『ニンテンドー3DS』
発売前に宮本さんに、訊いておきたいこと。
5. これは絶対3DSのほうがいい
- 岩田
- 2004年のE3で、
『スティールダイバー』の原型になったソフトを
ニンテンドーDSのデモ用ソフトとして
お披露目したとき、じつはひそかに人気があって、
「面白かった」って言ってくださった人が
けっこういらっしゃったという意味で、
その時点で手応えはあったんですよね。 - 宮本
- そうなんですよ。
ですから、具体的には、あれがはじまりですね。 - 岩田
- ただ、あの潜水艦のゲームは
2004年のE3で見せるために急に出てきた話ではなくて、
宮本さんにとっては、ゲームづくりの黎明期の時代から
やってみたかったこと。 - 宮本
- うん、そうですね。
- 岩田
- 長い間、あたためていたもののひとつだったんですか?
- 宮本
- うーん、あたたまってはいなかったですけど(笑)。
ずーっと、こう、引っかかっていたもの。 - 岩田
- ああ(笑)。
- 宮本
- あの、『鉄騎』(※11)っていうゲームが出たでしょ?
専用のものすごいコントローラがセットで
ほんとうに巨大なロボットを動かすような。 - 岩田
- はいはい。
『鉄騎』=2002年9月にカプコンから発売された、戦闘用二足歩行ロボットの操縦を再現するシミュレーションゲーム。
- 宮本
- あれが出たとき、悔しかったんですよ。
- 岩田
- ああー。
- 宮本
- 何か、大きなものを、シミュレーターとして動かす。
やりたかったんですけど、先を越された、という感じで。 - 岩田
- 宮本さんのなかにそこまではっきりした動機がありながらも、
これまで、なぜ、かたちにならなかったんでしょう? - 宮本
- うーん、いくつか難関があるんですけど、
たとえば、大きな潜水艦を動かしたいなと思ったときに、
インターフェイスがないんですよ。
アクションゲーム的にコントロールするならいいんですけど、
フライトシミュレーションゲームのように操作するとなると、
やっぱり、たくさんの計器を見ながら、
それぞれのものを調整する、というふうにやりたい。
- 岩田
- あーー。
- 宮本
- 十字ボタンとABボタンだけで
カーソルを動かして・・・というふうにやっていくと、
ちょっと臨場感に欠けるんですよ。 - 岩田
- シミュレーターとしては。
- 宮本
- そうなんです。
あとは、ディテールになりますけど、
そういう大きなものを動かすとき、
運転席に欠かせない要素として
「スロットル」というものがあるんですね。
この「スロットル」がね、ボタン操作だけでは
どうにも代用がきかないんです。
というのは、スロットルって、ふつう、
ある場所にこう動かしたら・・・。 - 岩田
- ああ、そこにとどまっている。
- 宮本
- そうなんです。
ところが、コントローラのボタンというのは、
ボタンを押している間は効果があるけど、
はなしたらもとに戻る、というのがふつうなんです。 - 岩田
- なるほど(笑)。
- 宮本
- スロットルは、そこに止まっていてほしいんです。
で、いったん入れたスロットルを忘れてしまって、
「うわぁ、スロットル戻すの忘れてた!」
というのが、スロットルなのでね。 - 岩田
- (笑)
- 宮本
- そして、ニンテンドーDSに
タッチスクリーンがつきましたよね。
すると、そこにたくさん計器を置けるわけですよ。 - 岩田
- スロットルも置けますね。
- 宮本
- そう、スロットルも、
タッチスクリーンのなかに置いておけば、
タッチして上げ下げできる。
たくさんの計器や装置を並べておいて
サウンドミキサーのように
操作することができるんですよ。 - 岩田
- それで、ニンテンドーDSの登場とともに、
潜水艦のゲームができたんですね。 - 宮本
- そうですね。
潜水艦に限らず、ロボットやいろんな専用操作の
インターフェイスにつかえますよ。 - 岩田
- でも、どうしてそれは、ニンテンドーDSのソフトとして
日の目を見なかったんでしょう?
E3でお披露目して、ある程度の手応えもあったのに。 - 宮本
- うーん、なんでしょうね、
ぼくがほかのソフトで手一杯になってしまった
というのはあると思うんですけど・・・。 - 岩田
- でも、それをいったら、
宮本さんはずっと忙しいわけで(笑)。
違う言い方をすると、なぜ、ニンテンドー3DSが出る
このタイミングで日の目を見ることになったんでしょう?
- 宮本
- あの、いったん、プロジェクトが止まって、
ニンテンドーDSの発売から2年ぐらい経ったとき、
あるチームの手が空いたので、
DS用のソフトとして開発を再開したんですよ。
そして、それをつくっている最中に、
ちょうど、ニンテンドー3DSの仕様がかたまったんです。
で、つくりながら、
「あ、これは絶対3DSのほうがいい」って思ったんです。
というのは、基本的に横スクロールで、
潜水艦が、水槽のような海底を進んでいくゲームなんです。
これは、ワイド画面で奥行きが出たらすごくきれいやろうなと。 - 岩田
- ああ、それはそうですね。
- 宮本
- とくに、もともと地味なゲームですから(笑)、
この地味なゲームをどうやってみんなに
伝えていけばいいかなと思ってたところに、
「あ、3Dになったら、すごく華が出るな」と。 - 岩田
- うん、うん。
- 宮本
- で、まず、ニンテンドー3DS用のソフトとして
どんなふうに見えるか試してみよう、っていうので、
つくりかけていたゲームを、部分的に、
グラフィックだけを3DS用に仕上げて、
入れ替えてみたんですね。 - 岩田
- はい。私も覚えてますけど、
一気に本格的になりましたよね。 - 宮本
- そうなんです。
やっぱり、浮き上がって見える、
凹んでる、奥行きがある、っていうので、
品質というか、魅力がぐっと増したんですね。
じゃあこれは、本格的に仕上げよう
ということになったんです。