『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』
7. 開発者からの挑戦状
- 岩田
- ダンジョンによって
そこに適したアイテムをレンタルすることで
好きな順番に攻略できるということですけど、
借りたアイテムはいつか返さないといけませんよね。 - 四方
- そうですね。
そこで、たとえばタイマーを回して、
翌朝にニワトリの鳴き声が聞こえたら
返さないといけないとか・・・。 - 青沼
- それでも返さない場合は、
延滞金を取られるとか、
いろんなことを考えてみたんですけど、
どれもしっくりこなかったんです。 - 岩田
- で、どうしたんですか?
- 青沼
- ゲームオーバーになったら、
勝手に回収されてしまうシステムにしました。
ちょっと『ムジュラの仮面』(※19)のようですけど(笑)。
『ムジュラの仮面』=『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』。NINTENDO64用ソフトとして、2000年4月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。3日間でクリアを目指すシステムで、セーブをすると1日目に戻され、一部のアイテムなどを除き、手持ちのルピーなどは0になる。
- 岩田
- なるほど。
- 青沼
- しかも、一度レンタルをすると
それを返したくないものですから、
ゲームオーバーにならないように、
がんばるじゃないですか。 - 岩田
- ゲームオーバーになって、
そのようにはっきりしたペナルティーがあると、
プレイにも緊張感が出ますよね。 - 青沼
- そうなんです。
それに、これまでのシリーズだと、
ゲームオーバーになったら、
入口まで戻されたりすることもありましたけど、
せっかくダンジョンの奥深くまで入ったのに、
そこで入口に戻されちゃうと・・・。 - 岩田
- やる気が続きませんよね。
- 青沼
- でも今回は、遊ぶ人の
リトライ意欲を落とすようなことは
しないでおこうというのも
ひとつのテーマだったんです。 - 四方
- だから、ゲームオーバーになっても、
すぐにアイテムを借り直せるようにしましたし、
ダンジョンにもワープポイントがありますし、
フィールドでもある程度好きな場所に
ワープできる仕組みを入れました。 - 青沼
- 世界を歩き回るのが
すごく楽になったと思います。 - 岩田
- そうやって、
これまでの一本道の『ゼルダ』から
「ゼルダのアタリマエを見直す」ことで、
自由度の上がった今回の『ゼルダ』ですが、
最後に、お客さんに「ここをアピールしたい」ということを、
それぞれの立場からお願いします。高橋さんから。 - 高橋
- はい。今回は「ハイラル」と「ロウラル」の
2つの世界を行き来しながら遊びますけど、
デザインでとくに意識したのは
その世界の対比だったんです。
- 岩田
- 2つの世界の対比も
楽しんでください、ということですね。 - 高橋
- はい。
「ハイラル」にいたキャラクターが、
「ロウラル」では別の役割でいたりとか、
建物の配置はいっしょだけど、
形状や材質はぜんぜん違ったりとか、
そのように対比も楽しめるようにつくりましたので、
2つの世界のフィールドをくまなく冒険しながら、
そういう違いも発見してほしいと思っています。 - 冨永
- 今作は前作のフィールドを
ベースにつくりましたけど、
ダンジョンもすべてを新しくしましたし、
前作にはなかった新しいネタも
たくさん詰め込んでいますので、
ぜひ楽しんでいただきたいと思っています。
- 岩田
- 今回はリメイクではなく、
続編という新作ですからね。 - 冨永
- はい。それから、
ミーティングのときに青沼さんが
「今作は新しさと懐かしさが
両立している感じがあるよね」
と話をされたことがあるんですけど、
その言葉のとおり、新しく遊んでいただく方にも、
前作のファンだった方にも
きっと楽しんでいただけるゲームになりましたので
ぜひ触っていただきたいです。 - 毛利
- 僕は、秒間60フレームの見やすさ、
遊びやすさ、快適さを
ぜひ味わっていただきたいと思っています。
- 岩田
- なにしろ毛利さんは
60フレームにすごくこだわって、
走り続けた人ですからね(笑)。 - 毛利
- はい(笑)。
それから前作にはなかった、すれちがい通信(※20)が
今回はできるようになりました。
すれちがい通信=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。
- 岩田
- すれちがい通信では
どのようなことができるんですか? - 毛利
- すれちがい通信をすると、
すれちがった相手とバトルができます。
で、その勝負に勝つと、
ルピーががっぽりもらえるのですが、
それで高価なアイテムが買いやすくなりますし、
買ったアイテムはパワーアップできるようになりますので、
どんどんすれちがってほしいと思っています。 - 四方
- 僕は、これまで『ゼルダ』を触ったことのない
はじめての人にも、遊んでいただきたいと思っています。
先ほど言いましたように、
ダンジョンが並列で遊べたり、
仮にどこかで詰まっても、
別のアプローチの方法が必ず用意されていますので、
あきらめなければ、みなさんが最後まで
クリアできるような構造になっています。
しかも、3DSを持ち歩くと貯まる
ゲームコイン(※21)を使って
ヒントを聞ける仕組みも入れていますので、
はじめての人もぜひ楽しんでください。
ゲームコイン=ニンテンドー3DSのゲームの中だけで使用できる、架空のコイン。100歩で1枚貯まり、1日最高で10枚、最高300枚まで貯めることができる。
- 岩田
- もちろん、これまでの『ゼルダ』が
大好きな人にもオススメなんですよね。 - 四方
- もちろんです。
これまでの『ゼルダ』にはなかった
アイテムをパワーアップさせるやりこみ要素や、
一度クリアしても、その先に敵の攻撃力がアップしている
きついモードなども用意していますので
これまで『ゼルダ』をプレイされてきた方にも、
すごく手ごたえを感じていただけると思っています。 - 青沼
- 今回は「ゼルダのアタリマエを見直す」
ということでつくりましたけど、
この『神々のトライフォース2』は、
本当にいろんなことにチャレンジしました。
それを担ったのは、とても若い人たちで、
開発中は「その手がありましたか!」という
驚きの連続だったんです。
- 岩田
- 青沼さんも思ったんですね、
「その手がありましたか!」と(笑)。 - 青沼
- はい(笑)。
先ほどの「ヘラの塔」の話で、ハンマーを叩いて
ジャンプするという仕掛けが入って、
ぽーんと飛んだときに、
上の階に自然に切り替わるという表現が生まれたときに、
「その手がありましたか!」と
岩田さんと同じように思いましたし、
そのあとも、みんなから出てくるアイデアに
「その手がありましたか!」
と思うことがいっぱいあったんです。
ですから今回は、新しい『ゼルダ』なんですけど、
「やっぱり『ゼルダ』だ」ということも、
ちゃんと表現できたように思っています。 - 岩田
- 「誰が見ても『ゼルダ』だ。でも、新しい」
ということなんですね。 - 青沼
- はい。
- 岩田
- わたしは今日、話を訊いていて、
「3DSというプラットフォームがなければ、
きっと生まれなかったであろう『ゼルダ』ができたんだ」
ということを強く感じました。
しかも、つくり手の人たちは、
まるで『ゼルダ』の謎解きをするように、
いろんな課題に挑戦して、
その結果、パズルがピタッとはまって
正解を見つけられたときは
すごく気持ちが良かっただろうなって(笑)。
頭の中で、あの謎解きの音楽が流れるように。 - 青沼
- そうなんです(笑)。
- 岩田
- それがある種、
つくり手の醍醐味でもありますし、
いいものができるときに感じられる手ごたえの話を、
今日はたくさん訊くことができました。 - 四方
- 僕、言い忘れたことがあるんですけど・・・。
- 岩田
- はい。
- 四方
- 今回はミニゲームがけっこう入っているんです。
- 青沼
- たとえば「野球ゲーム」とかね(笑)。
- 岩田
- 『ゼルダ』で「野球ゲーム」ですか?(笑)
- 青沼
- そうなんです(笑)。
バッティングセンターみたいな感じで
リンクがバットを持って打つんです。
本編とはまったく関係ないんですけど(笑)。 - 岩田
- (笑)
- 四方
- で、その中に
「コッコのミニゲーム」というのがありまして、
最初は簡単なんですけど、
次第にレベルが上がっていって、
僕は最高レベルをクリアできなかったんです。
たぶんスタッフの誰もが、
クリアできなかったんじゃないかと思うくらいで、
ひょっとしたら、発売されたあとでも、
世界で数人しか・・・。 - 岩田
- そこまでハードルを上げますか!?
- 毛利
- マリオクラブ(※22)に聞いたんですけど、
誰も最高レベルをクリアできなかったそうです。
マリオクラブ=マリオクラブ株式会社。任天堂の開発中ソフトのデバッグやテストプレイを行う。
- 四方
- なので、もし、最高レベルをクリアした人がいたら、
積極的に自慢してください。 - 岩田
- 最後に、開発者から挑戦状が出ました。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- みなさん本当にお疲れ様でした。
- 一同
- ありがとうございました。