ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング』
川島隆太教授 篇
1. はじめての出会い
- 岩田
- 今日はどうぞよろしくお願いします。
- 川島
- はい、どうぞよろしくお願いします。
- 岩田
- 先生とはもう、7年半のお付き合いになりますね。
- 川島
- 長くなりましたね。
- 岩田
- 『脳トレ』(※1)は2004年12月2日、
ニンテンドーDSの発売日に先生のところにお訪ねして、
社内で勝手につくった試作ソフトをお見せして
ご提案したことがきっかけで生まれました。
それ以来のお付き合いになりますが、
偶然にも、わたしと先生は同世代で、
たくさんの共通体験を持っているんですよね。
『脳トレ』=『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』。ニンテンドーDS用ソフトとして、2005年5月発売。
- 川島
- はい、同じ学年なんですよね。
- 岩田
- わたしはそのことを知って、
「自分で会いにいって、お願いしよう」と思って、
『脳トレ』の試作ソフトを持っていきました。
その当時、まだ加齢医学研究所ではなかったですね。 - 川島
- ええ。“未来科学技術共同研究センター”という
舌をかみそうなセンター名でした(笑)。
じつは当時、
「任天堂さんから社長さんが、
いったい何をしにいらっしゃるんだろう?」
って、けっこう身構えていたんですよ(笑)。
でもお会いしてお話しして、妙に波長が合って、
「この試作ソフトを使ったときの脳の活動を
測定してみましょう!」って、
ノリノリで提案した記憶があります。
- 岩田
- “波長が合う”という感覚は、わたしもまったく同じでした。
もともと先生の『大人のドリル』シリーズ(※2)を知っていて、
実際にやったこともあって、
「面白い!」と思ったからソフト化を考えたんですけれど、
初対面でしたのに、すごく話が弾みましたね。 - 川島
- そうでしたね(笑)。
『大人のドリル』シリーズ=川島先生著書の『脳を鍛える大人の計算ドリル 単純計算60日』『脳を鍛える大人の音読ドリル名作音読・漢字書き取り60日』。2003年11月、くもん出版より発売され、ブームとなった。
- 岩田
- その日、すぐに先生が試作ソフトを測定してくださって、
「このソフトは大丈夫です。
ちゃんと脳に効いているから、商品化できますよ」
とお墨つきをもらって帰ることができました。
確か、最初は「30分だけ」というお約束でしたけど、
けっきょく3時間も長居して・・・(笑)。
でも、すごく意味のある1日でした。 - 川島
- はい、そうでしたね。
- 岩田
- 一方で、『脳トレ』を最初につくったとき、
世の中でこんなことが起こるとは思いませんでしたが、
先生にはどう見えていましたか? - 川島
- みなさんと同じ感覚だったと思いますけど、
ブームになるとは思っていなかったです。
「任天堂さんにやっていただくから、
話題にはなるだろうな」とは思っていましたけど、
こんなに、いろんな声が聞こえてくるほど
大きくなるとは、考えていなかったです。 - 岩田
- 「面白いものができた」という自信はあったんです。
ただ、ゲームに触れたことがない方たちが、
「これは面白い」と言ってくれるほど受け入れられるかは、
やってみなければわかりませんでした。
しかも国内ブームの後、海外でも展開することになりました。
わたしは「日本でとんでもないことが起こりつつある」
という手ごたえを得た2005年の秋頃に、
「これは絶対、世界で売るべきだ!」
と、使命感のようなものを感じて、
自分自身でアメリカやヨーロッパの販売担当の人たちに
売り込むために持っていって説明していたんです(笑)。
- 川島
- ははは(笑)。
ただ・・・海外の展開については正直、
たとえば“計算をコツコツ解く”というのは、
「勤勉な日本人の国民性なのかな?」
という感覚はありました。 - 岩田
- そもそも、読み書き計算は、
くもんさんが世界に輸出している
日本文化のひとつの象徴ですからね。 - 川島
- はい。でもそれも、
「サムライのやり方だ」と言われて、
海外でそれほど広がっているわけではないんです。
そういう意味で、『脳トレ』が世界で受け入れられるかは、
僕の中ではクエスチョンマークはありました。 - 岩田
- それが、特にヨーロッパでは日本の販売数を超えて
ある意味、社会現象のようになっていきました。
先生の研究を海外にお知らせする、という意味でも
「少々お役に立てたかな」と思います。 - 川島
- そうですね。
僕個人を知ってもらうということでは
有名になったと思います。
以前、ドイツから大学の教授が訪ねてきたんですよ。
何しにきたのかと思えば、
その人も息子さんも『脳トレ』をやっている、と。
それで「プロフェッサー川島は、実在の人物か?」と、
家族でディスカッションになったそうなんです(笑)。 - 岩田
- はい(笑)。
- 川島
- 自分の職場でも、息子さんの学校でも、
「あれは本物だ」「いや、バーチャルの人間だ」
なんて、ディスカッションになっていたらしく、
「本物に会えてよかった」と言われました。 - 岩田
- フィクション上の人物のような
扱いさえ受けられたんですね(笑)。 - 川島
- そうなんです。
「フィクションだったら、もっといい男にするはずだろう?」
と言ったら、「ウン」って納得されたんで、
ちょっとムッとしましたけど(笑)。 - 一同
- (笑)