『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇
第8回:『バイオハザード ザ・マーセナリーズ 3D』/『バイオハザード リベレーションズ』
4. 次に何が出てくるか知っていても怖い
- 岩田
- 現在、つくられている2作品についてですが、
まず『リベレーションズ』で、いちばん打ち出したい
新しい軸について教えていただけますか? - 川田
- やはり携帯機でつくる『バイオハザード』ということで、
携帯機ならではの要素をもっと注意深くつくろうと思います。
まだリリース前の情報などは話がしにくいのですが・・・(笑)。
逆に、いま岩田さんが期待する
「こういう『バイオハザード』を携帯機で見たい」
というものがありましたら聞いてみたいですね。
これを読んだスタッフが奮起してがんばると思います(笑)。 - 岩田
- あははは(笑)。
使えるチャンスは何でも使おうということですね。
そうですね・・・たとえば寝る前にベッドの上で遊ぶホラーゲーム
というのは、どのような味になるのか気になりますし、
新しい遊び方の提案ができそうなチャンスがありそうですね。 - 川田
- はい。携帯機なら、生活のなかで
ゲームに没頭できるシーンを選択しやすいと思います。
僕自身は、没入感はモニターの大きさや音響環境に
しばられないと思っているんです。
画面は小さくても「ここはどうなっているんだろう?」
とか「ここに敵がいるのでは?」と
ドキドキする感覚は変わらないですから。 - 岩田
- 「携帯機の画面の小ささをハンデと思わずにつくっている」
とプロデューサーが言ってくれることは、
お客さんにとって、とても大事ですね。 - 川田
- やはり、据置機で遊んできた方のなかには
心配される方もいると思うんです。
でも、据置機とは異なるホラーの楽しさや恐怖を
携帯機でも楽しめると考えています。
実際、シナリオを知っている僕が遊んでいても、
やっぱり怖いシチュエーションができているんですから。
- 岩田
- 次に何が出てくるか知っていても怖い、というのは面白いですね。
- 川田
- はい。恐怖がガッと押し寄せるんです。
不意をつく恐怖とか、生理的な恐怖とか、不安を掻き立てる恐怖など
いろいろあると思うんですけれど。 - 岩田
- この先に何が出るか、理性としてわかっていても、
表現のナマっぽさやコントラストから生まれる表現で、
自分の感情はきちんと揺さぶられるんですね。
ちなみに川田さんがはじめて立体視をご覧になったとき、
どう思われましたか? - 川田
- まず、「何もつけなくても3Dに見えるのか」とおどろきました。
それと「『マリオ』を遊んだらどんな感じになるかな?」とか、
「『ゼビウス』(※16)だったらどんな高低差になるのかな?」
とか考えました。若干、オールドな人間なんで(笑)。 - 岩田
- 出てくる順番が一緒ですね(笑)。
わたしたちもそういうことを社内でよく話していました。
『ゼビウス』=ナムコ(現 バンダイナムコゲームス)から1983年に、アーケードゲームとして発表された縦スクロールのシューティングゲーム。1984年にファミコン版が発売された。「任天堂カンファレンス2010」において、過去タイトルの3D表示サンプルとして、3D版『ゼビウス』が参考出展された。
- 川田
- ゲームの面白さって、実際に遊ぶことで感じられますが、
3DSの面白さは一目瞭然なんですよね。
そういう感動があるのと同時に、
「『バイオハザード』はどんなことをすればいいのか」
ということを考えました。
そのうえで、3DSでやれることとやれないことを、
日々経験値としてたくわえているところです。 - 岩田
- 3Dに向くネタ、向かないネタはありますよね。
- 川田
- はい。いまは飛び出すというより、奥行き感を重視して
つくったほうがいいと話していたり、
長時間遊ぶ方に、負担がかからないために、
ひいては生活のなかでのゲームのやり方を
新たに推奨できないかということを考えています。 - 岩田
- いま、日本では据置機以上に携帯型ゲーム機を
プレイされている方の人数が多いんです。
これはゲームの中断が手軽になったことで、
いまのお客さんの生活スタイルに
携帯機が入りやすいからだと思うんです。
3DSは持ち歩きながらいろいろなことができますので、
忙しい方にも骨太のゲームを遊んでもらいたいです。 - 川田
- ただ、去年のE3(※17)で最初に3DSのハードを見たとき、
一緒にいたスタッフと、
「早く『nintendogs』(※18)をやりたい」と話していました(笑)。
立体になることで、さらに存在感が増しましたよね。
Wiiという画期的なデバイスをつくられたとき、
普段ゲームをしないわたしの両親が遊んでいる姿を見て、
「こういう提案ができることが任天堂さんの強さなんだな」
と感じました。
E3=Electronic Entertainment Expo(エレクトロニック エンターテインメント エキスポ)の略で、米国のロサンゼルスで開催されるコンピューターゲーム関連の見本市のこと。ここでは2010年6月に開催されたE3を指す。
『nintendogs』=『nintendogs + cats』。2011年2月、ニンテンドー3DS用ソフトとして本体と同時に発売されたコミュニケーションゲーム。
- 岩田
- じつは3DSを見たみなさんの第一声は
「本当に見える!」なんです。
「本当に見えなかったら商品化しませんよ!」
って思うんですが、みなさんそうおっしゃるんですよね。 - 川田
- 何もつけなくても見えるので
「いままでつけていた眼鏡は何なんだ?」
って思っちゃいますからね。 - 岩田
- 3DSの場合は、画面と見る方の位置関係が
固定できるから実現できたんです。
それと表現される映像のクオリティ、液晶の解像度と精度、
これらすべてのハードルを越えて商品になっているんです。
じつのところ、3Dは10年くらい前からやりたかったんです。
ゲームキューブの時代なんですが、
あれは特殊な裸眼立体視対応の液晶モニターをつけると、
立体で絵が表示できるようになっていました。 - 川田
- そうだったらしいですね。
- 岩田
- でも当時、その液晶をつくると高額になりすぎてあきらめました。
それからゲームボーイアドバンスSPのときにも、
その液晶を埋めてみたんですが、
立体になっても魅力的な絵ではなかったんです。
だから一定以上のグラフィッククオリティがないと
立体は魅力がないんだと学んだんです。
そのあとニンテンドーDSが出て、
その次に出すべきハードを研究する過程のなかで
あらためて実験してみて、実際に現物を見た瞬間、
みんな「これだ・・・!」と(笑)。
- 川田
- なるほど、ある日とつぜん技術が確立できたわけではなく、
そういう長い流れのなかでのことだったんですね。 - 岩田
- そうなんです。何度もしつこく3Dに挑戦していたら、
世は“3D元年”と言われはじめたので、
世の中のタイミングは不思議だなと思いました。