『ゼルダの伝説 大地の汽笛』
2. テトラが登場しない理由
- 岩田
- やりきった感をいだきながらも、
『時のオカリナ』から『ムジュラの仮面』が生まれたように、
今回の『大地の汽笛』は
『夢幻の砂時計』からの流れでつくろうと思ったんですね。 - 青沼
- はい。
宮本さんが『時のオカリナ』をつくったときに、
「まだできるよな」と言った言葉が、
今回は僕のなかにも蘇ったといいますか。 - 岩田
- 教え子が、「ひどい」と思いながらも
そのまた教え子に同じことをするみたいな(笑)。 - 青沼
- そうなんです(笑)。
よく考えると、人として許せない話ですよね。 - 岩本
- (笑)。
- 青沼
- でも、『ムジュラの仮面』ではできちゃったんですよね。
だから「君たちもできる!」と。
さらに「前作があるんだから早くつくれるよね」と。 - 岩本
- 言ってました(笑)。
- 岩田
- 岩本さん、
「『ムジュラの仮面』は1年でできたことだし、
やろうよ、短い時間で」と、
プロデューサーから熱く言われたんですか。 - 岩本
- いや、そこまでは言われてないです(笑)。
- 青沼
- 言ってないです(笑)。
- 岩本
- そこまでは言われてないですけど・・・。
まあ同じような感じで(笑)。
- 青沼
- 今回の開発期間は2年もありましたし。
- 岩本
- 2年も・・・というのは(笑)。
- 一同
- (笑)
- 青沼
- そもそも岩本ディレクターは
『時のオカリナ』のスタッフでもあったんです。 - 岩田
- そうでしたね。
- 岩本
- 『ゼルダ』シリーズは
『時のオカリナ』から関わってきましたが、
『ムジュラの仮面』では担当にならなかったんです。
だから、『ムジュラの仮面』の苦しさは知らなくて、
青沼さんから「まだできるよね」と言われたときも
そこまで途方に暮れるようなことはありませんでした。 - 岩田
- やりきった感がある一方で、
「まだやれるぞ」という気持ちがあったんですね。 - 岩本
- はい。
前作とは違うアプローチでやってみてはどうかと。
そこで考えたのがファントムを使うことだったんです。 - 岩田
- 無敵の強い敵ですね。
- 岩本
- はい。前作ではゴロンに切り換えて
操作するという遊びがあったんですけど、
次をやるんだったら
ファントムを操作することを核にしようと、
わりと早い段階から決めていました。
サブプレイヤーをカンタンに
直感的に操れる方法はないだろうかということを
ずっと考えていましたので。 - 岩田
- つまり、「まだできるよね」と言われる前から
実はやりたいアイデアがあったんですね。 - 青沼
- だから「次もやろう!」と言ったとき、
いい感じで反応が返ってきたんです。
お互いに共鳴するものを感じましたし。 - 岩本
- いや・・・なんかありましたっけ?(見つめ合う)
- 青沼
- なんか迷惑そうだな(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- ちなみに、歴史は繰り返しやすいものなので訊きますけど、
今回は『ムジュラの仮面』のときみたいに
売り言葉に買い言葉はなかったんですか?
- 青沼
- 売り言葉というようなことは
たぶんなかったと思います・・・だよね? - 岩本
- はい(笑)。
- 青沼
- ただ、岩本さんはディレクターとして
『夢幻の砂時計』の担当をしましたけど、
彼にとっては、完全にオリジナルなものではなかったんです。 - 岩本
- そうですね。
もともとは『風のタクト』(※9)があって、
船の遊びをDSに置き換えたようなところもありますので。 - 岩田
- なるほど。
『夢幻の砂時計』は十分オリジナルっぽく感じてましたけど、
確かに船のところは、根っこが似てるし、
あのときの表現のアプローチは
『風のタクト』でつくられたものを応用してるんですね。
『風のタクト』=『ゼルダの伝説 風のタクト』。ゲームキューブ用ソフトとして、2002年12月に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。
- 青沼
- 応用しながらも、『風のタクト』を
「もっとこうしてみたらどうなるか?」ということを
彼は一生懸命探ったんです。 - 岩田
- なるほど。
- 青沼
- その結果、『夢幻の砂時計』として実を結んだんですね。
だから今回の『大地の汽笛』では
自分で考えたものを自由につくりたい、
ということなんじゃないかと・・・だよね? - 岩本
- はい(笑)。
- 青沼
- それで、今回の登場人物のなかでは
ゼルダ姫がものすごくクローズアップされてるんです。 - 岩田
- 前作にはテトラが出てましたよね。
- 青沼
- ところが今回は出ないんです。
おおまかな物語の設定を聞いたときに
「あれ、テトラはどうして出てこないの?」と聞いたら、
「僕、テトラ、あまり好きじゃないですから」と。 - 一同
- (爆笑)
- 青沼
- 「好きじゃないってどういうことよ!?」
「困るなあ、そういうことを言っちゃあ・・・」
みたいなやりとりをして(笑)。 - 岩本
- (笑)。
でも、好きじゃないっていうよりも、
自分なりのキャラクターへの思い入れというか、
いままであまり描かれていないものは
何だろうと探すなかに、ゼルダ姫が出てきたんです。
最初の頃はサブキャラクターを
何にするのか決まってなくて、
スタッフといろいろ相談していたんです。
それで、どうせいっしょに冒険するんだったら
やっぱり女の子のほうがいいよねという話になりまして。
ただ、毎回テトラというのも何ですし、
「新キャラクターを出すのはどう?」という話もあったんです。
ただ、やっぱり『ゼルダの伝説』なので、ゼルダ姫が出てこなくて
関係のないお姫様を連れてるのも面白くないかなと思って、
最終的に「ゼルダ姫でやらせてください」とお願いしたんです。
- 岩田
- そしたら、青沼さんは何と答えたんですか?
- 岩本
- ええと・・・「もう勝手にすれば」と。
- 青沼
- ええっ、そんな言い方してないよ!
- 一同
- (爆笑)
- 岩田
- やっぱり、売り言葉に買い言葉じゃないですか(笑)。
- 青沼
- やさしい口調で「やってみたら」と言ったんだよね?
- 岩本
- そうでしたっけ?
- 青沼
- 困るなあ(笑)。