『トモダチコレクション 新生活』
2. 「大人スプレー」
- 岩田
- 子供はどうやって生まれるんですか?
- 高橋
- 結婚した夫婦から、しばらくすると生まれます。
当初は赤ちゃんができたとき、
お母さんのお腹が大きくなる、なんてことも
試していたんですけど・・・。 - 中江
- スタッフの間ではかなり不評でしたよね。
「なんか生々しい感じがする」
ということでボツになりました。 - 坂本
- ただ、本当は
「そろそろ生まれる感」を出したくて、
たとえば卵から生まれるとか・・・。 - 岩田
- え? 卵ですか?
- 坂本
- 何時間かしたら卵が割れて、
「子供が生まれました!」っていうのも
『トモコレ』ならいいかもしれない、
と言っていた時期もありました。 - 岩田
- はあー・・・、それはまた斬新ですねぇ(笑)。
- 坂本
- あとは、生まれる何日か前ぐらいから
お母さんが押し入れにこもるとか・・・。 - 岩田
- えーと・・・なぜ、押し入れなんですか?(笑)
- 坂本
- 猫がそうするって聞いたことがあって・・・。
- 岩田
- 人は猫じゃないですから!(笑)
- 坂本
- でも卵も押し入れもあんまり・・・
高橋くんも、賛成していなかった気がします(笑)。
ああ、でも中江くんは
ちょっと気になっていたよね? - 岩田
- ・・・という坂本さんに、
中江さんは翻弄されていたわけですね。 - 中江
- あの・・・すみません。
いろいろな実験は重ねてきましたけど、
卵と押し入れは、実験していませんでした。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- 『トモコレ』の中で起こる恋愛関係は、
現実ではあり得ないことも含めて面白いわけですけど、
「子供が生まれる」となると、
考えなきゃいけないことがたくさんあって、
けっこう大変だったんじゃないですか? - 高橋
- そこがいちばん大変でした。
子供同士とか、
子供と大人が結婚することについて、
社内に強い懸念を示す方々がいたんです。 - 岩田
- 最終的には、その方々とどんな話をして、
いまの仕様に落ち着いたんですか? - 高橋
- 『トモコレ』の世界では、
はじめに生年月日を入力するので、
大人と子供の区別をなくすわけにもいかないから
どうしようかというときに、坂本さんが・・・。 - 坂本
- 「結婚する時だけ限定で、
大人になったらいいんじゃないか?」と思って、
「大人スプレー」というものを考えました。 - 岩田
- 「大人スプレー」・・・ですか?
それはどんなものなんですか? - 坂本
- 結婚するMiiが子供の場合、
スプレーをかけたら身長が伸びて、大人になるんです。
みんな「それはいい!」って、
意外と好評だったんです。 - 岩田
- へえ~・・・けしからんと言ってた人たちが
「大人スプレー」の案で納得している姿を想像すると、
妙に面白いですねぇ(笑)。
一時的に大人になって、また元に戻るんですか? - 坂本
- 一応、離婚するまでは大人のままです。
- 岩田
- ああ、そうか。離婚すると
「大人スプレー」の効果が切れるんですか。 - 坂本
- はい、ご都合主義な仕組みなんです(笑)。
じつは結婚しなくてもスプレーをかけることができて、
ちょっとだけ大人になって、すぐ戻れるんですね。
やっぱり結婚となると、責任感や緊張感から
効果が持続するんでしょうね、きっと。 - 一同
- (笑)
- 高橋
- ちなみに、大人になっても、
Miiの身長を編集で下げられます。 - 坂本
- 大人になる儀式として
一応大きくなってもらうわけです。 - 岩田
- わたしは結婚することの問題点について、
「大人スプレー」が解決策だったことを
今日まで知りませんでしたので、目から鱗でした。
ちなみに今作では、子供を
旅立たせることができますけど、
あのあたりはどうやってできたんですか? - 坂本
- もともと「Miiが旅をする」という話は、
昔からネタとして議論してたんです。 - 高橋
- 『似顔絵チャンネル』をつくっているとき、(※3)
坂本さんから「Miiに旅をさせたい」
って話をもらっていたんですけど・・・。
『似顔絵チャンネル』をつくっているとき=『似顔絵チャンネル』とは、Wii本体内蔵ソフトのひとつで、家族や友人など、顔のパーツを組み合わせるカンタン操作で似顔絵キャラクターのMiiをつくることができるチャンネル。『大人のオンナの占い手帳』で制作された似顔絵ツールがきっかけとなり、『大人のオンナの占い手帳』のプロジェクトが一時中断され、高橋が『似顔絵チャンネル』の制作にかかわった。くわしくは社長が訊く『トモダチコレクション』を参照。
- 岩田
- ああ、それは2006年の話ですから、
7年もののアイデアなんですね。 - 高橋
- はい。でも当時は実現できなくて、
3DSの本体機能でもアイデアが再び浮上したんですけど、
その時もいろいろな制約があってできず、
今作の『トモコレ』でようやく実現できました。
「Miiの旅立ち」ということと、
「すれちがい通信」(※4)で何かを実現させたかったことと、
「子供が生まれる」という3つが、
今回の仕様になった大きな理由です。
「すれちがい通信」=電源を入れたまま本体を持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやりとりができる通信機能。今作の『トモダチコレクション 新生活』では、すれちがい通信を使って成長した子供を旅に出したり、ほかのプレイヤーの島から輸入品が送られてきたり、旅人がやって来たりする。
- 坂本
- じつはMiiに旅をさせる狙いがもうひとつあって、
旅立たせることで「あの子は今どうしているかな・・・」
って思いを馳せるという、Miiに対する今までにはなかった
感情が生まれるだろうと考えたんです。
- 岩田
- 確かに「いなくなるからこそ芽生える感情」って
ありますからね。旅人は、旅先から
何か送ってくることもあるんですよね。 - 高橋
- はい。「いつの間に通信」(※5)で、
旅先から手紙を送ってくれたり、
一時的に自分の島に帰省したりします。
「いつの間に通信」=ニンテンドー3DSが、インターネット無線アクセスポイントを探して自動的に通信を行い、さまざまな情報やコンテンツを受信する機能。今作の『トモダチコレクション 新生活』では、旅立った子供から手紙がきたり、任天堂から配信される特別なアイテムを受け取ることができる。
- 岩田
- 手紙にはどんなことが書かれているんですか?
- 高橋
- 「いま、わたしはこういった島にいます」とか、
「ここの人たちはこういう人たちです」とか、
旅先の島で出会った
Miiと撮った写真を送ってきたりもします。 - 岩田
- へえ~、写真も送られてくるんですか。
- 高橋
- 滞在中の島のプレイヤーからあずかった伝言や、
それぞれの3DSに登録している地域ごとの特産品を、
お土産として持って帰ってくることもあります。 - 中江
- プログラマーは最後の最後まで苦労していましたけど、
できたものを見ると、やっぱり感動が大きかったので、
本当に入れてよかったと思います。