『ファイアーエムブレムif』
6. 初心者にも、エムブレマーにも
- 岩田
- それでは最後に、それぞれのお立場から、
『ファイアーエムブレムif』のお客様に対して、
アピールポイントをお伺いしたいんですけど、
今回、初めて加わっていただいた樹林さんからお願いします。 - 樹林
- はい。物語のおもしろさというのは
やっぱり“意外性”だと思ってるんです。 - 岩田
- 予定調和だと作業になりますからね。
- 樹林
- そうなんです。その“意外性”を
3本それぞれのラストに用意しましたので、
最後まで遊んでほしいですね。
それが僕の言いたいことのひとつで、
もうひとつは、自分は
「こっちの国を選んだけど、
あっちにつけばよかったかな」ということを、
つねに考えながらやってほしいですね。
そのような葛藤があるなかでプレイすると、
あの世界にどっぷり入れるような気がします。
- 岩田
- 敵の言葉にも、味方の言葉にも、
それぞれ深く共感できるということなんですね。 - 樹林
- ええ。裏切りとか
“意外性”がつねにある物語になっていますので、
最後までやりこんでほしいですし、
できれば、何回もやってもらえるとうれしいですね。
掘れば掘るほどいろんなものが出てきますし、
「これって、伏線だったんだ」
と気づくこともあると思います。 - 岩田
- ありがとうございます。
では、前田さん。 - 前田
- ゲーム面でのアピールポイントになるんですが、
今回も「結婚システム」(※32)を入れていまして、
プレイヤーの分身であるマイユニットは、
すべての仲間と結婚できるようになっています。
「結婚システム」=シリーズ4作目『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(1996年 スーパーファミコン用)に搭載され、前作『ファイアーエムブレム 覚醒』(2012年 ニンテンドー3DS用)から復活したシステム。ゲーム中にキャラクター同士が恋に落ち、その組み合わせによって子どもたちの能力が変化する。
- 岩田
- 前作と変わったところはあるんですか?
- 前田
- 結婚相手の兵種になれるようになりました。
たとえば、アーマーナイト(重騎士)の結婚相手が
忍者であれば、その忍者になれるんですね。
なので、結婚相手も、より悩みながら
選んでいただけたらなあと思っています。 - 岩田
- 結婚相手を選ぶときも、
「もしも誰と誰を結婚させたら」みたいな
“if”が入るんですね。 - 前田
- そうですね。
あと、先ほどお話しした「マイキャッスル」で
相手のお城を訪問して、アクセサリーをプレゼントすると、
だんだん仲良くなれるんです。
その仲の良さが最大限に達すると
2人の絆の結晶として、
「絆ユニット」というものが仲間になります。
なので、本編だけでなく
「マイキャッスル」のほうも楽しんでほしいですね。
- 岩田
- なにしろ、「マイキャッスル」だけでも
ゲーム1本分あるわけですからね。 - 前田
- はい(笑)。
- 横田
- 僕の言いたいことは
樹林さんの話につながるんですけど、
僕自身、開発中に何度もプレイしたのですが
物語に奥深さがあるので、
何回遊んでも飽きないんです。
なので、僕自身も発売するのがすごく楽しみで、
発売後もはじめからプレイしたいな
と思える商品になったと思います。 - 岩田
- 仕事でとことん遊び倒したのに、
まだ遊び足りないんですね。 - 横田
- はい。あと、先ほどの
「・・・・しばらくお待ちください」の話で
思い出したことなんですけど、
前田さんは、ずいぶん前に考えたネタを
今回の『if』に入れているんです。
たとえば「固有スキル」というのがありまして、
キャラクターの個性を出すために、
そのキャラの性格に応じたスキルを覚えるんですが、
そのアイデアは『覚醒』をつくっているときに、
僕がお願いしたことだったんです。
- 岩田
- そのとき、前田さんは
「・・・・しばらくお待ちください」と? - 横田
- はい(笑)。でも、今回の『if』には、
最初から入っていたんです。
あと、「竜脈」(※33)というのがあって、
地形に変化を与えると、たとえば川が干上がって、
歩兵でも川を渡れるようになるのですが、
それも『覚醒』の企画中に考えていたアイデアだったんです。
前田さんはそういうことを忘れずに・・・。
「竜脈」=竜族の血を受け継ぐキャラクターだけが操れる能力で、橋を架ける、山を平らにするなど、戦場の地形を大きく変動させることができる。
- 岩田
- かつて生まれたネタを忘れずに、
長い時間、じっくり考えて、
今回の『if』に反映させているんですね。 - 横田
- そうなんです。
- 岩田
- さすがは
“ミスター・しばらくお待ちください”ですね(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- はい。樋口さん。
- 樋口
- 4月20日に『ファイアーエムブレム』は
25周年(※34)を迎えることができました。
今回の『if』は、25周年を飾るにふさわしい
大作になったと思いますので
ぜひ遊んでほしいと思っています。
25周年=『ファイアーエムブレム』シリーズは、第1作『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(1990年 ファミコン用)の発売から今年(2015年)で25周年を迎えた。開発元であるインテリジェントシステムズでは、25周年を記念するイベントして、「愛と勇気の25周年記念 ファイアーエムブレム祭」の開催(開催日:2015年7月24日~7月25日)を予定している。
- 岩田
- 前作の『覚醒』のときに、
「これが最後だ」と覚悟したのに、
無事に25周年が迎えられました。 - 樋口
- はい。おかげさまで。
25年前は前田のTシャツのように
「リセット上等」が当たり前のシリーズでしたが、
初心者の方にも遊んでいただけるようにと、
ゲームの難易度を下げつつ前々作から
「カジュアルモード」(※35)を用意しまして・・・。
「カジュアルモード」=仲間キャラクターが倒されても喪失されず、次のマップ以降で使用可能となるモード。シリーズ13作目『ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~』(2010年 ニンテンドーDS用)から導入された。
- 岩田
- カジュアルモードというのは
仲間が一度倒されても、次の面で
復活するモードですね。 - 樋口
- はい。そのモードで
本編をなぞるだけでも、100パーセントの人が
エンディングを迎えられると思ったんです。
ところが、それでも最後まで
遊んでいただけない方がいらっしゃったんですね。
そこで、今回の『if』では
さらに難易度を下げるという選択肢はとらず、
「フェニックスモード」(※36)を用意しました。
このモードは、その名のとおり“不死鳥”のモードで、
キャラクターがやられても、
次のターンのときに生き返るのですが、
じつはこれも、前田の提案で実現したんですよね。
「フェニックスモード」=今作『ファイアーエムブレムif』で初めて導入され、倒された仲間キャラクターが次のターンに復活するモード。
- 前田
- はい。
- 樋口
- このフェニックスモードを選べば、
シミュレーションRPGが苦手な方でも
『ファイアーエムブレム』の世界を楽しめますので
ぜひ最後まで遊んでいただければと思っています。
- 岩田
- はい。では最後に山上さん。
- 山上
- わたしは、
「買う前に、どちらにするか、
みなさんにじっくり考えてほしい」と思っています。
もちろん、どちらのバージョンもおもしろさは保証しますが、
いろんな情報をチェックして、
「自分はどっちを遊ぼうか」ということを悩んで、
選択を楽しんでほしいと思います。
「ゲームを購入する前から遊びがはじまっている」ことを
ぜひ体験していただきたいんです。
ネットの情報を見ると、
「『暗夜王国』のほうが難しい」というようなことが
書かれていたりしますけど、大丈夫です。
僕は、『暗夜王国』からはじめたんですけど
最後までふつうに遊べましたから。 - 岩田
- もともと山上さんは、プレイヤーとして
シミュレーションが得意なわけではないですよね。 - 山上
- はい、そうなんです。
性格的に、1ユニットを動かすのに、
そんなに長考できないタイプなんです。
なので、安易に動かしてしまって一撃で倒される、
みたいなことが多いんですけど、
それでも最後まで遊ぶことができました。
なので、安心して、好きなほうを選んでほしいです。
- 岩田
- ちなみに、
「ストイックでないと
『エムブレム』ではない」という
エムブレマーの方もいらっしゃいますよね。 - 山上
- はい。
- 岩田
- そんなエムブレマーの方たちが
ストイックに遊べるような仕掛けも
ちゃんと用意されてるんですよね。 - 山上
- もちろんご用意しています。
「ルナティック」(※37)というと、
難しすぎるかな・・・。
「ルナティック」=ゲームの難易度のひとつ。ゲームには「ノーマル」「ハード」「ルナティック」の3段階の難易度があり、「ルナティック」は最難関を求めるプレイヤー向けの最高難易度になっている。
- 前田
- そうですね、ルナティックはかなり・・・(笑)。
- 岩田
- ルナティックは、開発した人でも、
「どうやって解くのか?」というくらい
難しいんでしょう? - 山上
- そうなんです。そういった
高難易度を選んでいただくこともできますし、
あと「クラシックモード」(※38)がありまして、
そのモードを選ぶと、倒されたユニットは、
二度と戻ってこないんですね。
なので、仲間を全員、生き残らせたいと思うと、
一手一手を慎重にやらなければいけませんし、
それでも、もし倒されてしまったら・・・。
「クラシックモード」=「失った仲間は二度と戻らない」という、『ファイアーエムブレム』従来のルールで遊ぶモード。
- 岩田
- 「リセット上等」なんですね。
- 前田
- はい(笑)。
- 山上
- ですから「骨太の『エムブレム』をやりたい」
というエムブレマーの方は、
クラシックモードを選んでいただくと、
すごくやりごたえのある、
『エムブレム』らしい遊びができますので、
ぜひ試してほしいと思います。 - 岩田
- はい。それにしても、樹林さんには、
結果的に、ものすごい量の多い、
無茶な仕事をお願いしてしまったわけですけど、
それでも、楽しんでやっていただけたと
いうこともわかりましたので、
今回、話をお訊きすることができてよかったです。
- 樹林
- やっぱり楽しい仕事はいいですね。
いろいろといい経験もできましたし。 - 山上
- ・・・ということは、
次回作も書いていただけるんでしょうか?(笑) - 樹林
- あっ、「・・・・しばらくお待ちください」
って、言わせたいんでしょう?(笑)
そのときのスケジュール次第ですので、
いまは何とも言えないんです。
でも、今回の仕事はホントに楽しかったしなあ。 - 一同
- (笑)