『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第4回:『リッジレーサー3D』
4. “疾走感”からくる“爽快感”を
- 岩田
- 『リッジレーサー』というソフトは、
新しいハードの発売に合わせて登場することが
伝統のようになっていますけど、
ナムコさんのなかで、いつもこだわっておられるポイントは、
どういうところにありますか? - 坂上
- とても単純な言葉になるんですけど、“疾走感”です。
そして、その“疾走感”からくる“爽快感”が、
「まずは、そこありき」なんです。 - 岩田
- とにかくスピード感を体感して、
“疾走感”からくる“爽快感”を味わえるようにされているんですね。
で、今回、ニンテンドー3DSでつくるにあたっては
どんなことがテーマになったんでしょうか? - 坂上
- やっぱり3Dですから、
それを活かしたような演出を入れようという話も出ました。
たとえば、先を走るクルマがガーンとはじかれて、
横転しながら自車のフロントにガーンとぶつかるシーンとか。
すると、「うん、3Dだから、そのほうが派手で面白いよ」
という話になっちゃいますし、
実際そういう演出を入れると面白いんです、最初は。 - 岩田
- ああ、でも最初だけなんですね。
- 坂上
- そうなんです。
快適にクルマを走らせているときに、そのような演出を入れると、
気持ちの悪いゲームになってしまうんですね。
ところが、開発がはじまった頃は
「3Dなんだから、もっと派手な演出を」みたいに、
周りがすごくうるさかったんです。クルマがガーンと激突して。 - 岩田
- 画面から飛び出て、みたいな感じですか(笑)。
- 坂上
- はい(笑)。
もちろん、そうしたくなる気持ちもわかるんです。
でも、突然、画面の前をガーッて横切られると、
走りのリズムを崩されてしまうんです。
もともと、『リッジレーサー』というゲームは、
リズムに乗って“疾走感”を感じて走ってほしいわけですから。 - 岩田
- そもそもレースゲームで、いい感じで走れているときって、
「無我の境地」とか「無心」とか
そういった心境になることが多いですよね。 - 坂上
- そうですよね。
- 岩田
- 言い方を変えると、スポーツ選手が、
「ゾーンに入る」と言ったりするじゃないですか。 - 坂上
- ああ、はいはい。
- 岩田
- で、心がそのような状態になったとき、
「迫力があるから」といって、派手な演出でアピールしても、
実はじゃまなだけだということなんですね? - 坂上
- そうなんです。
ですから、先ほども言いましたように、
3DSでクルマの“存在感”が表現できるようになりましたので、
その部分を大事にしながら、
“疾走感”からくる“爽快感”を感じられるように、
開発を進めていきました。
- 岩田
- 今回、ほかにもニンテンドー3DSだからこそできる
新しいチャレンジをされたと聞きましたが? - 坂上
- はい。すれちがい通信(※16)がそのひとつです。
見知らぬ人とすれちがうことで、
自分のゴーストを配れるようにしました。
すれちがい通信=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。
- 岩田
- 相手に送り込むんですか?
- 坂上
- ええ、相手に送り込むこともできますし、
ゴーストをもらうこともできます。
しかも「すれちがいデュエル」というモードで、
そのゴーストと対戦することもできます。 - 岩田
- すると、すれちがいざまに、
データがシュッと交換されて、お互いのゴーストと
いつでもどこでも、レースができるんですね。 - 坂上
- はい。それで今回、
すれちがい通信の機能を入れることになって、
思い出したことがありまして・・・。
以前、ゲームセンターで遊んでいる人を観察していたら、
2人組の男の子がレースゲームで遊んでいたんです。
それを見ていて面白かったのは、
まず1人目がプレイして、ゴーストを残すんです。
すると、もう1人と交代して、
そのゴーストとレースをしているんですね。 - 岩田
- 普通はいっしょに対戦するものですよね。
- 坂上
- そうなんです。ところがその2人は
交互にプレイして、お互いの走りを観察していたんです。 - 岩田
- 「そうか、そうきたか。
じゃあオレはこういう走りを」みたいにですか。 - 坂上
- そう、
「このコーナーでは、こういう走り方をするのか」
みたいに。 - 岩田
- 同時に競争すると、自分の運転に夢中になって、
友だちがどんな走りをしているのか観察できないので、
たぶん、そのような遊び方をしていたんでしょうね。 - 坂上
- で、そのように交互に競争することで、
上達するのも早いでしょうし、
それも対戦の楽しみ方のひとつだと思うんです。
なので、今回の『リッジレーサー3D』でも、
時間差で対戦して遊ぶのも楽しいのではないかと思っています。 - 岩田
- ゲームセンターで起こっていたことが、
なんと街角でできちゃうじゃないかということですね(笑)。 - 坂上
- はい。しかも、相手はゴーストなので
好きなときに、自分のペースで戦うことができますし。 - 岩田
- すれちがい通信で、わたしがすごく楽しみなのは、
通勤で偶然乗り合わせる、顔を知らない人と、
毎日競争するようなことが起こることを思うと、
ちょっとワクワクするんです(笑)。
- 坂上
- そうです、ワクワクしますよね(笑)。
それに、これまでは友だちとデータを交換しようとすると、
ちょっと面倒だったりしましたけど、
3DSだと、カバンに入れておくだけで、
ゴーストのやりとりもできますし。 - 岩田
- 社内ですれちがっただけでも、
「あいつ、持ってたのか!」
みたいなことも起こるんでしょうね(笑)。 - 坂上
- それに、友だちと通信で対戦しようとすると、
お互いに都合をつけないといけなかったりするんですけど、
今回は自分のペースで遊べるのがいいと思います。
しかも、レース自体は3分とか5分で終わるので、
気楽に遊ぶことができますし、
「すれちがいデュエル」用のゴーストは
50コまでためることができるんです。 - 岩田
- 自分のタイムに近い人を選んで
対戦することも可能なんですね。 - 坂上
- はい。やっぱりケタ違いに速い人と対戦すると
凹んでしまいますから(笑)。
で、お客さんには対戦をどんどんしてほしいと思いまして、
すれちがい通信をすればするほど
ポイントがもらえるようになっています。
それでポイントをためると、
新しいクルマやアイテムとかをゲットしやすくなります。 - 岩田
- ところで、ボリューム的な面では
今回の商品はどんな位置づけなんですか? - 坂上
- 携帯機なんですけど、ボリュームは増えまして、
たとえばコースの数がかなり多くなっています。
オリジナルのコースもいくつか作成しましたし、
クルマの種類も豊富になりました。
それに、「グランプリ」という1人プレイ用のモードがありまして、
そこで転戦するんですけど、150戦以上やったりできます。 - 岩田
- 150戦、ですか。
- 坂上
- はい。それでたっぷり戦えるようになっています。
あと、モードもいろいろつけています。
たとえば「クィックツアー」というモードがありまして、
これは「グランプリ」というモードとは違いまして、
たとえば何分間遊びたいとか、条件をセレクトすると
自動的にコースを選択してくれるようになってるんです。 - 岩田
- 「いま5分あるので、ちょっとだけ」
みたいな遊び方もできるということですか? - 坂上
- そうです。
それにコースをセレクトする条件はいろいろありまして、
まんべんなく選んでくれる「おすすめ」だけでなく、
スピード重視の「ハイスピード」とか
コーナリング重視の「ドリフト」とかで
選んで遊ぶこともできるようになっています。
あと、楽曲ですね。「『リッジレーサー』は音楽がいい」
という声をいただいていたりしますので、
もともとシリーズの音楽を担当していたスタッフが、
今回はオリジナルを15曲くらいつくりまして、
なおかつ昔の楽曲も含めると、40曲以上入りました。 - 岩田
- かなりのボリュームですね。
- 坂上
- はい。そういう意味での手ごたえも感じています。