『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』
1. 「20年前の企画やな」
- 岩田
- 『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』が
ついに完成しました。
直接聞いたわけではないんですが、
開発はけっこう大変だったそうですね。 - 一同
- (苦笑)
- 岩田
- 開発の途中で、スタッフのみなさんが
ほかのプロジェクトにさらわれて
プロジェクト進行がしばらく止まったりと、
必ずしもスッと完成したのではなかったようですが、
ただ、「とても良いものができた」という話を、
社内のいろんな人から聞いています。
宮本(茂)さんも「今度の『ゼルダ』は、いいですよ」と
ぼそっと言っていましたし。 - 青沼
- ええーっ、どうして僕らに
直接言ってくれないんでしょうね(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- では最初に、みなさんが
担当したことをお話しください。青沼さんから。 - 青沼
- いつものようにプロデューサーを担当しました。
もともと前作の『神々のトライフォース』(※1)は、
僕が『ゼルダ』シリーズにかかわることになる
キッカケになったタイトルでもありますし、
今回は22年ぶりに続編をつくるということで、
どんなものができてくるのかと、
ワクワクしながら待つような立場で
プロデュースをしていました。
『神々のトライフォース』=『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』。1991年11月に、スーパーファミコン用ソフトとして発売された、アクションアドベンチャーゲーム。
- 四方
- 今回ははじめて
ディレクターを担当しました、四方(しかた)です。
僕は15年前の『時のオカリナ』(※2)の時から
『ゼルダ』シリーズに参加してきたんですけど・・・。
『時のオカリナ』=『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。NINTENDO64用ソフトとして、1998年11月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- 岩田
- 四方さんは15年間、
ずっと『ゼルダ』を担当してきたんですか? - 四方
- 15年間すべてというわけではありませんが、
たいていの『ゼルダ』シリーズには参加してきました。 - 毛利
- サブディレクター兼プログラムリーダーを
担当しました、毛利です。
『ゼルダ』シリーズでは、今回が4作目になりまして、
最初は『4つの剣+』(※3)にかかわり、
『夢幻の砂時計』(※4)と『大地の汽笛』(※5)の時は
メインプログラマーを担当しました。
『4つの剣+』=『ゼルダの伝説 4つの剣+』。ゲームキューブ用ソフトとして、2004年3月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『夢幻の砂時計』=『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』。ニンテンドーDS用ソフトとして、2007年6月に発売されたペンアクションアドベンチャー。
『大地の汽笛』=『ゼルダの伝説 大地の汽笛』。ニンテンドーDS用ソフトとして、2009年12月に発売されたペンアクションアドベンチャー。
- 岩田
- 毛利さんは、この数年に出た
携帯機用『ゼルダ』の
メインのプログラマーだったんですね。 - 毛利
- はい。いろんなスタッフのみなさんに
協力してもらいながらかかわってきました。 - 冨永
- サブディレクター兼プランナーリーダーとして、
プランナーのとりまとめなどをしていました、冨永です。
『ゼルダ』シリーズについては、入社1年目の時に
『風のタクト』(※6)にかかわりまして、
そのあとの『スカイウォードソード』(※8)の2本については
プランナーとしてかかわりました。
あと『4つの剣+』については、
デバッグのお手伝いをしていまして、
そのように、入社してからずっと
据置機の『ゼルダ』にかかわってきたのですが、
携帯機では今回がはじめての参加となります。
『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『トワイライトプリンセス』=『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』。2006年12月に、Wiiおよびゲームキューブ用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
『スカイウォードソード』=『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』。Wii用ソフトとして、2011年11月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- 高橋
- デザインリーダーとして、
デザインのとりまとめをしていました、高橋です。
- 岩田
- 高橋さんは、
『とびだせ どうぶつの森』(※9)の時も
デザインリーダーをしていましたが、
その開発が終わって、すぐに『ゼルダ』を?
『とびだせ どうぶつの森』=ニンテンドー3DSソフトとして、2012年11月に発売されたコミュニケーションゲーム。
- 高橋
- はい。終わってすぐでした。
『ゼルダ』シリーズでは『風のタクト』と
『夢幻の砂時計』と『大地の汽笛』で、
デザイナーとしてかかわっていました。 - 岩田
- ちなみに3DSで
『ゼルダ』の新作をつくろうという話は、
いつ頃から持ち上がったんですか? - 青沼
- はい。えーっとその話は
ディレクターの四方さんからお願いします。 - 四方
- はい。
そもそものはじまりは
『大地の汽笛』が終わった直後のことで・・・。 - 岩田
- ああ、『大地の汽笛』が終わって
すぐにはじまったんですね。
でもなんだか、すごく時間が経った気がします。 - 四方
- 『大地の汽笛』が出たのが
2009年の年末ですから・・・。 - 青沼
- もう4年も経っているんです。
- 四方
- 『大地の汽笛』が終わったあとは、
スタッフがごっそりと抜けて
Wii版の『ゼルダ』の開発に行きましたよね。 - 青沼
- すぐに『スカイウォードソード』を
つくらないといけなかったですからね。 - 四方
- で、残ったのは僕と毛利さんと
もうひとりのプログラマーの、
合わせて3人だけだったんです。
当時はまだ3DSは出ていなかったんですけど、
DSの次の携帯機の『ゼルダ』をつくろう、
ということで、最初は1年くらい、細々と
「何をしようか?」と考え続けていました。 - 岩田
- たった3人で1年も考え続けると、
しんどくなりませんでしたか? - 四方
- そうですね。
やっぱり「どうしようか?」と
毎日を悶々(もんもん)と過ごしていました。 - 青沼
- フォローをしますと、その1年間は、
何にも結果が出なかったわけではなくって、
いろんな実験をやりながら、
今作のいちばんの特徴にもなっている、
リンクが“壁画になる”というシステムに
アプローチできた期間でもあったんですよね。 - 四方
- そうですね。
- 青沼
- ところが、そこまでたどり着くのが
なかなか・・・。 - 岩田
- なかなか、難しかったんですね。
- 四方
- はい。最初は細々と3人だけで、
いろんな方向を模索していまして、
半年くらい経った頃に、
とりあえず企画を通すために、
宮本さんにプレゼンをして
「いいね」「アカンね」という判断を
してもらうことにしました。 - 岩田
- その時、『神々のトライフォース』の流れをくむ
続編をつくろうという考えはあったんですか? - 四方
- いえ、『神々のトライフォース』のことは
まったく念頭にありませんでした。
その時はまだ“壁に入る”というアイデアも
生まれていなかったんですけど、
通信をテーマにした『ゼルダ』を考えていまして、
それをプレゼンすると、宮本さんが
「これは20年前の企画やな」と(笑)。 - 岩田
- 20年前の企画?(笑)
そんなことを言われると、
場が凍りませんでしたか?
- 四方
- いえ、最初から凍っていました(笑)。
- 一同
- (笑)
- 毛利
- というのも、プレゼンをはじめたとたん、
宮本さんの表情がどんどん曇っていくのが
はっきりわかったんです。
それで「これはマズい」と思ったんですけど、
最後に、「20年前の企画やな」と
決定的にトドメを刺された感じでした。 - 岩田
- 宮本さんから
最後のトドメを刺されて、
そのあとどうしたんですか? - 四方
- さんざんに言われてしまったので、
すごくうちひしがれまして・・・。 - 岩田
- それは、そうでしょうね(笑)。
- 四方
- そこで、いちから考え直すことにしまして、
ある日、3人でミーティングをしているときに、
「リンクが“壁に入る”というのはどうだろうか」と、
僕がポロッと言ったんです。
すると毛利さんともうひとりのプログラマーが
「それ、いい!」とパッと飛びついてくれたんですけど、
言い出しっぺである僕は、
そのアイデアにピンときていなくて・・・。 - 岩田
- 自分ではおもしろさの確信が持てないまま、
思いつきでアイデアを出したんですか? - 四方
- そうなんです。
ですからほかのふたりに「それのどこがいいの?」
と聞いたりしまして・・・。 - 岩田
- 言い出しっぺなのに(笑)。
- 毛利
- 普通は逆ですよね(笑)。
- 岩田
- いいアイデアを出しても、
周りの人たちにわかってもらえない、
ということはよくあるんですけど、
その時は逆だったんですね(笑)。 - 四方
- はい。まったく逆でした(笑)。