『知らないままでは損をする「モノやお金のしくみ」DS』
3. 画面が黒っぽく見えた
- 岩田
- コンテンツがたくさん集まってきて、
ジャンル分けもして、
2択で問題を答えられるようにしたのに、
そのあとカンタンに進まなかったのはどうしてなんですか?
- 鈴木
- コンテンツの海に溺れてしまったんです。
ものすごい量で・・・。
- 岩田
- 溺れたんですか、次橋さん?
- 次橋
- 溺れました(笑)。
日経さんがたくさんのコンテンツをつくられて、
体系的に広くカバーされているんですけど、
どこから見たらいいのかわからないくらいになって。
- 高橋
- あんまり少ないと、物足りないですし、
多すぎても溺れてしまうんです。
- 鈴木
- しかも、慣れない開発ツールで苦労されていますので、
文章がはみ出していたり。 - 次橋
- ですから、文字を細かくチェックする必要もあって。
- 鈴木
- しかも画面を見たら、黒いんです。
- 岩田
- 黒い?
- 鈴木
- 漢字ばっかりでしたから(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- なるほど(笑)。
ひらがなだと余白があって白く見えるけど。
- 鈴木
- 漢字がやたら多いので
画面が黒っぽく見えたんです。
だから、2問やっただけでも
イヤになってしまうんです。
- 岩田
- それだと拷問になるんですね。
- 次橋
- 悪い意味で言うんじゃないんですけど、
もともと新聞記事というのは
小さいスペースにできるだけ情報を詰め込んで、
漢字で書けるところはできるだけ漢字で書くというのが
文化だと思うんです。
でもその結果、文章が難しく見えてしまうんです。
- 岩田
- まあ、新聞は紙面に限りがありますので、
仕方ないことなんでしょうね。 - 高橋
- 実際、日経さんに最初に会ったとき
「難しいことを難しく書くのが得意なんです」と
いうような意味のことをおっしゃってたくらいですから(笑)。
- 一同
- (笑)
- 次橋
- でも、DSでも同じように漢字ばかりにしてしまうと、
読むのが苦痛になってしまうんです。
そこで、あえて文字を大きくして、
1画面に14文字×4行しか入らないようにして、
日経さんにもその少ない文字数でも読みやすくなるように、
コンテンツを書いていただくお願いをしました。
- 高橋
- さらに、写真が入りますから、
もっと狭くなります、ということもお伝えして。 - 次橋
- ところが、いただいた原稿を見ると
「減らす」が「削減」になっていたりするんです。 - 岩田
- 日経さんとしては、1文字でも少なくするために
「削減」と書かれるんでしょうね。 - 次橋
- でも、そこは「減らす」と書いてほしいと。
やっぱり、読みやすくて
しかも短く書いてほしかったんです。
そんな無理なお願いをしていましたので
日経さんはだいぶ苦労されたと思います。
- 北原
- 最初、日経さんからいただいたコンテンツは
表計算ソフトにまとめて書かれていたんです。
それだと、全体の構成は見渡せて
前後関係もわかりやすかったのですが、
一方、なにが問題なのかがわかりづらかったので、
DSの実機で見ていただくようにしました。
- 岩田
- 手元で原稿を確認できる環境をつくったんですね。
- 北原
- DSでは1画面の短い文章でしか読めないので、
実際に実機で確認していただいたんです。
- 鈴木
- たとえば次のページをめくったら
前のページのことは覚えていない、
といったこともDSで実感していただきました。
- 岩田
- 2択方式のほかにも解き方を用意したんですよね。
- 鈴木
- そこは主に北原さんが
ネタをいろいろ出してつくってくれました。 - 北原
- 「感覚で解く」というモードがあって、
5種類の解き方を用意することにしました。
まず「物差し」をつくって、
正確な数字を当てるのではなく、
だいたいの感じで答えても
正解になるような仕組みにしました。
- 高橋
- たとえば、ある数字を答える質問があって
仮に答えが「967」だとしても
物差しの「1000」の目盛りをタッチすると
正解になるんです。
- 北原
- その「物差し」の手ごたえがよかったので、
「円グラフ」の比率を自由に動かせるようにして、
割合が何パーセントかを答えるようにしたり、
「桁数」を当てるようなものもつくりました。
- 高橋
- 桁数を当てるというのは
まず最初に電卓のような画面に
「15」とかの数字が表示されていて
10倍と10分の1のボタンを押しながら
それが「15億」とか「1億5000万」とかの
桁数だけを当てるようになっているんです。
- 岩田
- つまり、正確な数字まで覚えておかなくてもいいと。
そういうのを用意したのはなぜなんですか? - 次橋
- 経済のニュースを見てると
いろんな数字がバンバン出てきたりして、
でも「設備投資に○千億円」とか言われても
ぜんぜん実感がわかなかったりすると思うんです。
- 岩田
- たしかに生活実感のない大きな数字だと
その数字が大きいのか小さいのか
判断がつきにくかったりしますね。
- 次橋
- ニュースでこれだけ大きく取り上げられるんだから、
すごく大きいことなんだろうと聞き流したりして(笑)。
でも、桁の感覚だけでもつかめるように
しておきたいなと思ったんです。
逆に小さいところで言うと、野菜の値段とかも、
毎日食べてるのに答えられない人もいると思うんです。
正確な数字を覚える必要はないんですけど
だいたい合ってればOKみたいな、
そういう答え方を実現したいと思って、
「物差し」とかを用意することにしたんです。
- 岩田
- まずは“だいたい”でいいと。
- 鈴木
- ええ、だいたいの数字を答えて
それで、自分が予想した数字よりも
遙かに多いとか少ないとか、そういったことに
気づくだけでも、すごく大事だと思ったんです。
- 岩田
- でも、このソフトを続けて触っていただくためには
モチベーションになるものが必要ですよね。
- 鈴木
- たしかに『えいご漬け』や『常識力』には
カレンダーがついていて、
ハンコを押すようになってましたけど
今回はそれを使うのは禁止にしました。
- 岩田
- カレンダー禁止令?(笑)
- 鈴木
- たとえば『えいご漬け』の英語力診断には、
自分の力を判断できる指標がありましたけど、
今回は「昇進」を目標にがんばるのがいいんじゃないかと。
- 高橋
- わかりやすいですからね。
まずは新人からスタートして
係長、課長と昇進していって、最後は社長に。
- 鈴木
- で、その昇進のアイデアは
次橋さんが書いた企画書にあったので
二つ返事でつくってくれると思ってたんですが、
なかなか進まなかったんです。
- 岩田
- 「昇進」には、抵抗がありましたか? 次橋さん。
- 次橋
- はい。
- 岩田
- 自分で提案しておいて(笑)。
- 次橋
- (笑)。
やっぱり経済がテーマのソフトだというと
どうしてもビジネス界で働く人向けのように
連想されやすいと思うんです。
でも、ソフトの中身は、もっと広い、
大人の常識を扱ったものなので、「昇進」にすることで
会社の第一線で働く人向けに見られてしまうのが、
ちょっと心配だったんです。
- 北原
- でも、たとえばお母さんが
「わたし、部長に昇進した」とか言ってたら
楽しかったりしますよね(笑)。
- 次橋
- 確かにそうなんですよね(笑)。
- 岩田
- 女性のお客さんに対して
意識して入れたことはあるんですか?
- 次橋
- わたしとしては、男性も女性も関係なく
大人として必要なことを入れるようにしました。 - 高橋
- だから、入ってる問題も
「バーゲンの仕組み」のような女性好みのものもあれば
男性が好きそうなクルマの話もあります。
- 次橋
- たとえば野菜の値段の問題は、ある家では
主婦の人だったら答えられるかもしれないですし、
お父さんは逆に答えられなくて、
そこで意外に知らないことがわかったりだとか、
同じ問題でも、お父さんにとっても、お母さんにとっても、
いろんな視点で捉えることができるんじゃないかなと。
で、世界経済のような大きな数字に強い人でも、
生活にとっても身近な小さな数字には
弱かったりすることもあると思うんです。
そういった違いが、たぶん家のなかでも出ると思うので、
いろんな立場の人たちに触っていただいて
コミュニケーションのきっかけになれば、と思っています。