『ニンテンドー3DS』
7. 新しい『ニンテンドッグス』。
- 糸井
- この3Dへの流れっていうのは、
これからもふつうに続くんですかね?
その、ぜんぶが3Dになっていくのかしら? - 岩田
- ぜんぶそうなるかどうかは疑問です。
娯楽屋さんの立場から言わせてもらうと、
私たちは人に驚いてもらうのが仕事ですから、
将来、飛び出すものを誰も驚かなくなってから、
あらゆるものを飛び出すようにするかどうかは
わからないです。 - 宮本
- いまも、ぜんぶが飛び出さなきゃダメだ、
というふうには思ってませんからね。
確信できていることでいえば、
いまのゲームの中には、
「飛び出してたほうが圧倒的にいい」
という場面がけっこうある、ということで。
だから、飛び出しているからおもしろい、
というわけじゃなくて・・・。 - 岩田
- 飛び出すことと、とても相性がいいものがある。
- 宮本
- そうそうそう(笑)。
- 糸井
- なるほど。
- 宮本
- だから、
「飛び出す機能ありにしますか、なしにしますか?」
って言われたら、
「飛び出すほうにしてください」と言う感じ。 - 糸井
- 娯楽屋さんとしての姿勢はよくわかりました。
じゃ、マリオ屋さんとしては、どうですか? - 宮本
- マリオ屋さんとしては(笑)。
『マリオ』としても、同じですね。
状況によっては、絶対に飛び出したほうがいい、
というときがある。
たとえば、ある景色の中で、マリオがこう、
むこう向きにぴょんぴょんぴょんっと
段を飛び降りて行くときの段差って、
平面で見てるとぜんぜんわからないんですよ。
- 岩田
- 二次元に投影したとき、
床が高いのか低いのか、
それとも奥行きがついているのか、
といったことは区別のつきようがないんです。 - 糸井
- ああ、なるほど。
- 宮本
- それが、飛び出して見えると、
手に取るようにわかりますから。 - 岩田
- だからあれですね。
「空中のブロックをたたく」みたいなことは
いままでよりずっと、
直感的にわかるようになるはずなんですよ。 - 宮本
- うん。
そういう、新しい遊びがいろいろできますよ。 - 糸井
- 飛び出すっていうのは、
見栄えだけの話じゃないんだね。 - 宮本
- そうですね。
立体パズルなんかもわかりやすいですよ。 - 岩田
- あと、質感がものすごく違って見えるんです。
それは、『ニンテンドッグス』(※22)を見てもらうと
すぐに実感できると思います。
ちょっと見てみますか? - 糸井
- あ、見たい、見たい。
『ニンテンドッグス』=『nintendogs + cats』。2005年4月に発売されたニンテンドーDS用ソフト『nintendogs』の続編として開発中のニンテンドー3DS用ソフト。
- 宮本
- まだ、つくってる最中なんですが・・・。
- 糸井
- はい、はい。
ああーー、なるほど、これは、たしかに。
- 宮本
- ちょっと驚きますよね。
- 糸井
- うん、質感が。
- 宮本
- やってるうちに慣れるかなと思ったら、
やっぱり、3Dボリュームをオフにすると、
すごく物足りないんですよ。 - 糸井
- わかる(笑)。
- 岩田
- 質感が変わると印象が変わるんですよね。
- 糸井
- また、これは、飛び出すだけじゃなくて、
前より全体の品質が上がってますね。 - 岩田
- あ、そうですね。
そのあたりは、担当の紺野さんから、ぜひ。 - 紺野
- はい。
まず、表現の面でいうと、
前作と大きく違うのは毛並みです。
実際に毛が生えているように仕上げてあります。
あとは、眼球の表現ですね。
じつは、前作では、目をテクスチャーで
表面的に見せていただけだったんですが、
3DS版では眼球がきちんとありますから、
目の動きや表情が圧倒的に違います。
- 糸井
- ああーー、そうですね。
キョロキョロ動く。 - 紺野
- アップになると、対象を目で追う様子が
さらによくわかると思います。
あと、今回、猫も登場するんですけど、
猫の瞳は、明るいところと暗いところで
きちんと変わるんです。 - 糸井
- あー、すごいですね。
- 紺野
- あとは、同じ犬種であっても、
スケールというか、プロポーションに変化がありますので、
遊ぶ人によって子犬にも個性が出ると思います。 - 糸井
- 実際に犬を飼っている人はうれしいですね。
絶対、自分の犬に近づけたくなるから。 - 紺野
- それは「すれちがい通信」(※23)でも
活きてくる要素なんですよ。
今回の散歩モードはMiiが子犬を連れて、
一緒に散歩するんです。
「すれちがい通信」=電源を入れたままのDSを持ち歩くことで、すれちがった人とデータのやり取りができる通信システムのこと。
- 糸井
- あーー、それはうれしいね。
- 紺野
- で、今回の『ニンテンドッグス』は
「すれちがい通信」で誰かのデータを交換したときは
散歩モードのときに、その人のMiiと子犬が散歩中に登場して
出会うことになるんです。
そして会話したりプレゼントをもらったりと。 - 糸井
- たぶん、宮本さんも経験あると思うけど、
犬を連れていると、みんなまず犬を見るんですよね。
だから、こう、犬と散歩してると、道行く人が、
「あ、ブイヨン(糸井さんの愛犬の名前)」
って言うんですよ(笑)。 - 岩田
- 順序がそっちなんですか(笑)。
- 糸井
- そう。
- 宮本
- うちも、ぼく個人のことよりも犬のほうが
近所で圧倒的に知られている。 - 岩田
- へぇー(笑)。
- 糸井
- ゲームの中でもそうなるんだね。
- 宮本
- だから、犬を飼っている人どうしで
データをやり取りすると
妙にリアルなことになると思うんですよ。 - 岩田
- あと、ニンテンドー3DSでは
「すれちがい通信」そのものを
大きく進化させようとしているんです。 - 紺野
- はい。前作の『ニンテンドッグス』は、
DSの「すれちがい通信」というのを
はじめて搭載したソフトなんですけど、
新作ではその通信機能がさらに
うれしい機能に進化しています。
簡単にいうと、「すれちがい通信」というものを
ニンテンドー3DSの標準機能にしたんです。 - 糸井
- ・・・うん?
- 岩田
- 要するに、ソフトをセットしていなくても、
「すれちがい通信」が成立するようにしたんです。
というのは、これまでの「すれちがい通信」は、
特定のソフトを遊んでる人どうしが
物理的に近づかないと成立しませんでしたから、
「すれちがい通信」を多くの人に経験してもらうには
同じゲームを遊んでいる人が
たくさんいるという状況が必要だったわけです。
そうすると、発売直後はまだいいにしても、
時間が空くと、どんどん、すれちがいが起きにくくなるんですね。 - 糸井
- そうですね。
- 岩田
- そこで、
「昔、そのゲームをやってたけど、
最近、ちょっとほかのゲームを遊んでるんです」
っていう人とも、
すれちがいが起きるようにしたかったんです。
そうすると、そのときプレイしている人が
うれしいのはもちろん、
ちょっとお休みしている人にとっても、
再開するきっかけになるじゃないですか。 - 糸井
- ああー、はい、はい。
- 紺野
- そこで、今回、特定のソフトの中ではなくて、
ニンテンドー3DS本体のシステムの中に
「すれちがい通信」ができるような
仕組みを入れてしまったんですよ。
ですから、たとえば、『ニンテンドッグス』や
『どうぶつの森』や、『ポケモン』といった
ゲームを遊ぶとき、最初の簡単な設定で、
本体の中にすれちがい通信をセットしておけば、
そのあと、ソフトがささってなくても、
「すれちがい通信」が起きるようにしたんです。
つまり、ニンテンドー3DSを持ち歩いてるだけで、
5個、6個、7個といろんなゲームのすれちがいデータが、
勝手にどんどん交換できるんです。 - 糸井
- じゃあ、自分がプレイしたゲームごとの、
すれちがいの情報が本体に入っていて、
誰かとすれちがうごとに、
そのいくつものゲームのすれちがい情報が
ひとりでに、やり取りされるってこと? - 岩田
- そうです。
- 糸井
- ほんとですか。
- 紺野
- たとえば、新しい『ニンテンドッグス』を
1カ月ぐらい遊んでいなかったとします。
でも、すれちがい通信したデータは
ニンテンドー3DS本体に溜まっています。
ですから、その人が、久しぶりに
『ニンテンドッグス』で遊んでみたら、
すれちがいしたMiiと子犬がやってきていて、
しかもプレゼントをもらえるかも、
みたいなことが、起こるわけです。 - 糸井
- うわー、そうですか。
なんていうんだろう、
単なるリアリズムじゃなくって、
ちょっとファンタジーみたいなエッセンスが
微妙にプラスされますね。
- 岩田
- そうそう、驚きと喜びが増すんですよ。
- 糸井
- うーーん、そのへんのさじ加減はさすがだなぁ。