『ニンテンドー3DS』
発売前に宮本さんに、訊いておきたいこと。
6. 潜水艦まわりのことは満喫できる
- 岩田
- 『スティールダイバー』は、
シミュレーターとしての要素のほかに、
戦略ゲームとしてのたのしみもありますよね。 - 宮本
- そうですね。
あの、昔のアーケードゲームには、
魚雷を撃つきれいなゲームがいくつかあったんですよ。
ナムコさんとかがつくってたんですけど、
エレメカ(※12)もののゲームで、
こっちから魚雷をシューーーーっと
狙って撃っていくようなものなんですけど。
やっぱり、潜水艦のゲームをつくる以上、
あの要素は欲しいなぁと思ってたんです。
エレメカ=エレクトロメカニカルマシン(Electromechanical Machine)の略。
- 岩田
- なるほど。
- 宮本
- それから、昔、ぼくはゲームボーイで
『レーダーミッション』(※13)という
対戦戦略ゲームをつくったことがあるんです。
『レーダーミッション』=1990年10月に、ゲームボーイ用ソフトとして発売。潜水艦での魚雷戦と、敵艦隊とのレーダー戦のふたつのタイプの海戦ゲームが収録されている。
- 岩田
- はい。
- 宮本
- これは、交互に大砲を撃ちながら戦略的に並べた船を
全滅させるという海戦ゲームを軸にしたゲームで、
ゲームボーイの通信ケーブルをつかって
誰かと対戦すると飽きずにずっとやってしまう、
というぐらい面白かったんですけども、
まぁ、地味だったということもあって、
不発に終わってしまったんですね。
それがちょっと心残りで。
もう一回、あれを、戦略性を高めて、
出してみたいなぁという気持ちがあったんです。
- 岩田
- つまり、これまで気になっていたいろんな要素が、
ニンテンドー3DSで出すと決めたとたんに
うまくひとつにまとまっていったということですね。 - 宮本
- そうなんです。
- 岩田
- 「ジャイロセンサー」(※14)も、まさにそうですね。
- 宮本
- ああ、そうですね(笑)。
「ジャイロセンサー」=物の角度や回転速度を検出し、姿勢制御などに利用される計測器のこと。ちなみにジャイロ(gyro)は「輪」や「回転」の意味。
- 岩田
- 宮本さんは、ハードがほとんど仕上がってから、
「出て行った船を呼び戻すようにして」
ぎりぎりで要素を追加することがしばしばあって(笑)。
その典型的な例がWiiリモコンのなかに
スピーカーを組み込むことだったりしたんですが、
今回のニンテンドー3DSでは、
ゲーム機の上下左右といった動きを感じ取る
「ジャイロセンサー」を入れるということでした。
それが、さっそくこのゲームに活きてますよね。 - 宮本
- そうですね(笑)。
潜望鏡をのぞくようにして、
ニンテンドー3DSをぐるっと回すと、
それに応じて映像もぐるっと回るという。
だから、ニンテンドー3DSをのぞきながら
回転するイスに座ってくるくる回ると、
潜望鏡がくるくる回る・・・。
ほんとは、ニンテンドー3DSの位置を固定して
自分がその周りを回ったほうが
それらしいんですけどね(笑)。 - 岩田
- はい(笑)。
- 宮本
- まぁ、そんなふうにして、
いろんなアイデアがうまくくっついていった。
企画がまとまるときって、そうですよね? - 岩田
- ほんとうに、そうです。
- 宮本
- いろんなものが、うまいぐあいに、
あれもつかえる、これもつかえるっていう感じで
どんどんうまくハマっていく。 - 岩田
- 一見離れているように感じられていたものが、
つぎつぎにくっついてくるという。 - 宮本
- そうなんです。
だから、このソフト1本あれば、
潜水艦まわりのことは、ほとんど満喫できる(笑)。 - 岩田
- そのなかでも、とくに宮本さんが遊んでほしいのは、
潜水艦という大きなものを操作する、
シミュレーターとしての部分ですか? - 宮本
- そうですね。
複雑な操作パネルを操作して、
大きな、重いものを、コントロールしていく。
自分で目標を設定するタイプの人には
もうとことん遊び込めると思いますね。 - 岩田
- レスポンスのいいアクションゲームにくらべると、
シミュレーター特有の難しさはあると思いますが、
それを乗り越えたところに、
たまらない面白さがあるということですね。
- 宮本
- そうですね。
まぁ、難しいとはいっても、
フライトシミュレーションゲームほどは
難しくないと思いますよ。
というのはやっぱり、飛行機は速いので(笑)。
だから、言ってみれば、潜水艦の操作っていうのは、
遅く動くフライトシミュレーションゲームなんですよ。
じつは、その構造というのは、
マリオの泳ぎの部分とかもそうなんですけどね。 - 岩田
- あ、そうですね。
- 宮本
- あと、戦艦を魚雷で撃つモードっていうのは、
単純に、射的遊びとして誰でもたのしいですから、
受け皿はかなり広いと思います。 - 岩田
- そこは、ほんとに誰でも遊べる感じがします。
- 宮本
- そうです。すぐに面白さがわかるし、
スコアを上げるたのしさもありますし。 - 岩田
- 間口が広くて、奥に行こうとすると、
どんどん行けるという。 - 宮本
- そうですね。
あの、ちょっと余談になりますけど、
スコアを上げたくなるのは、
難しいことにチャレンジするという
その人の精神によるものじゃないと思うんですよ。
そのゲームの中身が理解できると、
自然と、スコアが上がっていくんです。
- 岩田
- なるほど、なるほど。
- 宮本
- その典型的なものが『もっと脳』(※15)に入ってる
「細菌撲滅」のモードですね。
うちの奥さんなんか、もう、ぼくよりも
よっぽどコアな「細菌撲滅」プレイヤーですから。
あんなスコア、追いつけないですよ。
『もっと脳』=『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』。ニンテンドーDS用ソフトとして、2005年12月発売。脳をリラックスさせるためのパズルゲーム「細菌撲滅」が同時に収録されている。
- 岩田
- それは、つまり、宮本さんの奥さんが、
ハイスコアを目指したんじゃなくて、
ゲームが理解できたから、
上がっていった。 - 宮本
- そうだと思うんです。
『スティールダイバー』のなかにも、
とくにチャレンジするつもりはなくても、
「わかってきた」と思えると、
つい、いつまでも遊んでしまうような要素があります。