『いつの間に交換日記』
5. “思いもよらない使い方”を
- 岩田
- 実際にこうして
『いつの間に交換日記』が世の中に出て、
みなさんはどんなふうな手ごたえを感じていますか? - 竹之内
- 先ほども話に出たことですけど、
いろいろな立体表現ができたり、
複数の色ペンで書けたりするのも試していたんです。
でも、そうすると操作も複雑になって、
クリエイティブな人だけのソフトになってしまいますので、
使える機能は厳選して、
誰もがサッと書けて、すぐに送れるような
簡単に使えることをわたしも重視しました。
その結果、多くの人に使っていただけるものになったという
手ごたえを感じていますね。
- 近藤
- 僕が手ごたえを強く感じたのは、
デバッグのときなんです。
いろんなスタッフと日記のやりとりをしたのが
すごく楽しくて・・・。 - 岩田
- 仕事とは感じないくらいですか?(笑)
- 近藤
- はい(笑)。
みんなからどんな日記が送られてくるのか、
わくわくしながらデバッグの日々を
過ごしていましたので、
実際に世の中に出るのをすごく楽しみにしてました。
で、いざ配信がはじまると、
自分たちが思っていた以上の反響があって・・・。 - 岩田
- すごい量の日記が行き交ってますよね。
- 今井
- はい。サーバーの負荷を調べてわかったんですけど、
配信がはじまって4週間くらいの間に、
1000万通以上の量の日記と感想が
世界中で送られています。 - 近藤
- それは予想以上でしたね。
- 今井
- もともとこのソフトはじわじわと拡がっていって、
長いスパンで楽しんでもらえたらと思っていたんです。 - 岩田
- 予想とは違っていましたか。
- 今井
- はい。想像以上に、すごくたくさんの人たちが
フレンドを交換しているという話を聞いています。 - 岩田
- フレンドを増やすキッカケになるソフトになりましたよね。
- 今井
- もちろんこのソフトだけでなく、
『マリオカート7』(※8)などのソフトも
フレンドを増やすキッカケになっているんですけど、
『いつの間に交換日記』が
人と人とを結びつけるための一翼を担えたことに、
驚きと手ごたえを感じています。
『マリオカート7』=2011年12月に、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたアクションレースゲーム。
- 岩田
- 北井さんの手ごたえはどうですか?
- 北井
- じつはわたし、このソフトが配信されるタイミングで
3DSを買ったんです。
まわりの女性社員には結構そういう人が多くて、
それで、すぐに20人くらいの同じ部署の人と
フレンドコードを交換してもらって、
たくさんの日記が届くようになったんですけど、
自分がつくった「びんせん」がたくさん来たりすると、
(しみじみと)「ああ・・・つくってよかったぁ」
と思ったりしています(笑)。 - 岩田
- ちなみに「びんせん」は、
ゲームコイン(※9)と交換できますけど、
わたしは今回ほど「ゲームコインが足りない」と
思ったことはありません。
ゲームコイン=ニンテンドー3DSの歩数計機能で入手することのできるコイン。100歩で1枚のゲームコインが貯まり、対応するソフト内でアイテムなどと交換することができる。
- 北井
- 実際、ゲームコインを貯めるために、
社員の方たちがいつも3DSを持ち歩いてるのを見ると
うれしく感じたりしますし(笑)。 - 岩田
- では最後に、みなさんから
『いつの間に交換日記』で達成したい野望をお訊きして、
終わりたいと思います。 - 竹之内
- わたしは、“思いもよらない使い方”を
お客さんにしてほしいなと思っています。
これは最初から目標として決めていたことなんです。 - 岩田
- それは日記を交換するだけでなく、
いろんな使い方をしてほしいということですね。 - 竹之内
- そうです。
実際、外国の方なんですけど、
テーブルトークRPG(※10)で
遊んでる方もいらっしゃったんです。 - 岩田
- ああ・・・なるほど。
たしかにできますよね。
テーブルトークRPG=紙や鉛筆などを用いて、テーブルを囲んだ数人のメンバー同士の会話とあらかじめ決められたルールにしたがって冒険などを進めるパーティゲームの一種。
- 竹之内
- つくり手のわたしたちが
想像すらしなかったようなことを、
『いつの間に交換日記』を使って
いろいろ楽しんでいただきたいと思っています。 - 近藤
- わたしの野望ですが、
じつは開発の途中から考えていたことで、
まだ誰にも言ってないことなんですけど・・・。 - 岩田
- お、いいですね(笑)。
- 近藤
- このソフトの
UI(ユーザーインターフェイス)を考えるにあたって、
できるだけ大勢の人に使っていただけることを
第一優先にしてデザインしたんです。
でも、その「大勢」というのが、
具体的に何人かな? と考えまして、
よし・・・1億人だと。
- 岩田
- はい(笑)。
- 近藤
- それで付箋に「1億」と書いて、
自分が使っているモニターのところにプチッと貼りまして、
それを目標に、ずっとがんばってきました。
なので、このソフトをキッカケに、
フレンドをどんどん増やしていただいて、
最終的には世界で1億人の人々に
使ってもらえたらと思っています。 - 岩田
- ハードを1億台、売らなきゃいけませんね。
- 近藤
- そうなります(笑)。
- 岩田
- はい、がんばります(笑)。
- 近藤
- (頭を下げて)お願いします(笑)。
- 一同
- (笑)
- 北井
- わたしの野望ですが、さっき竹之内さんから、
“思いもよらない使い方”の話が出ましたけど、
わたしもそういうところをすごく楽しみにしています。
わたし自身も、「びんせん」に貼る写真を
たとえばARカード(※11)を使って撮ったりとか、
『わりと本格的 絵心教室』(※12)の作品を貼ってみたりとか、
「ほかにも何か貼れるものはないかな?」と
いろいろ試すのがすごく面白いんです。
- 岩田
- 『心霊カメラ』(※13)の怖い写真も貼れますしね。
ARカード=3DSに付属するカードのこと。ニンテンドー3DS本体で撮影すると、ARカードの上に立体のキャラクターが表示されたり、立体視を活かしたゲームで遊ぶことができる。
『わりと本格的 絵心教室』=『わりと本格的 絵心教室 前期・後期』。2009年11月に、ニンテンドーDSiウェアとして配信された絵画レッスンソフト。
『心霊カメラ』=『心霊カメラ ~憑いてる手帳~』。2012年1月12日に発売されたホラーゲーム。
- 北井
- ですね(笑)。そのように、
ほかのソフトやツールと連動して、
『交換日記』がいろんな方向に拡がって
盛り上がると面白いなあと思っています。 - 岩田
- 写真を貼れば、
絵心があるなしに関係なく楽しめますしね。 - 北井
- はい。
- 岩田
- では、最後に今井さん。
- 今井
- 野望と言えるほどのものはないのですが・・・、
長く使い続けてもらえたらなあと思っています。
子どもの頃の話なんですけど、
うちの母親が働いていたものですから、
学校から家に帰ってくると、
テーブルの上に手書きのメモが置いてありました。 - 岩田
- 「おやつは戸棚に入ってます」みたいな感じですね。
- 今井
- はい。そのくらい、日常的に
使っていただけるようになればうれしいですね。 - 岩田
- いまは携帯のメールでもできますけど、
手書きのほうがあったかいですからね。 - 今井
- そう思います。大切な人への想いや、自分の気持ちを
ここにつめこんでいただければ、というのは、
母子手帳をつくりたかった頃からずっと変わりませんでした。
ですから、家族同士でも使ってもらえたらと思います。 - 北井
- あの・・・いまの今井さんの話に
つながることなんですけど。 - 岩田
- はい。
- 北井
- わたし自身、3DSを買って、その勢いで
3DSと無線LANをもう1セット買って、
お正月に帰省するときに実家に持って帰ったんです。
それを家にセットして、
自分のフレンドコードも登録して、
「これに日記を送るから」と言って、
親に渡したんです。
ずっと離れて生活しているので・・・。 - 岩田
- メールでやりとりするのとは、また違いますよね。
- 北井
- ぜんぜん違います。
なんかうれしいんです、手書きだと。
というのも、字を見ただけで、
家族の誰が書いたのかがわかったりしますし。 - 岩田
- ああ、なるほど。
Miiは家族のうちのひとりであっても・・・。 - 北井
- 何人かで寄せ書きをしても、
ひと目で誰が書いた字なのかがわかりますので、
それも手書きのよさだと思います。 - 岩田
- よくわかりました。
というわけで、3年は長かったですけど、
みなさんに喜んでいただけるものができてよかったですね。 - 今井
- はい、本当に。
- 岩田
- このソフトで、いろいろ面白いことができそうですし、
お客さんからいろんな面白い活用法を見せてもらって、
つくり手たちも含めて、使ってるみなさんを
驚かせてもらえたらいいですね。 - 今井
- そうですね。それがとても楽しみです。
- 岩田
- みなさん、お疲れさまでした。
- 一同
- ありがとうございました。