『とびだせ どうぶつの森』
3. 物量との戦い
- 岩田
- 今回もたくさんの種類のどうぶつが登場しますけど、
ネタ切れにならないんですか? - 高橋
- どうぶつの種類は
だいぶ食いつぶしてきました・・・(笑)。 - 岩田
- 開発者視点で考えてみると、
正直、苦しいと思うんですよ。 - 高橋
- そう、そうなんです(笑)。
- 京極
- だから、犬だったら
犬種違いの方向に行きがちで(笑)。 - 岩田
- あまり見たことのないどうぶつだったら、
受け入れられないでしょうしね。 - 高橋
- そうなんです。
リサイクルショップのカイゾーとリサは
アルパカなんですけど・・・。
- 岩田
- 最近アルパカは人気ですよね。
- 高橋
- だから「人気が出てきてよかったなあ」と。
- 岩田
- はい(笑)。
- 高橋
- それに、
ナマケモノのレイジもついに登場します(笑)。
ナマケモノはどうぶつ界でいうと、
だいぶ端っこのところにいると思うんですけど、
そんな端っこから選んだ感じがありまして。
- 岩田
- ネタ切れと戦いながら、
端っこのほうまで手を出している感じですか?(笑) - 高橋
- でも、やみくもに手を出すのではなく、
そのどうぶつが登場するお店や目的に応じて、
どうぶつを探してくるようにしています。
なので「園芸店だったら、森に住むどうぶつがいい」
ということで、ナマケモノを選びました。
ナマケモノ、すぐ寝ちゃうんですけど(笑)。
- 岩田
- 実際、これまでのシリーズを見ても、
どうぶつが持っている個性と、その役割が
とてもうまくなじんでいる感じがするんですけど、
それって、どうやってなじませているんですか? - 高橋
- どうしてでしょうね・・・。
昔からある“ことわざ”だったり、
文化的背景を引っ張ってこられるものは
できるだけ入れるようにしていることが、
理由のひとつにあるかもしれないです。
- 毛呂
- “日本人だから”というのもあると思うんです。
たとえば夢を食べるバクは、今回、
「夢見の館」という所で、
ゆめみとして登場するんですけど、
「夢を食べる」といわれているのは
日本だけみたいなんです。 - 岩田
- へえ~、そうなんですか。
- 毛呂
- あと、タヌキは葉っぱで化かすものなので
お店を切り盛りしていますし、
そういった、古くから伝わってきた
どうぶつのイメージを、
この世界にも投影させています。 - 岩田
- すると、海外の人たちはどう思うんでしょうね?
「このどうぶつが、ここに出てくるのはおかしい」
とか言われたりしないんですか? - 高橋
- でも、カッパとかもいますしね。
- 京極
- そもそも妖怪なので(笑)。
- 高橋
- もはや、どうぶつですらないです。
それでも何も言われませんでしたから
「問題ないのかな」と思います。 - 一同
- (笑)
- 毛呂
- もともと船頭だったカッパのかっぺいは、
DS版(※6)のときはタクシーの運転手、
Wii版のときはバスの運転手に転職したんですけど、
今回は再び、船頭として復帰しました。
DS版=2005年11月に、ニンテンドーDS用ソフトとして発売された『おいでよ どうぶつの森』のこと。シリーズ4作目で、はじめての携帯ゲーム機で発売された。
- 高橋
- 今回、新しいどうぶつがたくさん登場しますが、
過去作に登場したどうぶつたちで設定が復活しているキャラもいます。
たとえば、ジョニーがまた水兵に戻ったりとか。 - 京極
- 『どうぶつの森』は
DS版ではじめて遊ばれた方も多いと思いますので、
そういう方にとっては新鮮かもしれませんね。 - 岩田
- 人によって、新しく見えたり、
懐かしく見えたりする、ということですね。 - 京極
- そうですね。
- 岩田
- このゲームは、物量で押しているところもあって、
いろんなどうぶつを増やす一方、
来る日も来る日も、
家具をつくり続けたわけですよね。 - 高橋
- はい。(力をこめて)本当に今回は、
新しい家具をたくさん、つくり続けました。 - 毛呂
- まるで家具職人のように(笑)。
- 岩田
- しかも今回は3Dですしね。
- 高橋
- そうなんです。
ライティングを意識して陰影を強調したり、
平面的ではなく立体的な表現をもって
しっかりつくらないといけませんでした。 - 岩田
- しっかりつくらないと
アラが見えるんですよね。 - 高橋
- そうなんです。
- 岩田
- なので、今回は終わりがない仕事、
みたいな感じになりませんでしたか? - 高橋
- (しみじみと)ああ、途中、そうでした。
- 岩田
- やっぱりねぇ(笑)。
- 高橋
- でも、本当に大変だったんですけど、
実際にゲームの中に組み込まれたときに、
「たくさんつくってきて、よかったなぁ」と、
心から思いました。
ものすごくバラエティに富んだ、
自分好みの部屋がつくれるようになりましたから。 - 岩田
- ちなみに今回、家具は
何種類つくると決めていたんですか? - 高橋
- 「前作の1.5倍くらい」というのが
まず最初のお題としてありました。 - 岩田
- あの・・・1.5倍くらいって、
かんたんに言いますけど、
そもそも、元の分母が
めちゃくちゃ多いですよね(笑)。
- 京極
- はい(笑)。
- 岩田
- もう、修行するようにつくり続けないと、
そんなにたくさんつくれないですよね? - 高橋
- まあ、でも、「100個増やしました」
くらいだと、やっぱり感覚として・・・。 - 岩田
- 増えた感じがしないんですね。
- 高橋
- そうなんです。
- 岩田
- でも「1.5倍の数を、ただつくればいい」
というわけではなく、
「部屋に飾りたくなるような家具」
をつくる必要があるわけですよね。 - 京極
- そうです。
ですからデザイナーさんだけじゃなく、
チーム全体で考えて、
“ネタ出し掲示板”を用意して、
職種の垣根を越えて、
みんなでアイデアを出し合うようにしていました。 - 岩田
- その結果、前作比1.5倍の家具ができて、
さらに「マイデザイン」(※7)によって、
家具を好みにカスタマイズできるんですね。
マイデザインが、今回の家具の種類とかけ算になって、
本当に表現が豊かになりますね。
「マイデザイン」=『どうぶつの森』の中の自分でデザインをつくることができる機能の名称。自分でつくった「マイデザイン」は洋服や家具など、さまざまなところに使用できる。
- 高橋
- そうなんです。
いままでのように服や帽子などとして身に着ける以外に、
アルパカのリサイクルショップでは
オリジナルの模様を使った家具にリメイクすることもできるんです。 - 岩田
- だから、いろんな部屋を見るたびに、
「こんなこともできるの?」と、
毎回まったく違うものを
見ている印象になるんですね。 - 毛呂
- そうです。
それに、マイデザインが得意でない人も、
気軽に好みの色に変えられる仕組みも
入っていますので、本当に、
自分らしい部屋づくりができて、
その組み合わせはたぶん、無限大だと思います。 - 京極
- ですから開発中も、
「あの人が、こんな家をつくってる!」みたいに
けっこう話題になりました。
「あの人がそうくるなら、わたしは・・・」
みたいな感じで(笑)。 - 毛呂
- みんなで競い合っていましたよね(笑)。
- 京極
- チーム内だけで、あれだけ盛り上がりましたから、
発売後、お客さんがつくった個性的な家を
「もっともっと見られるようになる」と思うと楽しみで(笑)。
いまからワクワクしています。