『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』
6. 「ゼルダのアタリマエを見直す」
- 岩田
- そもそも今作は
『神々のトライフォース』の世界を借りていますけど、
まったくの新作じゃないですか。 - 青沼
- はい、そうです。
- 岩田
- サブタイトルは
『神々のトライフォース2』ですけど、
じつはまったく別のもので・・・。
だから海外では『2』という
サブタイトルではないですよね。 - 青沼
- はい。海外では
前作は『A Link to the Past』という
サブタイトルでしたけど・・・。 - 岩田
- それが『A Link Between Worlds』という
サブタイトルになったんですね。 - 青沼
- はい。そもそも前作の
『A Link to the Past』は
“過去とリンクする”という意味なんです。
ところが今回は、前作の時代よりも
遙か未来の物語になっていますし、
「ハイラル」と「ロウラル」の2つの世界を
行き来することで物語は進みますので。 - 岩田
- だから『Between Worlds』・・・
“2つの世界の間”ということにしたんですね。 - 青沼
- そうなんです。
でも、日本では『神々のトライフォース』に
『2』を付けても違和感がないということで、
そういうことにしたんですけど、
「『2』なんか付けたら、リメイクと思われますよ」
と言うスタッフもいたんです。 - 四方
- だから「『Newマリオ』のように
『Newゼルダ』にしたらどうか?」
みたいな話もありましたよね(笑)。 - 一同
- (笑)
- 青沼
- でも、同じハイラルというフィールドを使っていて、
しかも真上からの視点で、という共通点があるので
やっぱり『神々のトライフォース2』にすることにしました。 - 岩田
- そのような共通点がありながら、
“壁画になる”という新しいシステムが入ったほかに
どんなことが新しくなったんですか? - 四方
- 今作には「ゼルダのアタリマエを見直す」(※18)、
という開発コンセプトがありますが、
じつは最初から
それをテーマにしていたわけではないんです。
「ゼルダのアタリマエを見直す」=2013年1月23日に放映されたニンテンドーダイレクト「Wii U Direct Nintendo Games 2013.1.23」の中で青沼が発表した、今後の『ゼルダの伝説』シリーズの開発コンセプトのこと。
- 岩田
- はい。
- 四方
- 僕はこれまで15年間、
『ゼルダ』をつくってきて、
新作が発売されるたびに、
友達から感想を聞いたんですけど、
遊んでいる最中にどこかで詰まってしまって、
そこから先を遊ばなくなってしまう人がけっこういて、
僕自身、それをすごく問題だと感じていたんです。 - 岩田
- どこかのダンジョンでハマると、
そこから先へ進めなくなって、
しばらくがんばってもダメなときは、
そこであきらめてしまうんですね。 - 四方
- そうです。そういう経験をしている人が
少なくないことがわかって、
新しい『ゼルダ』をつくるたびに、
もっと違うアプローチがないかなと思って、
ずっと探していたところがあるんです。
で、今作をつくることになって、
前作の『神々のトライフォース』は、
複数のダンジョンを並列でクリアできるということが
おぼろげなイメージとしてあったんですけど、
実際に遊び直してみると、
そんなに並列ではなかったんですね。 - 青沼
- そうですね。
- 四方
- だったら今作では、
並列に遊べるようにすればいいと思いまして、
後半の7つのダンジョンに関しては、
どこでも好きなように行けるようにしました。 - 岩田
- 一本道ではなく
“順不同ダンジョン”なんですね。 - 四方
- はい。
でも、そこにはいろいろ問題点がありまして。 - 岩田
- いままでの構造を壊しますからね。
- 四方
- そうなんです。
もともと『ゼルダ』というのは、
まずダンジョンに入って、
そこで新しいアイテムを手に入れて、
そのアイテムを使って
次の新しいダンジョンを見つけるという・・・。 - 青沼
- “ゼルダの方程式”と呼ばれるものですね。
- 四方
- だから、どうしても
一本道にならざるを得なかったんですけど、
今回はどうしようかとずっと悩んでいて、
それが「ゼルダのアタリマエを見直す」ことに
つながるんですけど・・・
ここからは、青沼さん、お願いします。 - 青沼
- はい(笑)。
まず最初に、いろんなアイテムを
ショップで買えるようにしよう、
という話になりました。 - 岩田
- すると、どのダンジョンでも
攻略できるようになるわけですね。 - 青沼
- はい。ところが、その価格をどうするか、
となったときに、安い値段にすると、
全アイテムが簡単に手に入るようになって、
そのあとはルピーは必要なくなりますよね。 - 岩田
- すると、わざわざ草を刈ってまで
ルピーを集めようとは思わなくなりますね。 - 青沼
- そうなんです。でも逆に、
値段を高くすると、ゲームがちっとも先に
進めなくなってしまうという矛盾が
そこに生じるわけです。
- 岩田
- はい。
- 青沼
- そこで「どうしよう?」と・・・。
で、そのヒントが、ここ数年、
僕がすごくハマっている趣味がありまして、
具体的に言うのは控えますけど・・・。 - 岩田
- はい(笑)。
- 青沼
- その遊びをするには、
道具の種類がめちゃくちゃ多くて、
それらを最初からそろえるのが
けっこう大変なんです。 - 岩田
- すると、お金もかかりますよね。
- 青沼
- そうなんです。
ところが初心者で道具を持っていなくても
すべてレンタルできるところがあるんです。
すると、「ちょっとやってみようかな」
という気持ちになるじゃないですか。 - 岩田
- はい。
- 青沼
- で、一度やってみたら、
ものすごくおもしろかったんです、これが。
すると・・・(ちからを込めて)
ほしくなるんですよ! 自分用の道具が!! - 岩田
- はい(笑)。
で、買ったんですか? 自分用の道具を。 - 青沼
- はい。じゃんじゃん買いました。
で、これが自分用だと思っただけでも
ものすごくうれしいんです(笑)。 - 岩田
- 要はハマッたわけですね(笑)。
- 青沼
- 完全にハマりました(笑)。
- 一同
- (笑)
- 青沼
- で、今度の『ゼルダ』にも
「この手が使える」と思ったんです。
最初は安くレンタルしてくれるんだけど、
やっぱり自分用がほしいよね、
という方向に持っていくようにすれば、
みんなもせっせとルピーを集めてくれるでしょうし。 - 四方
- これまでは、ルピーをたくさん集めても
あまり使い道がない、みたいに
言われたりしていましたしね。 - 青沼
- さらに「自分用のアイテムは
バージョンアップできるようにしよう」とか
スタッフからいろんなアイデアが出てきて、
「これでいこう」ということになりました。 - 岩田
- それで、自分で好きなように
ダンジョンを選んで、そこに入り
もしどこかで詰まっても、アイテムをレンタルして
別のダンジョンを攻略できるようになったんですね。 - 青沼
- そうです。
そうやって、これまでの『ゼルダ』史上には
なかった遊びになりました。 - 岩田
- それにしてもレンタルシステムは、
どこからその発想が生まれたのかなと思っていたんですが、
じつは青沼さんの個人的な趣味が
元になっていたんですね(笑)。 - 青沼
- じつはそうなんです(笑)。