『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第22回:『エクストルーパーズ』
6. 「変えることをためらわない」
- 岩田
- この「社長が訊く」が掲載されるタイミングで、
ちょうど体験版(※21)が配信されていますよね。
その内容を少しご紹介いただけますか。
体験版=本作『エクストルーパーズ』体験版を、ニンテンドーeショップで配信中です。くわしくはこちら。なお、体験版は予告なく終了になる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
- 小嶋
- はい。今回配信する体験版は、
TGS(東京ゲームショウ2012)で
出展した3バージョンを収録したものになっています。
当初は配信容量や制作期間の問題があったのですが、
やはりすべてを遊んでいただきたいという気持ちから、
何とかTGSバージョンのままのかたちの配信へと、
こぎつけることができました。 - 安保
- 内容としては、シングルプレイが1バージョンと、
ローカルで3人協力プレイができる
「VRミッション」が2バージョン入っています。
シングルプレイで操作感覚になじんでもらって、
「VRミッション」の2つのレベルで腕試しという構成です。
レベル1はアクションが苦手な方でもクリアできますが、
レベル2は小嶋から「すごく難しくしてくれ」って
言われてつくった、ちょっといじわるな内容です。 - 小嶋
- 『モンハン』でいうところの
「やれるものならやってみろミッション」ですね(笑)。 - 岩田
- 誰でも気持ちよく遊べるカジュアルなミッションと、
腕に自信のある人向けの“挑戦状”の2つが
一緒に入っているわけですね。 - 小嶋
- はい。「両方必要だろう」
とはずっと思っていたんです。
はじめての人向けのミッションは当然なんですが、
それだけだと「ああ、おもしろいね」って
その場で終わってしまう気がしたんです。 - 岩田
- それだと、残らないですよね。
- 小嶋
- そうです。それでもうひとつ、
「クリアできない体験版」が
あってもいいんじゃないか、と思っていて。
- 岩田
- 体験版なのに、クリアできないんですか?(笑)
- 安保
- でも結果、TGSではそのレベル2が好評で、
クリアするために
2回並んでくれた方もいらっしゃったんです。 - 岩田
- あのものすごい列を、2回ですか。
それはすごいですね。 - 小嶋
- はっきり言って、
ひとりではクリアできない難しさなんですね。
それでTGSの会場で知り合った人同士が
3人で協力して挑戦してくれたり。 - 岩田
- 腕に自信のある人が集まらないと、
クリアが困難なミッションなんですね。 - 安保
- まぁ、簡単にはいかないですね。
- 岩田
- でもプレイヤーはつねに、
つくり手の想像を超えますからね。 - 小嶋
- それがくやしくもあり、
うれしくもあるところです(笑)。 - 安保
- 体験版ではそういった方むけに、
タイムアタック用のタイマーをつけたんですよ。
協力プレイでは3人の立ち居振る舞いによって、
かなり効率が変わるので、やりこんでいくと
どんどんタイムが縮まっていきます。
開発のチーム内でも「よーし4分切ろうぜ!」
とか盛り上がっていますね。 - 岩田
- もう、レースゲームみたいですね(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- この『エクストルーパーズ』もそうなんですが、
わたしから見て、カプコンさんは
新しいシリーズが定期的に生まれている感じが
すごくしているんです。
そういった社風はどこからきているのか、
小嶋さん、安保さんから
最後にお訊きしたいんですけれど。 - 小嶋
- いろんな立場のスタッフから、
つねにいろんな提案が出てきているんですけど、
それをその場だけで終わらせずに、
会社としてしっかりくんで、かたちにするシステムが
自然とできているのかもしれません。
そういった中にたまに、
ミラクルを起こす要素が含まれているわけで。 - 安保
- まったくゼロから生み出したものではなくて、
「変えることから生まれた新しさ」
みたいなものもありますよね。
あえて言うとしたら、
「変えることをためらわない」
というのもあると思います。
- 岩田
- 現場のノリを尊重しつつ、
一度つくったものでも必要なら壊し、
変えることをためらわない、
ということですか? - 小嶋
- それで言うと『モンハン』も
最初はぜんぜんいまのかたちではなくて
もっとファンタジーRPGに近い雰囲気でした。
それを途中で一度、大きな方針転換をしています。 - 安保
- どこの会社でも同じだと思うんですが、
現場が固執しすぎて、うまくいかないことって
けっこうあると思うんですね。
「こうしたらいいのに」って話をすると、
「歴史があるから変えられない」って
思い込んでいたりするんです。 - 岩田
- でもそこをひとつ変えたら、
いろんな問題がいっぺんに
解決する場合もあるんですよね。
それは外から見てはじめてわかることもある。 - 安保
- そうですね。
わたしは途中から立て直しに入ることが多かったので、
すごくよくわかります(笑)。 - 岩田
- 理想は、自分でつくっていて、ハマったら、
クルッと視点が切り替えられればいいんですけど。 - 安保
- つくっている本人からすると、
「それがいちばん難しい」とは思います。
苦労してつくったことをわかっている分、
判断しにくくなりますから。 - 岩田
- でも、ぜったい問題の原因となる、
理由はありますからね。 - 安保
- ありますね。
それぞれの理由をひもといていくと、
必ず原因にたどりつくはずなので。 - 小嶋
- 元プログラマーならではの観点ですね。
- 岩田
- とてもよくわかります(笑)。
原因を考えて、行動しますよね。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- この『エクストルーパーズ』は、
新しいチャレンジのひとつとして、
「なにか伝わるものがある」と思っているんです。
最後に大きく化けるゲームというのは、
つくり手の思惑を離れて、
お客さんからお客さんに伝わっていきますから。 - 小嶋
- 「その連鎖が広がっていけばいいなぁ」と、
本当にそう思います。 - 岩田
- そういう意味では、すでに任天堂内に
熱烈なファンがいますよ(笑)。 - 小嶋
- ああ、ありがたいです(笑)。
- 安保
- 開発スタッフの様子を見ると、
今回とくにつくった人の愛情が強いんです。
人にすすめるスタッフがすごく多いし、
「人から愛される魅力が何かあるのかな」と、
ちょっと思っていま。 - 小嶋
- アクションゲームをずっと好きな
スタッフたちがつくった
「カプコンアクションいいとこ取り」の
ゲームですからね。 - 岩田
- 今日お話をお訊きしていると、
おふたりのゲーム開発者遍歴はぜんぶ、
この『エクストルーパーズ』につながって、
活かされている感じがしました。
見た目はマンガチックで間口が広いけれど、
遊びこむほど、ちがったおもしろさが見えてくる。
ふだんアクションをされない方も、
腕に自信のあるコアゲーマーの方も、
一緒に同じように楽しめるように、
スタッフの思いがこめられた
カプコンアクションのいいとこ取りゲーム。
そこを味わってもらいたいですね。 - 小嶋・安保
- はい、ぜひ(笑)。
- 岩田
- 今日はありがとうございました。
- 小嶋・安保
- ありがとうございました。