『ニンテンドー3DS』
発売前に宮本さんに、訊いておきたいこと。
1. ニンテンドー3DSの内蔵ソフト
- 岩田
- 今日は、ニンテンドー3DSの発売を前に、
宮本さんにいくつか訊きたいことがありまして。 - 宮本
- はい、なんでしょう。
- 岩田
- ひとつは、宮本さんが手がけている
『スティールダイバー』(※1)というソフトについて。 - 宮本
- はい。
『スティールダイバー』=潜水艦を題材に、横スクロール・潜望鏡アクション・戦略シミュレーションと、3つのゲームモードで遊べるアクションゲーム。
- 岩田
- これは、「潜水艦をゆっくり操作する」という、
まぁ、いってみれば、とっても地味なソフトで。 - 宮本
- そうですね(笑)。
- 岩田
- どうして、宮本さんがいまこれを
ニンテンドー3DS用ソフトとして
仕上げようと思ったのか、というのがひとつ。
もうひとつは、NINTENDO64用のソフト、
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(※2)と
『スターフォックス64』(※3)を、
なぜいま3DS用にリメイクしようと思ったのか。 - 宮本
- はい。
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』=1998年11月に、NINTENDO64用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。新たにニンテンドー3DS用ソフトとして発売が予定されている。
『スターフォックス64』=1997年4月に、NINTENDO64用ソフトとして発売された3Dシューティングゲーム。新たにニンテンドー3DS用ソフトとして発売が予定されている。
- 岩田
- そして、最後が、
ニンテンドー3DSの内蔵ソフトに関して。
今回、ニンテンドー3DS本体に
たくさんの内蔵ソフトを入れたじゃないですか。
どういう考えでこれほど多くの内蔵ソフトを
入れることになったのかというのも、
一度、しっかり訊いておきたくて。 - 宮本
- わかりました。
どこからいきましょう? - 岩田
- そうですね、じゃあ、やっぱり、
発売が近いものからいきましょうか。 - 宮本
- じゃ、内蔵ソフトから。
- 岩田
- はい。今回のニンテンドー3DSには、
『すれちがいMii広場』とか、
たくさんの内蔵ソフトが入ってますよね。
つまり、ニンテンドー3DSというハード本体で
ずいぶんいろいろ遊べてしまう。 - 宮本
- そうですね。
- 岩田
- これまでの任天堂の歴史でいうと、
山内(溥)さんが、ずいぶん前に
「ハードというのはどうしても遊びたい『ソフト』を遊ぶために
しかたなく買ってもらう箱なんだ」と
ずばり、おっしゃったことがありまして(笑)。 - 宮本
- ありましたねぇ(笑)。
- 岩田
- まぁ、ちょっと極端な表現でしたが、
当時のビジネスモデルを表すときには
とてもわかりやすい説明でした。 - 宮本
- はい。
- 岩田
- そういう時代を経て、ニンテンドーDSが出たとき、
宮本さんが任天堂ハードにはじめて
『ピクトチャット』(※4)というソフトを内蔵させました。
続くWiiにもたくさんの本体機能がつき、
ニンテンドーDSiにはカメラ、サウンドなどのソフトも加わりました。
そして今回のニンテンドー3DSでは、
よりたくさんのソフトが内蔵されるという
仕様になったわけですけど、
宮本さんは、内蔵ソフトを充実させるにあたって、
どんなことを考えていたんでしょうか。
『ピクトチャット』=ニンテンドーDSの内蔵ソフト。最大16台のDS間で、文字や手描きの絵を送受信できる。
- 宮本
- そうですね。まず、
答えはじめる前にお断りしておくことですが、
今回、ニンテンドー3DSに
内蔵されているソフトの半分以上は、
ぼくがいちから企画したわけではなく、
社内のあちこちでいろんな人たちが
提案や研究も含めて取り組んできたことが
うまくかたちになったものなんです。 - 岩田
- あ、そうでしたね。
たとえば、カメラを通した現実の風景に
さまざまなオブジェクトが現れて
ゲームと現実の映像がミックスする『ARゲームズ』の要素技術は、
もともとは情報開発本部のメンバーが研究していたものだったり・・・。 - 宮本
- そう、最初はもう、ハードも決めずに
自由研究のようにつくっていたもので(笑)。 - 岩田
- それを見て、宮本さんは
最初から「将来、つかえるかも」と思っていたんですか? - 宮本
- いえいえ、もう、そのころは、
「こんなもん、つかえへんよ」と(笑)。 - 岩田
- (笑)
- 宮本
- 「流行りにのせられてたらあかんよ」
みたいなことを言ってたんですけども。 - 岩田
- ははははは。
確かに、宮本さんは、流行ものには厳しいですからね。 - 宮本
- けど、ニンテンドー3DSの基本仕様が
かたまってくるに従って、
そういう、あちこちで研究していたものが、
どんどんいいかたちではまってくるようになって。 - 岩田
- ほんとに、そうでしたね。
- 宮本
- とくに「3D」っていう方向性が
定まってからは早かったですね。
「せっかくカメラがついてるんだから3D写真も」
というふうにつぎつぎに提案が出てきて。
最初は、どうかな、と思うような企画でも、
実際に試作品ができてくると、
みんな説得されてしまうんですよ。 - 岩田
- そうでしたね。
3D写真も、実際に撮って、その場で見ると、
すごくうれしくて。
- 宮本
- そうなんですよ。
- 岩田
- 3D写真そのものは過去にあったかもしれませんけど、
それがこれほど手軽に遊びとしてたのしめて、
しかも、たくさんの人の手に一気に渡るというのは
過去になかったことですからね。 - 宮本
- わざわざ特殊なカメラを買ったり、
特別なプリントをしたりっていうんじゃなく、
撮ってすぐにそこで見て驚けるっていうのが
遊びとして面白いんですよね。 - 岩田
- そうですね。
単純に、ニンテンドー3DSを
3D写真のビューアーのようにつかうだけでも
かなりたのしめますからね。 - 宮本
- その面だけを切りとれば、
手軽な3Dフォトフレームとして
考えることもできるんですよね。
そういう意味でも、やっぱり、いろんな遊びが
ソフトとして切り離されるんじゃなく、
ニンテンドー3DS本体に内蔵されて、
買った人みんなが遊べるほうがいいと思ったんです。
それは、『ARゲームズ』でも『顔シューティング』でも
『ニンテンドー3DSサウンド』でも、
同じような気持ちで入れました。 - 岩田
- なるほど。
- 宮本
- で、今回のニンテンドー3DSの内蔵ソフトのなかで、
いちばん力を入れたのは、なんといってもMiiです。 - 岩田
- はい。