『ポケモン立体図鑑BW』
3. 「バレバレでいい」
- 岩田
- 今回は
AR技術を使って、
現実世界のなかでポケモンの写真を撮ることができますが、
このソフトの最初の企画の段階から
ARを入れようということだったんですか?
- 小笠原
- いえ、そうではありませんでした。
最初はいくつもの選択肢があったんですけど、
最終的に石原さんの「ARを入れよう」という決断があって、
それから入るようになりました。 - 岩田
- どんなやりとりがあって、石原さんは、
「ARを入れよう」と決断したんですか? - 石原
- やはりポケモンというのは、
ある種“バーチャル”であると同時に、
“リアリティのある存在”でもありますので、
自分たちが生活する現実空間のなかに、
ポケモンがポコッと現れるという状況を
ぜひつくりたいという気持ちがあったんです。 - 岩田
- 今回は図鑑に登場するすべてのポケモンを
ARで楽しむことができますよね。 - 石原
- はい。もちろん、限られたポケモンを数匹選んで、
それだけをARで表示するようなこともできたんです。
でも、そうするのはどうしてもイヤだったんです。 - 岩田
- 人それぞれにお気に入りがいますからね。
- 石原
- ええ。そこでなんとか全部を出したいと。
- 岩田
- そうすると、これまでのARカードのようなものが、
ポケモンの数だけ必要ということになりますね。 - 石原
- はい。ですから、
たくさんの種類を読み分けて、正確に表示できるような
特別なコードが必要になったんです。 - 岩田
- そこで、今回の
「ポケモンARマーカー」が生まれたんですね。 - 折本
- そうです。
黒枠のなかに4×4のマスがあって、
白黒で塗り分けるようなコードにしました。
シンプルなデザインにしたのは、
このポケモンを出そうと思っても、
そこに違うポケモンが出てくるような誤認識を
避けたいと思ったからです。
- 石原
- すると、今度は
「すぐにバレてしまうのではないか?」
という心配が出てきました。 - 岩田
- デザインがシンプルだと、
かんたんに自作することもできますからね。 - 石原
- ただ、もちろんもっと複雑なデザインにしたり、
特殊な印刷をしたりする方法もあったんですが、
僕としては「バレバレでいい」と。 - 岩田
- ・・・わたしは、その、
「バレバレでいい」という思いきりが、
すごく面白いと思いました。 - 石原
- 僕としては、バレるよりむしろ、
自分で手描きで描いたものを、3DSで写したら、
ポケモンがポーンと飛び出してきた、という経験を
たくさんの人に味わってほしいと思ったんです。
- 折本
- ですから、今回の『ポケモン立体図鑑BW』が
配信されるようになってから、とても予想外に感じたのは、
もともと「ポケモンARマーカー」が全部解析されて
インターネットで公開されると思っていたんですが、
「人が解析した情報を使うのはよくないことだ」と、
気をつかわれるお客さんがいらしたことなんです。 - 岩田
- 「公式でないものが出回ったり、それを利用するのはよくない!」
と考える方が、お客さんのなかに少なからずいらっしゃったんですね。 - 折本
- そうなんです。
でも、「ポケモンARマーカー」に関しては、
もっとオープンに遊んでほしいと思っているんです。
だから「解析していいんですよ」と言いたいくらいで、
つまり・・・つくり手の立場からは「解析上等」なんですね(笑)。
そのようにアピールしておいたほうが、
みなさんがもっと気軽に遊べたのかなという気がしています。 - 石原
- それに、「ポケモンARマーカー」を解析しても、
「いつの間に通信」を使って、
ポケモンが自分の3DSに降ってこなければ、
そのポケモンは見えないわけですからね。 - 折本
- シルエットしか見えないんですね。
- 石原
- しかも、ポケモンが降ってきたとき、
「ポケモンARマーカー」もいっしょに持ってきてくれますので。 - 岩田
- はい。下画面に表示されますよね。
- 石原
- ですから、バレるという次元の話でもありませんし、
もともと「ポケモンARマーカー」がわかるようにしたのも、
それを描き写してほしいと思ったからなんです。
実は、僕はこういうのをつくりまして・・・
(黒い台紙を取り出して)
こんな感じでホワイトマーカーで塗ると・・・。
- 岩田
- え? そんなにラフに描いてもいいんですか?
- 石原
- そうです。岩田さん、
これを「ARファインダー」で写してみてください。 - 岩田
- はい・・・あ、来ました。
ビクティニ(※11)です。
ビクティニ=ビクティニの「ポケモンARマーカー」は、現在公開中のポケモン映画「ビクティニと黒き英雄 ゼクロム」「ビクティニと白き英雄 レシラム」鑑賞時に映画館で配布されるチラシで公開している。
- 石原
- ・・・という遊びが、
とてもかんたんにできるのが、すごく面白いと思うんです。 - 岩田
- きっちり四角に塗らなきゃいけないんじゃなくて、
このように大らかに描いてもOKというのがいいですね。 - 石原
- そうなんです。
ARの、このような認識能力の高さと
間違いのなさを見たときに、
「これはいい!」と僕は思って、
みんなに「落書きして遊ぼう」と言うようになったんです。 - 岩田
- 「自分で描いて遊んでほしい」というのが、
むしろ今回の狙いでもあるんですね。 - 石原
- いろんなサイズの紙に「ポケモンARマーカー」を描いて、
それをいくつも並べて、数匹のポケモンの写真を
同時に撮ったりとか、いろんな遊びをしてほしいんです。 - 竹内
- わたしには子どもがいるんですけど、
「手描きでもいいんだよ」と言ったら、
自分でどんどん手描きで描くようになったんです。
で、新しいポケモンが入ると、次々に・・・。 - 岩田
- 新しいポケモンが届いたら、下画面を見て、
自分で「ポケモンARマーカー」を描いているんですね。 - 竹内
- はい。それで、描いたらすぐに
「ARファインダー」に写して、
自分で好きなだけ、写真を撮っているんです。 - 岩田
- かつて『ポケモンスナップ』をつくった立場で言うと、
現実世界で好きなようにたくさん写真が撮れるのは、
ちょっとうらやましいくらいですね(笑)。 - 竹内
- はい、いっぱい撮っています(笑)。
- 石原
- しかも、新しい「ポケモンARマーカー」を写すと、
ソフトのなかにシールがたまるようになっているので、
そっちも集めたくなるんですよね。 - 竹内
- そうなんですよ。
- 岩田
- シールを集めると、どんなことが起こるんですか?
- 石原
- 図鑑の機能が徐々に強化されます。
たとえばARで、一度に表示されるポケモンが
12匹まで増えたりとか。 - 折本
- 最初は最大8匹までしか表示できないんです。
- 石原
- あと、ARで撮影したポケモンのスケールを
好きなように変えられる「スケール設定」という機能が
追加されたりします。 - 岩田
- まさに“成長する図鑑”ですね。
- 石原
- そうです。
毎日ポケモンが降ってきたり、
コピーし合ったり、シールを集めることで、
今回の図鑑は成長するんです。