『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』
3. 真上からの視点に
- 岩田
- ちなみに、とくに海外から
「ニンテンドー3DS用の新作『ゼルダ』が
2013年の年末には絶対にほしい」
という声が、たくさんありましたよね。 - 青沼
- そうですね。3DSでは
『時のオカリナ 3D』(※14)を出してますけど、
あれはNINTENDO64版のリメイクでしたので、
「新作は出ないのか?」という声を聞いて、
僕としてもその期待にこたえたい、
という気持ちが強かったんです。
『時のオカリナ 3D』=『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』=2011年6月に、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャー。
- 岩田
- でも、四方さんたちは
さらわれたまま、戻ってこないわけですよね。 - 青沼
- そうなんです。
で、僕のほうは『スカイウォードソード』の開発が
2年前の2011年に終わって、
次の企画を考えることになったんですけど、
“壁に入る”というネタが生まれたことで
新しい『ゼルダ』をつくれる可能性を感じていましたので、
どうにかしようと思ったわけです。
そこで、少しでも開発を進めたいと思いまして、
彼らがいない状況のなかで、
制作を再開することにしたんです。 - 岩田
- えっ、コアメンバー不在のなか、
プロジェクトを復活させたんですか? - 青沼
- でも、そうしないと、
彼らが戻ってくる頃につくりはじめたのでは、
2013年の年末には出せないですから。 - 岩田
- ああ、たしかにそうですね。
- 青沼
- そこで、どんな手をとったかというと、
毛利さんの意志を継いでくれるプログラマーを
別のところから連れてきて、
四方さんの意志を継ぐ、
冨永さんに参加してもらって、
ふたりのディレクターが戻ってくるまでの間、
彼らがつくっていくということを続けました。 - 岩田
- 四方さんの意志を継ぐ、
冨永さんが参加したのは
いつ頃のことだったんですか? - 冨永
- 『スカイウォードソード』の
開発が終わってすぐでしたから、
2011年の11月頃です。
- 岩田
- ということは、
四方さんのチームがいったん解散したのは
2010年の10月頃という話でしたから
ほぼ1年間のブランクがあったわけですね。 - 青沼
- そうなんです。
それで、四方さんたちが戻ってくるまでの約1年間、
ずっと支えてくれたのが冨永さんで、
“壁に入る”というシステムを
より良いものにしていく、という作業を
コツコツと続けていたんです。 - 岩田
- 冨永さんはまず
どんなことから手をつけたんですか? - 冨永
- 最初の頃は、
あまり『ゼルダ』の世界にとらわれずに、
まず“壁に入る”ネタを入れた
小さなダンジョンをいくつか制作し、
2012年の5月頃、宮本さんに
「このような“壁に入る”ダンジョンを50個つくります!」
と、プレゼンしてみました。 - 岩田
- 宮本さんはどんな反応でしたか?
- 冨永
- さんざんに言われました(笑)。
- 四方
- またも(笑)。
- 一同
- (笑)
- 冨永
- でも、さんざんに言われただけでなく、
その時に宮本さんはひとつのヒントをくれたんです。
「『神々のトライフォース』をベースにして
考えてみたらどう?」と。 - 岩田
- その時にはじめて
『神々のトライフォース』が出てきたんですね。 - 冨永
- そうです。そのあと青沼さんからも
「『神々のトライフォース』をベースにして、
視点も真上から見下ろすようにして、
そこに“壁に入る”ネタを組み合わせてみてはどうか?」
という話があったんです。 - 岩田
- じゃあ、『神々のトライフォース』を
ベースにすることになったのは
宮本さんや青沼さんからの話が
きっかけだったんですか? - 冨永
- そうです。
- 青沼
- あのう、じつは宮本さんから僕に、
3DSが出たときから
投げられていたお題があったんです。
「『神々のトライフォース』のような2Dの『ゼルダ』を、
立体視で遊べるようにつくれないか」と。 - 岩田
- はい。
- 青沼
- でも、2Dだったものを
そのまま普通に3D化したのでは、
何もおもしろくありませんので・・・。 - 岩田
- 「3Dにしてみました」
としかならないですからね。 - 青沼
- そうなんです。
そこがずっと課題になっていまして、
「どうしようかな」と思っていたんです。
それに、四方さんたちが考えた“壁に入る”という遊びも、
最初に見たときはもちろん驚いたんですけど、
『大地の汽笛』のように、
斜め上からの視点でずっと遊んでいると、
そのうち驚きがなくなってしまったんですね。 - 岩田
- それはどうしてなんですか?
- 青沼
- やっぱり壁に入ったときの
変化が少なかったんです。
そこで冨永さんといろいろ話し合っていくなかで、
「カメラを真上に持ってきて、
固定しちゃうのはどうだろう?」という話になって、
それを試しにつくってみたんです。
すると、もともとは真上からの視点だったのが、
リンクが壁に入ると、横からの視点に替わって、
それがすごく不思議な感じになったんですね。
その時に、宮本さんから投げられていた、
「2Dの『ゼルダ』を立体視で」
というお題と・・・。 - 岩田
- つながったんですね。
- 青沼
- はい。ピタッときて、
「これだ!」と思いました。
それともうひとつ・・・今作をつくるにあたっては
「フィールドをゼロから考えるのではなく、
『神々のトライフォース』の地形を使うのはどうか」
と、みんなに提案してみたんです。
- 岩田
- でも「せっかく“壁に入る”という
新しいネタを考えたのに、
リメイクみたいに見えちゃいますよ」
と言われませんでしたか? - 青沼
- はい。
でも、言葉で説明しただけでは
誰もが懐疑的になるじゃないですか。 - 岩田
- はい。
- 青沼
- そこで、自分でツールを使って
『神々のトライフォース』の地形を
3D化してみたんです。 - 岩田
- 青沼さんが自分で、ですか?(笑)
- 青沼
- はい。たしか3日間くらいかけて。
- 冨永
- いや、もうちょっとかかったような・・・。
- 青沼
- そうだっけ?(笑)
「プロデューサーがそんなことまでしていいのかな?」
ということも考えたんですけど、
やっぱり実物をつくったほうが
説得力があると思いまして、
立体の地形をつくってみました。
そこに、リンクを乗せて、動かしてもらったら、
みんなが「おお!」と声をあげて
納得してくれたんです。
で、それを宮本さんに見せて、
ようやくオッケーをもらったんです。
それがいつくらいでしたっけ? - 冨永
- 2012年の5月に
さんざんに言われてから2か月あとでした。
だから、今回のプロジェクトは
1回目のプレゼンがダメで、2回目オッケー、
3回目がダメで、4回目がオッケー、というように
悪い、良いを繰り返したんです。 - 岩田
- 落とされたり、持ち上げられたりした
プロジェクトだったんですね(笑)。 - 冨永
- はい(笑)。