『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第10回:『モンスターハンター3(トライ)G』
1. 「G」に込められたもの
- 岩田
- 今日はよろしくお願いします。
- 辻本・藤岡
- こちらこそ、よろしくお願いします。
- 岩田
- 以前、社長が訊く『モンスターハンター3(トライ)』で
お話をお訊きして以来になりますね。 - 辻本
- そうですね。2年ちょっとぶりです。
- 岩田
- では、早速始めたいと思います。
まず最初に、『モンスターハンター3(トライ)G』の
「G」とか「G級」という言葉なんですが、
『モンスターハンター』特有のネーミングですよね。
今回はそこからお話を訊かせてもらおうかなと。
この言葉になじみがない方もいらっしゃると思いますので。 - 辻本
- そうですね。この「G」というシリーズは、
もともとは初代の『モンスターハンター』(※1)を
遊びこんでくれたお客さんに対して、
つくり手からの感謝の気持ちと挑戦の意味を込めて、
つくったものだったんです。
「G」というネーミングは藤岡の発案なんですが、
スタッフの心意気を表しつつ、声に出してみたときに
語感がドンとくる言葉を探していたんです。
『モンスターハンター』=2004年3月に発売されたハンティングアクションゲーム。シリーズ第1作目。
- 岩田
- 勢いもありますよね。
- 辻本
- はい。それと「G」って
「GREAT」とか「GUTS」とか、
元気が出る語句の頭によく付く文字なので、
それも決め手のひとつになってます。 - 岩田
- ただ一般的に、グレードアップ版というのは
すべてがポジティブに語られるとは限らないですよね。
それに対して『モンスターハンター』の「G」は、
非常にポジティブに語られている印象があります。
そこにはスタッフの特別な想いや熱量に、
やっぱりポイントがあるんでしょうね。 - 藤岡
- ええ、僕たちはそう思っています。
「G」のつくりかたというのは、
数字だけのナンバリング作品、
我々は「無印」って呼んでいるんですが、
その「無印」で吐ききった息を、
もうひと息、グッと絞り出すような感じなんです。
だからそこに、より濃密なものが
出てきているんだと思います。
- 岩田
- そういう意味では、いわゆる「無印」は、
新しい土台や骨格づくりといったところに、
いったん全エネルギーを集中して
吐き出しきってるわけですよね。 - 藤岡
- はい。その時点では紛れもなく
すべて出し切っているんですが、
商品を出した後に
お客さんが遊んでいる様子を見たり、
自分たちでやりこんでいくと、
もっといろんなことがしたくなるんです(笑)。 - 岩田
- はい。
- 藤岡
- ただ、それを次の新作でやれるかというと、
更地に土台をつくるところから始めるわけで、
そこに発展型のアイデアを
活かしにくい側面があるんです。 - 岩田
- 当然、時間的な制約もありますからね。
- 藤岡
- ですから、既存の土台のうえに
さらにそれと同じくらいのエネルギーを
注ぐというつくりかたが、「G」ならではの
特殊な個性を生み出しているんだと思います。 - 岩田
- その一方で、今回の「G」は
ニンテンドー3DSという新ハードでつくられる
初めての「G」になりますよね。
いままでは、勝手知ったるハードのうえで、
「無印」の骨格をベースにして
もうひと息エネルギーを絞り出していたところに、
今回は新しいハードという要素が加わって、
別の苦労やチャレンジがあったんじゃないですか?
- 辻本
- そうですね。
この開発がスタートした段階で掲げたのは、
まず、ニンテンドー3DSに最適化した
『3(トライ)』(※2)をつくることでした。
ただ、もちろん『3(トライ)』を
移植するだけではおもしろくないので、
プラス最大限で自分たちが入れたい要素を
開発過程のハードルとして、設定したんです。
いつまでにこれができたら、こう進めよう、
それができたら、これも何とかなるんじゃないか?
っていう感じで、ずーっと開発を詰めていきました。
『モンスターハンター3(トライ)』=2009年8月に、Wii用ソフトとして発売されたハンティングアクションゲーム。
- 藤岡
- 立ち上がったばかりの
初めてさわる未知のハードでしたし、
ハードの研究をしながら
同時に開発も走らせる感じでした。 - 岩田
- 新ハードのポテンシャルを引き出すには、
最初の段階ではどうしても
研究と試行錯誤がありますからね。 - 藤岡
- そうです。ただそれが今回、
思いのほか開発がうまく進んで、
スタッフの間でも
「これはこのまま全部やり切れるんじゃないか?」って
ムードになってきたんです。 - 岩田
- 「もっと行ける、まだまだ行けるぞ・・・」
っていう感じでしょうか。 - 藤岡
- ええ、本当に、そんな感じでした(笑)。
それで一度、ほぼ組み込み終わった段階で、
社内で見せたんですね。そしたら、
「これはもう・・・“G”じゃないか!?」
って言われて。 - 岩田
- はい(笑)。
- 藤岡
- それで、正式に
『3(トライ)G』のタイトル名で
いくことになりました。 - 岩田
- 今回のカプコンの開発のみなさんは、
開発の過程でチームの勢いが加速していって、
それを維持したまま、
一気に終盤に流れ込んだ感じがします。 - 辻本
- 今回、ガノトトス(※3)っていう、
絶対入れたかったモンスターがいたんですが、
今年の頭の段階では
まだどうなるかわからなかったんです。
それが、後半一気にチームがのってきて、
最終的に入れ込めました。
{:.border.border-radius loading="lazy"} ガノトトス=第1作目『モンスターハンター』から登場する水竜のモンスター。 {:.note-sm .faded title="※3"} 藤岡 : そういう意味では、
今回も任天堂さんの技術スタッフの方々に、
とても密にサポートや相談にのっていただいて
開発を進められたのが非常に大きかったと思います。 岩田 : いや、うちの技術陣からは、
「カプコンさんではこんなことができるらしいから、
逆にどうやっているのか教えてもらおう」
っていう話を聞いてましたよ(笑)。 藤岡 : そうなんですか(笑)。
でも、「ちょっと無茶かなぁ」っていう提案にも、
丁寧な検証とアドバイスをいただいて、
とてもありがたかったです。 岩田 : カプコンさんとはニンテンドーDSのときから、
『モンスターハンター』の可能性を
探っていただいていたんですよね。
その流れで、今回ニンテンドー3DSも
提案させていただいたのですが、
お2人から見て、第一印象はいかがでしたか? 藤岡 : 最初にプレゼンで見せてもらったとき、
すごい衝撃を受けましたね。
裸眼立体視のような、
ある意味、近未来的なテクノロジーが
一般の家庭に降りる瞬間を
実際にこの目で見られるということに、
とてもワクワクしました。 辻本 : 僕はまず、任天堂さんらしい
キャッチーなハードだなぁ、と感じました。
プレゼンもまずハードの説明から入るんじゃなくて、
キャッチコピーから入って、
コンセプトを語られたんですね。
僕自身もそういったモノのつくりかたが好きなので、
とても共感しながら、見させてもらいました。
プレゼンも遊び心があって、とても印象的でした。 藤岡 : おもしろかったですよね、プレゼン自体も。
ハードをなかなか見せてくれなくて・・・(笑)。 岩田 : プレゼンもエンターテインメント、っていうことで(笑)。 辻本・藤岡 : (笑) 岩田 : そのうえで、じゃあ『モンスターハンター』は
どうなるか、と。 藤岡 : じつは僕自身、
『モンスターハンター』と3D映像は
相性がとてもいいだろうなぁって、
ずっと思っていたんです。 岩田 : たしかに、あの世界の空気感や
臨場感を表すのに、
立体視はとても効果的ですよね。 藤岡 : はい。箱庭的な、広大なフィールドで、
モンスターや自分がそこに存在するように
実感できる画づくりをしているので、
立体視で奥行きと広がりが加わることは
願ってもない要素だったんです。
その世界を歩くだけで
ワクワクする楽しさがありそうだなって
思っていました。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : わかります(笑)。
開発の途中、モンスターが3Dで
動き始めたのを見たとき、
すごく嬉しくなかったですか? 藤岡 : 嬉しかったですねぇ・・・。
「そこに、ラギアクルス(※4)がいるよ!」って(笑)。
いつも見ていたモンスターでも、
立体視で動き出したときの興奮というか、
臨場感はとても新鮮で。
ぜひお客さんにも早く体験してもらいたいですね。
今回も任天堂さんの技術スタッフの方々に、
とても密にサポートや相談にのっていただいて
開発を進められたのが非常に大きかったと思います。 岩田 : いや、うちの技術陣からは、
「カプコンさんではこんなことができるらしいから、
逆にどうやっているのか教えてもらおう」
っていう話を聞いてましたよ(笑)。 藤岡 : そうなんですか(笑)。
でも、「ちょっと無茶かなぁ」っていう提案にも、
丁寧な検証とアドバイスをいただいて、
とてもありがたかったです。 岩田 : カプコンさんとはニンテンドーDSのときから、
『モンスターハンター』の可能性を
探っていただいていたんですよね。
その流れで、今回ニンテンドー3DSも
提案させていただいたのですが、
お2人から見て、第一印象はいかがでしたか? 藤岡 : 最初にプレゼンで見せてもらったとき、
すごい衝撃を受けましたね。
裸眼立体視のような、
ある意味、近未来的なテクノロジーが
一般の家庭に降りる瞬間を
実際にこの目で見られるということに、
とてもワクワクしました。 辻本 : 僕はまず、任天堂さんらしい
キャッチーなハードだなぁ、と感じました。
プレゼンもまずハードの説明から入るんじゃなくて、
キャッチコピーから入って、
コンセプトを語られたんですね。
僕自身もそういったモノのつくりかたが好きなので、
とても共感しながら、見させてもらいました。
プレゼンも遊び心があって、とても印象的でした。 藤岡 : おもしろかったですよね、プレゼン自体も。
ハードをなかなか見せてくれなくて・・・(笑)。 岩田 : プレゼンもエンターテインメント、っていうことで(笑)。 辻本・藤岡 : (笑) 岩田 : そのうえで、じゃあ『モンスターハンター』は
どうなるか、と。 藤岡 : じつは僕自身、
『モンスターハンター』と3D映像は
相性がとてもいいだろうなぁって、
ずっと思っていたんです。 岩田 : たしかに、あの世界の空気感や
臨場感を表すのに、
立体視はとても効果的ですよね。 藤岡 : はい。箱庭的な、広大なフィールドで、
モンスターや自分がそこに存在するように
実感できる画づくりをしているので、
立体視で奥行きと広がりが加わることは
願ってもない要素だったんです。
その世界を歩くだけで
ワクワクする楽しさがありそうだなって
思っていました。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : わかります(笑)。
開発の途中、モンスターが3Dで
動き始めたのを見たとき、
すごく嬉しくなかったですか? 藤岡 : 嬉しかったですねぇ・・・。
「そこに、ラギアクルス(※4)がいるよ!」って(笑)。
いつも見ていたモンスターでも、
立体視で動き出したときの興奮というか、
臨場感はとても新鮮で。
ぜひお客さんにも早く体験してもらいたいですね。
{:.border.border-radius loading="lazy"} ラギアクルス=『モンスターハンター3(トライ)』に登場した海竜のモンスター。 {:.note-sm .faded title="※4"} [2. 『モンスターハンター』流おもてなし](/others/interviews/jp/3ds/creators/vol10/2/) {:.read-more}