『ファイアーエムブレムif』
5. 「しばらくお待ちください」
- 岩田
- 今作では、別のゲームを3本つくり、
物語の質を高めるために
樹林さんに加わっていただけたことが、
もっとも大きなポイントであるのは
間違いないとは思いますが・・・。 - 樋口
- そうですね。
- 岩田
- そのほかには、どんなことに
ちからを入れたんですか? - 樋口
- いくつかあるんですけど、
そのひとつは通信を使って楽しめる
「マイキャッスル」(※30)です。
「マイキャッスル」=プレイヤーが自由につくることができる自分だけの“拠点”となる場所。武器屋や道具屋などの建物を自由に配置して城下町を作製でき、仲間に加わっているキャラクターたちもここに暮らしている。章と章の間に訪れることができ、この拠点で次の戦いに備えたり、仲間とふれあうことができる。「マイキャッスル」について、くわしくは公式サイトを参照。
- 岩田
- それはどんなものなんですか?
- 樋口
- 「マイキャッスル」というのは、
章と章の間に訪れることのできる、
文字どおり、“自分のお城”なんですけど、
城下町を自分の好きなようにレイアウトすることができて、
そこではキャラクターたちとの会話を楽しめるだけでなく、
ほかのプレイヤーと交流したり、戦闘もできたりします。
今回はシミュレーションゲーム以外の遊びも
楽しんでいただきたいということで、
前田がガツンと入れてくれました。
- 横田
- 「マイキャッスル」も、
おかしいくらいに物量が多いんです。 - 樋口
- スタッフからは
「これだけでも、ゲーム1本分はありますよ」
と言われたくらいですから。 - 岩田
- ゲーム1本分、ですか?
前田さん、3本のゲームをつくるだけでも
たいへんだったはずなのに、「マイキャッスル」を
どうして入れようと思ったんですか? - 前田
- 「マイキャッスル」では
仲間キャラクターたちといっしょに暮らしている感覚が
味わえるようになっていまして、
よりキャラクターに愛着を持っていただこう
ということでつくりました。 - 樋口
- そもそも前田は
キャラクターの魅力を高めるためなら
どんな苦労もいとわない人間なんです。
お客さんの“キャラ愛”につながるものであれば
なんでも貪欲に取り入れようとするんですね。 - 岩田
- その結果、ゲーム1本分が
さらにつくられたんですね? - 前田
- そうですね。
それで、もともと「マイキャッスル」は
すれちがい通信(※31)だけを使う予定だったんですけど、
インターネット通信を使って、
相手の城下町と行き来できたり、
バトルもできるようになりました。
これは、樹林さんがいろんなネタをくださるなかで、
生まれた仕様だったんですけど・・・。
すれちがい通信=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。
- 岩田
- えっ、樹林さんは、物語を書いただけじゃなく、
ネタもいろいろと出してくださったんですか? - 樹林
- はい。
いっしょに仕事をさせていただくなかで、
「こんなんやったらどう?」とか
「こんなんあったらいいんじゃない?」とか、
できるはずもないようなことを
好き勝手に言ってたんです。 - 前田
- 樹林さんからいただいたネタのなかには、
「実現するのは難しいかな」
というものもあったのですが、
「マイキャッスル」の話をしているときに
「すれちがい通信とは違う方法で、
もっと多くの方に遊んでもらえるんじゃない?」
という話をいただいたんです。
そこで、インターネット通信を使うことにして、
すれちがい通信をあまり体験いただいていない方にも、
ネット環境下でいろんな方とやりとりできるようにしました。 - 横田
- でも、ホントに「マイキャッスル」は、
やってよかったなあと思っています。
キャラクターに思い入れを深めてもらう、
ということは、『覚醒』のときから
重視しているテーマなんですけど、
今回、「マイキャッスル」ができたことによって、
その思い入れがさらに深まると思っています。
それに、今回のタイトルにある『if(もしも)』が
この企画にすごくマッチしているんです。
いろんな「もしも」が、たくさん詰まってるんですね。 - 岩田
- そもそもどうして
タイトルに『if』をつけたんですか? - 横田
- もともと今回の企画を考えているときに、
山上さんが歴史の話をしだしたことがあって、
「戦国時代にあの武将が、
歴史は変わっていたでしょう」
みたいなことを言っていましたよね。 - 山上
- そうですね。
2本のパッケージをつくることになったとき
「もしもA国についたら?」「もしもB国についたら?」と
ずっと「もしも」のことばかりを考えていたんです。
ですから、僕のなかではタイトルは
『if』しか考えられなかったんです。
そこで、「タイトルはどうしましょう?」
という相談を、みんなから受けたときに、
「僕はもう『if』しか思いつかないんだけど」と言うと、
みんなも「やっぱり『if』ですよね」ということで、
最終的に『ファイアーエムブレムif』にすることを決めました。 - 岩田
- ちなみに『白夜王国』と『暗夜王国』の
2つのタイトルは、誰が考えたんですか? - 前田
- 樹林さんです。
それに、3本目の正式タイトルについては
まだ発表できないんですけど、
漢字ではなくカタカナになっていまして、
これも樹林さんのアイデアなんです。
それも、最初にお会いしたときに、
「3本目はこんな世界にしたらいいんじゃない?」
というご提案をいただいたんです。 - 岩田
- ファミレスで会ったときに、ですか?
- 前田
- はい(笑)。
- 樋口
- 最初に2国間の戦いということで、
それぞれの国のイメージはだいたい決めていたんですが、
3本目のイメージはまったくなかったんです。
そこで、樹林さんに相談したところ、
「こんなイメージはどう?」と
次から次にアイデアが出てきたんです。
しかも、そのカタカナのタイトルに
ぴったりのイメージだったんですね。 - 樹林
- あのときはまだ
仕事を受けてなかったんですけどね(笑)。 - 岩田
- 受けていないのに、ですか?
- 樋口
- でも、アイデアは出していただく、みたいな(笑)。
- 前田
- そのようなアイデア出しの瞬発力は
すごいなと思いました。
とくにわたしは、アドリブが利かないタイプなので、
何かを振られると、「しばらくお待ちください」
みたいになるんです(笑)。 - 横田
- たしかに(笑)。
- 山上
- たしかにそうですね(笑)。先ほどの
「パッケージを2本にしたい」という話を振ったときも
「しばらくお待ちください」と言ってましたからね(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- それってきっと、
ふたりのスタンスが対照的なんだからでしょうね。
週刊誌の連載で鍛えられている樹林さんは、
その場で結論を出さないと
締め切りに間に合わないでしょうし、
前田さんは、2、3年に1度、アウトプットする仕事なので、
「しばらくお待ちください」でも
OKということなんでしょうね。 - 樋口
- ただ、前田の「しばらくお待ちください」は
「前向きに検討します」という意味でもあるんですよね。
ところが、「なるほど」と答えたときは
まったく対応してくれないことが多いんです。
僕はずっと前田といっしょに仕事をしてきたから
よくわかるんですけど。 - 山上
- ああ、そうだったんですね。
口癖としては知ってたけど、
「なるほど」はダメな意味だったんですね。 - 樹林
- たぶん、こういうことなんでしょうね。
漫画の吹き出しにすると、
「なるほど」のあとに「・・・・」がついてるんですよ。
つまり「なるほど・・・・」のときはダメなときで
「なるほど」のあとに「!」がついたら・・・。 - 横田
- 納得した意味の「なるほど!」なんですね。
- 樹林
- で、「しばらくお待ちください」のときは
「・・・・」が先にきて、
「・・・・しばらくお待ちください」なんでしょうね。
その「・・・・」のところで
「前向きに考えてますよ」ということを
意思表示してるんでしょうね、きっと。 - 横田
- なるほど!(笑)
今後、前田さんとおつきあいしていくうえで
とても参考になりました。
ありがとうございました! - 樹林
- 前田さん、おもしろいなー(笑)。
キャラ立ってるなぁ・・・。 - 一同
- (笑)