『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第7回:『DEAD OR ALIVE Dimensions』
6. 健全な嫉妬
- 岩田
- では、もうすぐ発売となります
『DEAD OR ALIVE Dimensions』ですが、
今回、『METROID Other M』のステージが
登場するとお聞きしたのですが。 - 早矢仕
- はい。このソフトの前にTeam NINJAと任天堂さんで
『METROID Other M』を開発したのですが、
今作では、ステージをコラボレーションさせていただきました。
リドリーというキャラクターが火を噴いたり、
ステージから落ちたら捕まえられたりするんです。 - 岩田
- 「ここで格闘するの?」というくらい
異次元なステージですよね(笑)。 - 早矢仕
- はい、異質なものを用意してみました。
僕らの『DEAD OR ALIVE』は、
こういうものを許す格闘ゲームということで、
ぜひ遊んでいただきたいと思います。 - 岩田
- 最後に、今後「早矢仕さんが3DSをこう活かしてつくるぞ」
という新たな思いがありましたら、訊かせてもらえますか? - 早矢仕
- 今回、僕らは3Dを演出として使いましたが、
今度は3Dをゲームデザインに反映させたソフトを
つくりたいと思います。
宮本さんのインタビューを読ませていただくと、
3Dでしかできないゲームデザインをされていますよね。
たとえばジャンプする距離が奥ゆきでわかる、とか。
- 岩田
- 『パイロットウイングス リゾート』(※21)を体験したときも、
たとえば輪くぐりが簡単になるなど、
3Dになると遊びやすさがぐっと変わりました。
『パイロットウイングス リゾート』=2011年4月14日にニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたスカイスポーツゲーム。
- 早矢仕
- はい。3D前提でゲームデザインすることの楽しさと言いますか。
着陸が見えないプロジェクトにはなりますが、
これからつくるゲームとしては、
ものすごくチャレンジしがいがあると感じています。 - 岩田
- 確かに、いままでのゲームのつくり方ではできなかったものが、
3DSなら、できるかもしれないですから。
これはゲームがポリゴンになったとき以来の革命なので、
いままでとどのように演出や遊びが変わるのか、ワクワクしますね。 - 早矢仕
- そうですね。3DSで新しいゲームがつくられることを
僕自身もお客さんのひとりとして楽しみにしているし、
つくり手としても挑戦したいという気持ちがあります。 - 岩田
- 最初に扉を誰かが開けて、
「あのゲームが、ゲームデザインの常識を変えたよね」
と誰かに言ってもらえるのは、ちょっとワクワクしますから。 - 早矢仕
- はい。いろいろな制作者の方のゲームをプレイすることも楽しみです。
でも、いままで非常識だと思っていたことを、
誰かがポンと実現させた瞬間は、すごく悔しいでしょうから、
僕自身がその扉を見つけていきたいなと思います。 - 岩田
- 不可能をはじめから不可能と思わず、
やりようによって解くことができれば、
人に驚いてもらう仕事としては最高です。
不可能だと思い込むことが、多分最大の敵なんですよね。 - 早矢仕
- 確かにそうですね。
- 岩田
- わたしが以前、ゲーム人口拡大という話をしたとき、
「5歳から95歳まで」という言葉を使ったんです。
そのときは
「95歳はリアリティがなくてありえない」という声も
あったんですが、去年、イギリスの方から
写真を1枚もらいまして、
『Wii Sports Resort』(※22)の
CMに出演してくださった96歳のおばあちゃんが、
普通にゲームを遊んでくれていたんです(笑)。
『Wii Sports Resort』=2009年6月にWii用ソフトとして発売されたスポーツゲーム。
- 早矢仕
- おおー。
- 岩田
- つまり、一見不可能にさえ思えることも
できるかもしれないと思ってやりつづけた結果、
たどりつくことができたんですが、
一見不可能なことが、アイデアや技術で可能になったとき、
それはあとからイノベーションと呼ばれるんじゃないでしょうか。
いずれ、「早矢仕さん、あれがイノベーションでしたよね」
と言えるアウトプットを出せたら、最高にかっこいいですね。
- 早矢仕
- そう思います。
ただ・・・ちょっとプレッシャーを感じますが(笑)。
わたし自身、ゲーム開発がいい意味で慣れてきて、
着陸のさせ方がわかるようになってきたので、
自分に対しては、つねに「それでいいのか?」と
問わなきゃいけないなと、考えるようにしています。 - 岩田
- 常識が増えて、自分の定石や手口が決まってくると、
予定調和になってしまう恐怖があるんですよね。 - 早矢仕
- 今回も、着陸させたことで満足しちゃだめだなと思っているんです。
いまの自分の意識を全部疑いつづけて、次のプロジェクトに
進まなきゃいけないなと、自分に言い聞かせているところです。 - 岩田
- 近い将来、何かでごいっしょできるかもしれませんし、
僕らのつくるもので早矢仕さんを悔しがらせたり、
逆に早矢仕さんのアウトプットで僕らが悔しがったり、
そんなことができるといいですね。 - 早矢仕
- はい。いい意味で、いろいろな人と競いたいです。
- 岩田
- そう、“健全な嫉妬”はすごくあるべきだと思います。
- 早矢仕
- ゲーム開発のみなさんは、多分みんな持っていらっしゃいますよね。
- 岩田
- 全員、人にウケたくてやっているわけですから、
自分の知らない手口をいち早く発見して、
お客さんにウケるものをつくっている人には
「やられた!」と思いますよね(笑)。 - 早矢仕
- そうですね(笑)。
「こんなゲームをつくられちゃったな・・・」って
悔しい思いばかりしています。 - 岩田
- そういう意味では、3DSはまだまだ叩きがいのある、
楽しんでものがつくれるハードですので、
これからもぜひ使ってください(笑)。 - 早矢仕
- はい。ぜひぜひ、みんなに悔しがられるような
ゲームをつくりたいと思います。 - 岩田
- 今日はありがとうございました。
- 早矢仕
- ありがとうございました。