『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』
1. 「真っ白に燃えつきて」
- 岩田
- 今日はニンテンドー3DSソフト
『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』の
関係者のみなさんに集まっていただきました。
まずはみなさんから、何を担当されたか、
自己紹介をお願いします。
では、前川さんからどうぞ。 - 前川
- アルファドリーム(※1)の前川です。
今作ではプロデュースを担当しました。
おもに全体の進行や大谷さんとのやりとり、
今回は外部の会社さんに協力していただいたこともあり、
マネージメントなどをおこないました。
アルファドリーム=株式会社アルファドリーム。東京都渋谷区にあるゲームソフト開発会社。設立は2000年。代表作は『マリオ&ルイージRPG』シリーズ。2013年7月18日にニンテンドー3DS用ソフトとして最新作『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』が発売。
- 岩田
- 前川さんはシリーズの最初から
かかわっておられたんですよね? - 前川
- 1作目(※2)はディレクターを担当しまして、
『2』(※3)からプロデューサー的な役割をしています。
1作目=『マリオ&ルイージRPG』。2003年11月、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売されたアクションRPG。ピーチ姫の美しい声を取り戻すべく、マメーリア王国を冒険する。
『2』=『マリオ&ルイージRPG2』。2005年12月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたシリーズ第2作。マリオ&ルイージが過去の世界を冒険し、子どもの頃の自分たちであるベビィマリオ&ベビィルイージと協力しながら冒険する。
- 岩田
- シリーズとともに歩まれて、もう10年以上ですね。
- 前川
- はい。
- 岩田
- では窪田さん。
- 窪田
- アルファドリームの窪田です。
ディレクションおよびシナリオを担当しました。
2作目から3作連続でディレクターとしてかかわっています。
1作目の時はフィールドの構成やシナリオなどを担当しました。
- 岩田
- じゃあ前川さんと窪田さんは
ずっとコンビでありつづけているんですね。 - 窪田
- はい、長いですね(笑)。
- 大谷
- 任天堂側でプロデューサーを務めた大谷です。
シリーズは2作目から参加していて、
前川さんと一緒に全体を見ていました。
- 佐野
- 任天堂の佐野です。
アシスタントプロデューサーとして大谷さんの補佐を務めました。
もとはデザイナーなのでグラフィック部分を中心に見たり、
「ゲームの遊びやすさ、面白さが伝わりやすいか?」
という観点から内容を見る役でした。
- 岩田
- はい。では最初に前作のお話をしたいのですが、
『3』(※4)はおかげさまで多くの方に遊んでいただいて、
お客さんがぐっと広がった手ごたえがありました。
3作目はどの部分を評価していただいたと思うか、
みなさんに訊いてもいいですか?
『3』=『マリオ&ルイージPRG3!!!』。2009年2月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたシリーズ3作目のアクションRPG。マリオとルイージがクッパの体内で冒険する。
- 大谷
- いきなり『3』からですか(笑)。
『3』のよさは、
僕は「クッパ」だと思っているんですけれども・・・。 - 岩田
- マリオがクッパの体内を冒険したり、
巨大化したクッパでバトルしたりするんですよね?
前川さんは? - 前川
- はい。クッパと、あとは・・・。
えーと・・・。 - 伊豆野
- ・・・横から言っちゃいますが、
わたしは2画面の遊びが評価されたのだと思います。
- 岩田
- はい(笑)。
助け船を出してくれた伊豆野(敏晴)(※5)さん、
自己紹介をお願いします。
伊豆野敏晴=企画開発本部 企画開発部所属。本作『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』では、プロデューサーを務める。過去、社長が訊く『花といきもの立体図鑑』に登場。
- 伊豆野
- はい(笑)。任天堂の伊豆野です。
『トマトアドベンチャー』(※6)ではじめてご一緒した時から
アルファドリームさんとともにつくりつづけています。
僕は3作目からプロデューサーを務めていて、
今回も総合プロデュースを担当しています。
『マリオ&ルイージ』シリーズは、
いったん『2』で売上が伸び悩んでしまったので、
『3』でどうやって盛り返せるかを考えたんですよ。
『トマトアドベンチャー』=2002年1月、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売されたアクションコマンド型RPG。株式会社アルファドリームが開発を担当。
- 大谷
- そうですね。
『3』はリベンジの気持ちもあり、
どうやってつくるか考えていたところに、
窪田さんから「クッパを使って考えてみたい」
と提案があったんです。でも、最初は・・・。 - 岩田
- 『マリオ&ルイージ』なのに「なぜクッパなの?」って?
- 大谷
- はい。クッパでどうやってゲームをつくるのか
不思議だったんですけど、
クッパの遊びを考えはじめると、
いろいろ面白いアイデアが出てきたんです。 - 伊豆野
- クッパを巨大化させようという構想が生まれましたし、
「クッパの体内のミクロな遊び」と、
「巨大クッパ」のスケール感の違いも際立ちました。 - 岩田
- クッパが巨大化したことで普段と違う感じになり、
そのダイナミック感がよかったんですね。 - 窪田
- そうですね。
それに巨大クッパのバトルで
DSを縦持ちにしたのもよかったですよね。 - 大谷
- あれは迫力が出ましたし、いいアイデアでしたね。
「縦持ち」のアイデアは、宮本(茂)さんも
「これ、ええやん」って褒めてくれました(笑)。 - 岩田
- 結果として『3』で大きく盛り返したあと、
今度はみんなに期待されながら
『4』をつくることになったと思うんですが、
前作とは違うプレッシャーを感じませんでしたか?
- 窪田
- いやあ、もう・・・
正直『3』がおわった時点で“白紙”状態でした。 - 岩田
- 真っ白に燃えつきたんですね(笑)。
- 窪田
- はい(笑)。とはいえ、
次に向けて動きはじめなければならないので、
スタッフにいろんなアイデアを出してもらいました。
そのひとつに夢システムの原型となる企画があって、
大谷さんがすごく食いついてくれたんですよ。 - 大谷
- 「クッパをもう一度」と考えたのですが、
ほかのキャラクターに頼り過ぎると
『マリオ&ルイージ』ではなくなってしまうので、
一度『4』ではマリオとルイージだけで
遊べる内容にしたかったんです。
だからアルファドリームさんには
「マリオとルイージだけで考えてください。
ほかのキャラクターは禁止です」ってお願いしました。 - 岩田
- “クッパ禁止”ですか。
それはキツいしばりでしたねぇ。 - 前川
- アイデアが出るまで『3』がおわってから
半年・・・くらいはかかっちゃいましたね。 - 大谷
- でもそこで、おびただしい数のルイージが出てくる
「夢世界」という案が出てきたんです。 - 岩田
- はい。今回は「現実世界」と、
ルイージが眠ったときに出現する「夢世界」の
2つの世界を行き来しながら冒険するんですよね。
「夢世界」には、夢であるのをいいことに大量のルイージたち、
通称「ユメルイージ」がたくさん登場しますけど、
「夢世界」と「大量のユメルイージが登場する」
という案は、最初からひとつだったんですか? - 窪田
- いえ、じつは別々のアイデアです。
最初に大量のルイージが出てくる案があって、
少し遅れて「夢世界」の案が出てきました。 - 大谷
- 先に大量のルイージが出てくる試作をつくったんですが、
ルイージを崩さないでゴールを目指す遊びだったこともあり、
アクション性が強く、これだけを柱にはできなかったんです。
そこで2画面の遊びをもう一度考えて、
「下画面で寝ている現実世界のルイージをいじって、
上画面の夢世界に変化を起こす」という案とあわせて
2つを柱にすることにしたんです。
- 前川
- でも、ルイージの顔を下画面に出す案について、
最初、窪田は猛反対していたんですよ。 - 窪田
- んっ?
- 前川
- 猛反対してたよね?
- 窪田
- ええっと、そうでしたっけ?(笑)
- 岩田
- 衝撃なんですけど(笑)。
- 窪田
- いやいや(笑)。
まあ、夢の遊びとして本当に広がるか不安があったんです。
でもシリーズ通してルイージは「いじられ役」だし、
寝ているルイージの顔をいじるのは、
シリーズのテイストにも合うなとは思っていました。 - 岩田
- それが「ルイージ30周年」に発売になるとは・・・。
- 窪田
- 思いませんでした(笑)。
- 岩田
- 「ルイージの年」(※7)宣言を聞いたとき、
どう思いました?
「ルイージの年」=1983年にアーケード版『マリオブラザーズ』でルイージが初登場してから30周年を迎える。「Nintendo 3DS Direct Luigi special 2013.2.14」と題して放映されたニンテンドーダイレクトでは、岩田が今年(2013年)を「ルイージの年」として宣言し、ルイージの帽子をかぶって登場した。
- 大谷
- それが申し訳ないことに
「ルイージって今年30周年なの!?」って・・・(笑)。
ただ、プロデューサーとしてうれしかったですよ。 - 前川
- 僕たちもルイージを10年ほど
あずかっていた身として、本当にうれしかったです。
ゲームの中でいつもひどい扱いをしていますけど(笑)。 - 岩田
- ルイージがいろんなゲームでひどい扱いをされてきたから、
「今年だけでもルイージに花を持たせてあげよう」と、
「ルイージの年」を企画したんですよ。 - 窪田
- そうだったんですね。
とはいえ今回も寝ているルイージの顔を
さんざんいじり倒しますけど(笑)。