『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第20回:『BRAVELY DEFAULT -FLYING FAIRY-』
5. 新しい王道RPGへの挑戦
- 岩田
- まだ体験版は触れていないけど、
このゲームに興味があるという方に、
『BRAVELY DEFAULT』はどういうゲーム、
と説明されますか?
- 浅野
- そうですね・・・。その方と、
どれだけコミュニケーションがとれるかにもよりますが、
一番短い言葉で言うのなら、
「スクウェア・エニックスの新しい王道RPGです」
ということになりますね。
もうちょっと時間があるなら、
「シナリオは『ロボティクス・ノーツ』(※19)の
林さんが書いていて、音楽は
Sound Horizon(※20)のRevoさんが書いていて、
ビジュアルは『FF12』(※21)、『タクティクスオウガ』(※22)の
吉田明彦が担当しています」と言うと思います。
さらにもうちょっと時間があるなら、
「通信でいっしょに遊ぼう!」と言いますね(笑)。
『ロボティクス・ノーツ』=『ROBOTICS;NOTES』。2012年6月に発売された拡張科学アドベンチャーゲーム。林直孝氏がシナリオを担当。
Sound Horizon=サウンドクリエーターRevo氏(作詞/作編曲)が主宰する幻想楽団。
『FF12』=『ファイナルファンタジーXII』。2006年3月、スクウェア・エニックスより発売された『FF』シリーズ12作目。
『タクティクスオウガ』=1995年10月、スーパーファミコン用ソフトとして発売されたシミュレーションRPG。
- 岩田
- 1人で遊ぶゲームだけれども、通信を使って、
1人遊びの幅が広がる新しいゲームってことですね。
林さんは同じ質問をされたら、何て説明しますか? - 林
- 「新しいんだけど、
なつかしい感じのするRPG」というのが、
シナリオ担当からの説明かなと思います。 - 岩田
- なつかしい気持ちを味わうのも、
RPGの役割として期待されていると同時に、
新たにRPGをプレイする方については、
どう考えておられますか? - 浅野
- 『ドラクエ』『FF』を遊んだことがある方だったら、
ストレスなく遊べるように設計しています。
システムが複雑ではないですし、
バトルも何の説明もなく遊べるように意識しました。
ただ、普通になぞるだけでは、
ターン制コマンドバトルをつくり直すだけになるので、
今回、ひとつ入れたものが、
「ブレイブ&デフォルト」という新システムです。
基本的に誰でも遊べるターン制コマンドバトルですが、
BP(ブレイブポイント)を使って
数ターン分の先の行動を連続して行える「ブレイブ」と
防御に徹してBPをためる「デフォルト」を組み合わせて
ターンをコントロールできるんです。
自分、相手、自分、相手・・・と、
決まったパターンで殴り合うのではなく
数ターン先の行動まで一気に行えるようにすることで、
爽快感や駆け引きが生み出せないかと思ったんです。 - 岩田
- これ、ターン制としては反則なくらい、
思いきった仕組みですよね? - 浅野
- そうですね(笑)。「ブレイブ」は、
数ターン先の行動までいっぺんに入力するので、
コマンド入力のわずらわしさを少しでも軽減しようと
左手だけでもコマンド入力できるようにもしています。 - 岩田
- ターンを前借りすると、
連続して行動できる代わりに、
そこから先、自分が何ターンか
行動の選択肢がなくなってしまうので、
そこに新しい戦略が生まれるんですよね。
無茶もできるし、無茶したばかりに後悔することもある。
リスクとリターンが成立しているので、
仕組みとして、すごく面白いと思います。 - 浅野
- ありがとうございます。
イメージもしやすいですし、
プレイヤーのプレイスタイルにも
合っているのかなと思ったんです。
一度に行動したい方もいれば、ターンの貯金をして、
まとめて後払いしたい方もいるでしょうし。 - 岩田
- すぐ前借りする方と、
ためる方とでは性格が出そうですね(笑)。
後ろから見ているだけで、タイプがわかりそうです。 - 浅野
- はい、そうなんです。すごく出ます(笑)。
「どうしても倒せないんだけど」って人がいて、
バトルのやりかたを見ていたら、
「そりゃ、一気に払ってばかりいたらダメだよ」って(笑)。 - 岩田
- 性格がわかるという話も、
発売後の話題の広がりとしては面白そうですね。
ちなみに、この企画がスタートしてからいままで、
振り返ってみて、どう見えますか? - 浅野
- 企画がはじまってから2年ぐらいたっていますけど、
この2年間、長かったです(笑)。
ただ、新作の王道RPGをつくるというのはチャンスでしたし、
ARの取り組みも、何作もつくった体験版も、
お客さんとキャッチボールしながら磨き上げるやりかたも、
考えうる、あらゆる手を尽くしたつもりです。
だから発売が怖くもありつつ、とても楽しみです。 - 岩田
- わかりました。
では最後に、おふたりからお客さんへの
メッセージをお願いします。
先に林さんからいいですか? - 林
- はい。最初に浅野さんから
『BRAVELY DEFAULT』のお話をいただいたときから、
キャラクターすべてをいかに魅力的に見せるか、
ということに、そうとう力を尽くしました。
魅力的なキャラクターたちが織りなすドラマを
とてもこだわってつくっているので、
そこに何かビビッとくるものがあれば、
一度体験版でプレイしていただきたいですし、
ぜひソフトが出たら買っていただきたいな、と思っています。
- 岩田
- ありがとうございます。
では、浅野さん。 - 浅野
- はい。林さんにはかなり無茶ぶりをしましたが、
音楽担当のRevoさんにも、かなりの無茶ぶりをしました・・・(笑)。
そのような状況のなか、
吉田明彦も、開発担当のシリコンスタジオも、
自分の要求以上に頑張っていいものを出してくれたので、
新規のRPGとして、胸を張れるものになったと思います。
お客さんからもご意見をいただきつつ、
いっしょにつくったものですから、
ぜひ遊んでもらえればうれしいです。
- 岩田
- ありがとうございます。
いままでいっしょにお仕事をしたことがなかった
持ち味がまったく違うおふたりが、
こういうご縁があって、いっしょに仕事をして、
そしていまの時代に新しい王道RPGをつくるという、
決してやさしくないチャレンジを、
時間をかけてやり切ったという感じがします。
幸いにもいま、3DSが世の中で勢いがあり、
新たなRPGが世の中に受け入れられるチャンスだと思いますので、
たくさんの方に届くようにお手伝いしたいと思います。
今日、これを読んでくださった方に、
「RPGをつくる人はこんなことを考えているんだ」と
興味をもってもらえたらいいですね。 - 浅野
- そうですね。
- 岩田
- こういう話って、
商品の魅力を届けるのはもちろんですが、
自分たちがつくってきたことに対して、
話をしながら整理することにも
意味があるんじゃないかと思うんです。
それに未来のつくり手になるかもしれない誰かに、
「こういう仕事って魅力があるなぁ」
と思ってもらえたらうれしいですよね。
今日は、また違った角度からお話を訊けて、
楽しかったです。
- 浅野
- ありがとうございます!
- 一同
- ありがとうございました。