『とびだせ どうぶつの森』
4. 通信で家や村を見てもらう
- 岩田
- 今回、通信機能を使って、
それぞれがつくった個性的な家を、
お互い見せ合うことができる仕組みが
入っているんですよね。 - 京極
- はい。
「ハッピーホーム展示場」という住宅展示場があって、
すれちがい通信ですれちがった人の家を
モデルハウスとして、見学できるようになります。
ただ、この仕組みを考えるにあたって、
「お客さんの手間を、あまりかけずに実現したい」
と思っていたんです。 - 岩田
- つまり「ハッピーホーム展示場」のために、
「お客さんは何の準備もいらないようにしたい」
ということですね。 - 京極
- はい。最終的に、すれちがい通信を
オンにさえしてもらえれば、OKになっています。 - 岩田
- その結果、電車で乗り合わせた人や、
街に出かけて、たまたますれちがった人の家が、
自分の村の「ハッピーホーム展示場」に並んでいき、
「へえ~、こんなセンスの人がいるんだ」とか、
「こんな部屋のまとめかたがあるんだ」みたいに、
いろいろな刺激が生まれるわけですね。 - 毛呂
- そうです。
その結果、「自分の部屋をもっとよくしよう」
という思いにつながってもらえたら、と思っています。 - 京極
- あと、先ほどの話に出た
バクの「ゆめみ」がやっている「夢見の館」も
通信を使った新しい仕組みのひとつなんです。 - 岩田
- 「夢見の館」は、
どのようにして生まれたんですか? - 京極
- ずいぶん前になるんですけど、
Wiiの発表会(※8)のとき、岩田さんが
WiiConnect24(※9)の説明をされていて、
そのとき、ひとつの例として
「たとえば寝ている間に、友達が遊びに来て・・・」
みたいな紹介をされたことがありましたよね。
Wiiの発表会=日本時間2006年5月10日、「E3 2006」の直前に行われたメディアブリーフィングでのスピーチのこと。
WiiConnect24=インターネットに常時接続し、最新情報やメッセージなどを自動的に取得するWiiのネットワークサービス。
- 岩田
- はい、ありましたね。
WiiConnect24をつくることになって、
最初に「やってみたい」と思ったことでしたから。 - 京極
- それをわたしは
「Wii版でなんとか実現させたい」と思っていたんです。
でも、それが結局、いろんな制約の中で実現できなくて、
ずっと心残りだったんです。
今回ようやく実現することができて、
自分の村のデータをあらかじめ
サーバーにアップロードしておくことで、
自分が寝ている間でも誰かに気軽に遊びに来てもらえます。
それは「夢の世界の話」という設定にして、
その夢を見たり提供したりする場所として
「夢見の館」をつくりました。 - 岩田
- 「夢の世界の話」だから、
おでかけした村でどんなことをしても、
元の世界の持ち主のところに跡は残らないんですよね。 - 毛呂
- そうなんです。
だから自分の村を誰かに見られて
むちゃくちゃにされてしまったとしても、
それは夢なので、
現実の自分の村まで変えられてしまうことはないんです。
- 京極
- せっかく安全に村を見ていただけるので、
それならわざわざフレンドコード(※10)を
交換しなくても、村を開放して、
「もっと気軽に村を見てもらえるといいな」
ということで、「夢見の館」では
まったく知らない人の村に行ったり、
逆に来てもらえるようにしました。
フレンドコード=WiiやニンテンドーDS、ニンテンドー3DSなどで、インターネットに接続するときに、割り振られるIDのこと。お互いにフレンドコードを登録すると、離れた場所にいる友達とインターネットを通じて通信プレイが楽しめる。
- 毛呂
- それと、訪れた村で、
マイデザインを配布していたら、
気に入ったものをセイイチを通じて
もらうこともできます。 - 京極
- だからもし、自分の周りに
『どうぶつの森』を遊んでいる
友達がいなくても、通信を使って、
「おでかけを気軽に楽しんでほしい」と思っています。
あと、「夢見の館」のほかに、
かっぺいが、舟で運んでくれる「島」もあります。
ここではランダムマッチングで、
いろんなミニゲームが遊べるんです。 - 岩田
- ランダムマッチングというのは、
知らない人と、ランダムな組み合わせで
一緒に遊べる、ということなんですよね。 - 京極
- そうです。
もちろん、知らない人とだけじゃなくて、
友達と誘い合ったり、
ひとりでもツアーに行けるんですけど、
そのような相手がいない人でも
気軽に遊んでいただけるようになりました。
それに、場所は自分の村ではなく
少し遠い「島」ですので・・・。 - 岩田
- こちらも、自分の村が荒らされる心配がないわけですね。
- 京極
- そうです。
「通信を使って、安心、安全に遊んでほしい」
ということを、ずっと考えていましたので、
今回は「それが乗り越えられた」と思っています。 - 岩田
- 親しい友達とも、これまでのように
お互いの村を行き来できるんですよね。 - 京極
- はい。さらに今回は、
フレンドコードを登録したフレンド同士だけではなく、
このソフトの中で「ベストフレンド」を登録して、
ベストフレンド同士でのみできる通信要素も追加しました。 - 岩田
- 「ベストフレンド」というのは、
どういうものなんですか? - 京極
- たとえば、家族と一緒に1本のソフトで遊ぶ場合、
これまでどおり、4人まで遊べるんですが、
村長はひとりだけで、ほかの3人は住人になるんです。 - 毛呂
- ひとつの村に何人も村長がいると、
まとまる話もまとまりませんので(笑)。 - 岩田
- 確かにそうでしょうね。
- 京極
- 4人で遊んでいても、
フレンドコードは3DS本体で登録しているので、
共通のものになるんです。
すると、家族の誰かがフレンドの村におでかけした時に、
遊びに行った先ではまったく面識がない人が待っている可能性もあって
実際そうなると「気まずいだろう」という心配があったんです。 - 岩田
- 会ったこともない、友達のお母さんが
いきなり自分の村に遊びに来たら
ビックリするでしょうしね。 - 京極
- そこで今回は、4人のプレイヤーそれぞれが、
フレンドの中でも自分と直接親しい人を
「ベストフレンド」に登録することで、
ベストフレンド限定で遊びに来てもらえるようにもしました。
さらに、お互いがベストフレンド同士だと、
自宅などでアクセスポイントにつながっているときは、
相手の村におでかけしなくても、
チャットのような形でメッセージの交換が
できるようになっています。
- 毛呂
- これまでは、友達の村に
おでかけしようとすると、電話やメールを使って、
「これからそっちの村に行くけどいい?」
みたいに、確認をとる必要がありましたけど、
今回はゲームの中でそれができます。 - 京極
- しかも、自分のベストフレンド全員に、
一斉にメッセージを送ることもできますので、
たとえば学校や会社から帰ってきて
「みんな、いまから村の改札を開けるよ~」
みたいな伝達を送ったりすることもできるんです。 - 岩田
- へえ、それは便利ですね。
- 京極
- 開発の後半は、
そのメッセージ機能を使って、チーム内でも
いろんな情報をやりとりしていたんですけど、
いちばん盛り上がったのは、カブ(※11)価の情報でした。
カブ=毎週日曜日の朝に買うことができる投資目的のアイテム。カブの買取り価格が購入した価格を上回れば、その差額が自分のポケットマネーとなる。
- 岩田
- カブリバから日曜日に購入できるカブの値段が、
みんな気になっていたんですか? - 京極
- そうなんです。そのあと、
「いまカブいくら?」とかやりとりしながら、
「うちは400ベル超えてるよ~」
というメッセージが入ると、
みんなで一斉にその村に殺到して
カブを買い取ってもらったりとか(笑)。 - 毛呂
- やっぱり、ネットにつながる環境にありながらも、
人の村におでかけするのが
ちょっと面倒に感じる人もいると思うんです。
でも、カブがキッカケでもいいので、
「その村に行ってみようかな?」ということが、
お客さんの間で起こるとうれしいですね。 - 岩田
- キッカケはカブだけじゃなくて、
「いまから釣り大会しようよ」でもいいんでしょうしね。 - 毛呂
- そうですね。くだもの交換会とか、
キッカケはたくさんあると思います。 - 岩田
- あ、そういえば、8月に放映した
「Nintendo Direct 2012.8.29」の中で、
わたしをモチーフにした顔出し看板がありましたよね。
映像を仕上げてもらってから気づいたんですけど。 - 毛呂
- はい。
- 岩田
- あれを見たとき、
「こんなこともできるのか!」って
すごく仰天したんですけど、
あれもおでかけのキッカケになりそうですね。 - 毛呂
- そうですね。
人それぞれに、思いどおりのデザインができますし。 - 京極
- それでお気に入りの看板があったら、
顔出しをして、記念写真を撮ると。 - 毛呂
- なので、タイトルにあるように、
それぞれが“とびだす”キッカケを見つけて
おでかけしてもらえると、うれしいです。