『すれちがい通信中継所』
5. 「国ちがい通信」も?
- 岩田
- では「すれちがい通信中継所」を開始して、
みなさんの手ごたえをひとことずつお訊きしましょうか。
それでは左側の松岡さんから順番にお願いします。 - 松岡
- 僕はリリースした夜中に、
ひと気のないコンビニに行ったんです。
すると、緑のランプがポッとついたときには、
すごくホッとしました。
- 岩田
- ひと気のないコンビニに、ひとりで?(笑)
- 松岡
- はい。
それでも、緑のランプがついたので、
「ああ、ちゃんと来てるんだ」って(笑)。 - 岩田
- でも、自分でつくったんでしょう?(笑)
- 松岡
- ええ(笑)。
でもやっぱり感慨深かったです。 - 井上
- 僕の場合、母親が『どうぶつの森』に
すごくハマっていまして、買い物に行くときも、
つねに3DSを持ち歩いているような状態なんです。
- 岩田
- ありがたいですね。
- 井上
- それで、京都や東京へ旅行に行くと、
すれちがいがすごく多いのに、地元では・・・
母親が住んでいるのは地方都市なんですけど、
1日3人とか、よくても5人、みたいな感じで、
「もっとすれちがえないかなあ」と、
ずっと言っていたんです。
ところが、「すれちがい通信中継所」を
リリースしたあとに聞いてみると
「なんか増えた気がする」と言うので
帰省したときに、母親の3DSを見せてもらったら、
いつも聞いているよりもすれちがい人数がちょっと増えて、
「やっぱり効果があるんだ」と
自分でもビックリしました。 - 紺野
- あの、順番がかわりますけど
いいでしょうか? - 岩田
- はい、どうぞ(笑)。
- 紺野
- じつは、わたしの父もハマってるんです。
- 岩田
- 紺野さんのお父さんも
『どうぶつの森』にハマってるんですか? - 紺野
- そうなんです。
わたしがとくに説明したわけではないのですが、
父は自力で「すれちがい通信」の機能を発見して、
「ハッピーホーム展示場」の概念も自分で理解して、
「これはおもしろい!」と気がついた人なんです。
そこで、買い物に行くときには
いつも3DSを持ち歩くようになったようなんですが、
やっぱりなかなかすれちがえなかったみたいなんですね。
でも、今回の「中継所」のことを教えると、
すごく喜んでくれて、いまごろわたしの父親は、
毎日セブン-イレブンに通っていると思います(笑)。 - 一同
- (笑)
- 河原
- 僕の場合、このサービスがはじまって
ネットでいろんな声を見てみたんですけど、
「田舎だから助かった」とか、
「はじめてすれちがいできました」
というような声を聞くことができて、
すごくうれしかったです。
ちなみに、僕の地元は、井上さんよりも
もっと人口の少ない地方なんですけど、
リリースをした当日は
「さすがに中継所の利用は誰もないだろうな」
と思っていたんです。
- 岩田
- でも、あったんですよね?
- 河原
- そうです、あったんです。
先ほどはログの収集基盤として
fluentdを導入しているとお伝えしましたが、
そのほかに今回、分析用途で利用するために
Amazon Redshift(※31)というサービスも導入しています。
そのおかげでほとんどタイムラグなく
利用状況を深く見ることができているのですが、
当日、サービス開始の6時間後ぐらいにアクセス状況を見てみると、
40件もあって「あ、あった!」と(笑)。
そのときは本当にうれしかったですね。
Amazon Redshift=AWSが提供するクラウドサービスのひとつ。大規模なデータの分析を行うためのシステム。
- 山崎
- 僕は、リリースしてから
意外にもたくさんの反応があったことに驚いています。
岩田さんが最初に言ったように、
日本では、このサービスを実施することについて
事前に何もお知らせしなかったですし、
あまり注目されることもなく、ひっそりとはじまって、
毎日コツコツと続けていくものだと思っていまして、
ましてや今日のように、社長から訊かれるなんて
思ってもみませんでしたから(笑)。
- 岩田
- なぜこんなに反応をいただけたと思いましたか?
- 山崎
- やっぱりみなさん、
すれちがいをしたかったんだなと思いました。 - 岩田
- たくさんの方にご利用いただけて
「すれちがい通信中継所」をつくった甲斐が、
本当にありましたね(笑)。 - 山崎
- そうですね(笑)。
- 岩田
- では、紺野さん・・・
先ほど話したからもういいですか? - 紺野
- いえ、言わせてください。
- 岩田
- はい(笑)。
- 紺野
- わたしは自転車通勤をしているんですけど、
“言い出しっぺ”のひとりでもありますから、
サービスを開始したその夜に、
会社から自宅まで、その間にある
7件の「中継所」をチェックしてみたんです。
- 岩田
- さっそく“ハシゴ”をしたんですね(笑)。
- 紺野
- そうなんです(笑)。
その結果、7件中5件も
ちゃんとデータが入っていたのには驚きました。
何しろ3DSの本体更新の当日のことですから・・・。 - 岩田
- 本体更新をしていただかないと、
「中継所」をご利用いただけませんからね。 - 紺野
- なので、少し安心しました。
- 岩田
- さて、そのように日本では、
「すれちがい通信」のおもしろさが
どんどん拡がっている印象があるんですけど、
海外では、まだまだのところも多いわけですよね。 - 紺野
- そうですね。
なかには、ひとりも訪れていないアクセスポイントが、
ほんの少数ですけど、海外にはあったりしますから。 - 岩田
- そうすると、
「すれちがい通信」を楽しみにやってきたお客さんは、
自分のデータを預けるだけになってしまうわけで、
そういうことはなんとかなくしたい、
ということで、サービスを開始した日から
山崎さんともいろいろやりとりしているわけなんですけど。 - 山崎
- そうですね。
これからできることはいろいろあると思います。 - 井上
- たとえば、ある人のデータを
サーバー側で複製して、たくさんの人にあえて配る、
という方法も考えてみたんですけど、
むやみやたらに複製するとインフレが起こってしまって、
「すれちがい通信」の本来の価値が
損なわれてしまいかねないんですよね。 - 岩田
- そうですね。
これもたとえば、の話ですけど、
いまは、Aという「中継所」にアップされたデータは、
同じAの「中継所」に戻すようにしていますけど、
国中、あるいは世界中にある、バラバラの「中継所」を
ひとつの「中継所」として扱うことも
技術的には可能なんですよね。 - 山崎
- はい。
- 岩田
- そこで、「今日は日本全国を混ぜる日です」とか、
「今日は世界中を混ぜる日です」みたいに、
その日限定のイベントを行うことも、
やろうと思えばできるわけですね。
それらをわたしは「県ちがい通信」とか
「国ちがい通信」という名前で勝手に呼んでいますけど。 - 紺野
- そうですね。
「国ちがい通信」をやれば、
すれちがうことの少ないアメリカの地方の人と、
人口の多い東京の人が
すれちがうことも可能になります。 - 岩田
- でも、そういうことを日常的に行えば、
「すれちがい通信」の価値が
損なわれてしまいかねないわけですよね。 - 井上
- そうなんです。
僕は海外に3DSを持って行ったときに、
たまたまロンドンの方とすれちがいまして、
イギリスの方とすれちがったことに、
とても大きな価値を感じているんです。
ところが、「国ちがい通信」で、
イギリスの方がバンバンやってくるようになると、
その価値が半減するどころか
なくなってしまうんじゃないかと思うんです。 - 岩田
- ですから、どこまでやるのか、という話は、
すれちがいの量が増えさえすればいい
というものではありませんし、
すごくデリケートな要素を持っているのは
間違いないですね。
その意味では、いきなり「国ちがい通信」とかを
はじめるというのは、乱暴すぎるでしょうね。 - 山崎
- そうですね。
- 岩田
- ただ一方で、
せっかく「中継所」まで足を運んでいただいても、
空振りの人がいるのも、また事実なんですよね。
そういう空振りが起きないように、ぜひ改善したいですよね。
- 山崎
- はい。
ですから、なるべく「すれちがい通信」を
たくさんの人にご体験いただいて、その結果
「3DSを持ち歩くこと自体がおもしろい」
ということを、世界中の人たちに感じていただけるようにすることが
チーム共通のこれからの目標です。 - 岩田
- その観点からすると、いきなり「国ちがい通信」とかでなく、
すれちがいがあまり成立しない拠点同士を
ひとつのグループにまとめて、まずは、より多くの方に
すれちがい通信を体験していただけるようにする
というところからはじめるのかな、と思いますね。 - 山崎
- はい。
今回は、3DS本体を更新していただく必要がありましたけど、
これからは、サーバーの更新だけで
どんどんサービスを進化させる準備ができましたので、
今後をぜひ楽しみにしていただきたいです。 - 岩田
- ですから近い将来、
「すれちがい通信」を使っていただけている人が
「こんなに増えました」というご報告ができるように、
がんばりたいですね。 - 紺野
- はい。わたしもとても楽しみにしています。
次にニューヨークに行ったときに
「こんなにすれちがえました」
と、ご報告できることを(笑)。