と、
プレッシャーがかかるようになったんですか? - 杉山
- E3からだいぶ時間が経って、
NOA(Nintendo of America)から
「DSiで出してほしい」という話がありまして・・・。
- 宮本
- え?そうだったっけ?
- 杉山
- そうです(キッパリ)。
- 宮本
- 僕、杉山さんの顔を見るたびに、
「あれを仕上げるのは、杉山さんの仕事やからね」と
言ってきたんです。 - 杉山
- そう、そうでした・・・(笑)。
- 宮本
- 「あ、そういえば、あれはどうなってんの?」
「あれはいつかは仕上げるんやろ?」
「どうすんのよ、あれ?」って、
しつこく言い続けていて。 - 岩田
- 杉山さん、宮本さんに会うたびに言われてたんですね(笑)。
- 杉山
- はい。言われてました(笑)。
- 宮本
- で、NOAの人たちも
「あれは面白かった」と言ってくれるし、
ジャイルズさんのチームがちょうど空いたので、
杉山さんに「いっしょにつくったら?」と言ったんです。 - 岩田
- 宮本さん、どうしてジャイルズさんたちといっしょに
今回の『スティールダイバー』をつくろうと思ったんですか? - 宮本
- ひとことで言うと、
このテーマは彼らに合っているような気がしたんです。
先ほどの話にも出ましたけど、
昔からいっしょに仕事をしてきましたし、
彼の力は十分わかっていますから。
それと会社のヴィテイも京都で・・・。 - 今村
- 会社が近くにあったので、僕がジャイルズさんの会社に
毎日のように通うことができたんです。 - ジャイルズ
- 毎日、今村さんがうちの会社に来てくれるのは、
僕たちにとって、すごくよかったんです。
ちょっとの相談でもすぐにできるし、
細かい操作性を毎日のように修正できたり、
開発をスムーズに進めることができました。 - 岩田
- ジャイルズさんが京都にいたというのは、
開発を進めるのに大きなメリットだったんですね。 - 今村
- そうですね。
- ジャイルズ
- それに、僕が情開(情報開発本部)に入ったときと
やり方が同じだったので、
情開でつくっていたときと同じような感覚を、
久しぶりに感じることができました。 - 岩田
- 今回は何人のチームでつくったんですか?
- ジャイルズ
- ヴィテイのスタッフは11人です。
- 今村
- 今回は、ヴィテイさんと情開の
ミックスのプロジェクトでした。
一時的に情開がヴィテイさんに
拡大したような感じで開発が進められました。
最初はモードが1個しかないということもあって、
DSi用につくっていたんです。 - ジャイルズ
- そうですね。
最初はダウンロードできるDSiウェア(※7)でした。
DSiウェア=ニンテンドーDSiとDSi LLで、「ニンテンドーDSiショップ」からダウンロード購入できるソフトウェアのこと。
- 杉山
- そうやってDSiウェアでつくりはじめたものの、
「これは育ちそうだ」ということで
DSのパッケージソフトでつくることにして、
そのために、ほかのモードをいくつか付けようと考えました。
先日の「社長が訊く」でもお話に出ていた、
『レーダーミッション』(※8)のリベンジとかがそうですね。 - 岩田
- かつて宮本さんがつくった
ゲームボーイソフトを今回、
リベンジしたいという話でしたよね。 - 宮本
- そうです。
そこで、大きな展開にするためには
ディレクターが必要だということになって、
今村さんに頼むことにしたんです。 - 岩田
- 今村さんは、DSのパッケージソフトを出そうとなってから、
巻き込まれたということなんですね。 - 今村
- そうです。でも実は・・・
宮本さんは覚えていないかもしれませんけど、
『スターフォックス コマンド』(※9)を立ち上げる前に、
宮本さんから「潜水艦、やってくれないか?」
と言われたことがあったんです。
- 宮本
- そうだったっけ?
- 今村
- はい。で、そのときは、杉山さんたちがつくった
テクニカルデモのロムを借りて、ずっと研究していました。
『レーダーミッション』=1990年10月に、ゲームボーイ用ソフトとして発売。潜水艦での魚雷戦と、敵艦隊とのレーダー戦のふたつのタイプの海戦ゲームが収録されている。
『スターフォックス コマンド』=2006年8月に、ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたシューティングゲーム。
- 岩田
- ああ、そういう時代のテーマなんですか。
『スターフォックス コマンド』が出たのは2006年でしたから、
それこそ2004年のE3のあとに
本格的に開発しようという動きもあったんですね。 - 今村
- そうなんです。でも、話し合ってるうちに、
「やっぱりテーマがちょっと地味やし、
これをパッケージで売るのはキツイよね」ということで、
お流れになったんです。
ところが、今回、突然「潜水艦を・・・」と言われて、
「あ、また来た!」みたいな感じでした。 - 岩田
- 「帰ってきた潜水艦」ですか(笑)。
- 今村
- ええ、しかも、いきなり急浮上してきました(笑)。
- 宮本
- それはやっぱり、
僕の頭のなかのイメージにあったんでしょうね。
「潜水艦をつくるなら今村さんや」って(笑)。 - 今村
- えー・・・それはたぶん、
僕がこれまで“乗り物系”ばっかりつくってきたので、
そういうイメージが宮本さんの頭のなかに
でき上がっているんじゃないですか? - 岩田
- あははは(笑)。
確かに今村さんは
『F-ZERO』(※10)でクルマを走らせ、
『スターフォックス』では戦闘機を飛ばしましたからね。
『F-ZERO』=1990年11月に、スーパーファミコン用ソフトとして発売されたレースゲーム。
- 今村
- で、今回は潜水艦なので、陸海空と(笑)。
- 岩田
- おお、すごい! 陸海空を完全制覇じゃないですか(笑)。
- 一同
- (笑)
- 今村
- そうなんですよ(笑)。
それでDSのパッケージソフトとしてつくることにして、
もともとあった「潜水艦モード」のステージを増やしたり、
宮本さんのリベンジである「海戦モード」や、
さらに「潜望鏡モード」などをつくって足していきました。 - 岩田
- その結果、3つのモードになったんですね。
- 今村
- はい。
- 宮本
- 3つのモードは全部違うんです。
- 岩田
- 潜水艦がテーマだということ以外は、
全部違うゲームと言ってもいいくらいなんですか? - 今村
- そうですね。ただ、「潜水艦モード」のなかに、
ボーナスゲームで潜望鏡の遊びが入ってますし、
「海戦モード」でも、バトルは「潜望鏡モード」になるんです。
なので、潜望鏡くくりではあるんですけど、
遊びをいろいろとミックスしたものになっています。