『トモダチコレクション』
1. “規格外の顔”も似顔絵に
- 岩田
- みなさんが『トモダチコレクション』で
何を担当したのか、それぞれ話してもらえますか。
まず、高橋さんから。 - 高橋
- 企画開発部の高橋です。
今回はディレクターを担当しました。
プロデューサーの坂本(賀勇)(※1)さんといっしょに
企画を考えたり、それをチームのみんなと相談したり、
スケジュール管理などをしていました。
坂本(賀勇)=企画開発部所属。『トモダチコレクション』プロデューサー。『バルーンファイト』『ファミコン探偵倶楽部』『カードヒーロー』『メトロイド』シリーズなどのゲーム開発に関わる。
- 岩田
- プロデューサーの坂本さんは、残念ながら、
今日は『METROID:Other M』(※2)の
打ち合わせのため出張中で予定が合わず、
このインタビューには同席できませんでしたね。
坂本さんには、別の場を設けて、
坂本さんの想いを訊きたいと思っています。
では続いて、椎葉さん。
『METROID:Other M』=「E3 2009」で発表された、メトロイドシリーズ最新作。
- 椎葉
- 企画開発部サウンドグループの
椎葉大翼(しいばだいすけ)です。
『トモコレ』では音楽を担当しました。
それ以前には『えいご漬け』や『もっとえいご漬け』の
音楽を担当していました。 - 中川
- 企画開発部の中川です。
僕はプログラマーとして
このプロジェクトに参加しました。
僕が担当したのは細々したことが
いっぱいありまして・・・。 - 岩田
- 主にどんなことをしたのですか?
- 中川
- メインの部分の、
部屋でMiiがうろうろしていたり・・・。 - 岩田
- はい。
- 中川
- Miiの悩みごとを解決したりだとか・・・。
- 岩田
- はい。
- 中川
- ・・・ではないところを
だいたい僕が担当しました。 - 岩田
- ・・・いま話したことは
中川さんがやってないことだったんですね。
普通は、やったことを話すものなんですけど(笑)。
- 一同
- (笑)
- 岩田
- やっていないことを話したほうが伝えやすいと思うくらい、
多種多様にいろんなことを担当したということですね。 - 中川
- はい、いっぱいしました。
- 岩田
- なるほど。
そもそも、この『トモダチコレクション』というのは
Miiと一緒にDSで暮らすという、
いままでの既成のジャンルにはまりにくいソフトですので、
このソフトのことを知った人は
「何をするソフトなんだろう?」と
感じると思います。
そこで、どうしてこんなものをつくることになったのか、
このプロジェクトがはじまった話から訊きましょうか。 - 高橋
- まず2000年に・・・。
- 岩田
- 2000年?
9年前ですよ!?
20世紀の時代から、これを考えてたんですか? - 高橋
- はい、僕もまだ入社していませんでした(笑)。
2000年に『とっとこハム太郎 ともだち大作戦でちゅ』(※3)
というソフトを出しまして。 - 岩田
- ゲームボーイカラーのソフトですね。
『とっとこハム太郎 ともだち大作戦でちゅ』=赤外線通信対応のゲームボーイカラーソフトとして、2000年9月に発売した「なかよし発見ソフト」。
- 高橋
- はい。どんなソフトかと言いますと、
友だちのプロフィールを登録して、
その友だちどうしの相性を占ったり、
その日に絶好調な人は誰なのかを見たり、
そういったこと楽しむソフトだったんです。
ただ、そのシステム自体はとてもよくできていたんですけど、
ハム太郎のファンではない人たちに
興味を持っていただくことは難しいソフトだったんですね。
そこで、当時の女性スタッフが
「大人の女性も遊べるようなソフトもほしい」
というようなことを
上司の坂本さんに言ったそうなんです。 - 岩田
- そういった話を
高橋さんは入社後に聞かされたんですね。 - 高橋
- そうです。
2005年の10月頃に
坂本さんから
「こういうソフトがあったんだけど、
大人の女性でも遊べるバージョンをつくりたい」
という話がありました。
- 岩田
- 高橋さんはその頃、何をしてたんですか?
- 高橋
- ゲームボーイアドバンス版の『リズム天国』(※4)の
プログラマーをしていました。
坂本さんから声をかけてもらったのをきっかけに、
『リズム天国』から離れて
この企画を担当することになりました。
ゲームボーイアドバンス版の『リズム天国』=2006年8月に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト。
- 岩田
- 当時は何と呼んでいたんでしたっけ?このソフト。
- 高橋
- 『大人のオンナの占い手帳』です。
- 椎葉
- 大人の、
オンナの・・・? - 高橋
- 占い手帳。
- 椎葉
- えーっ!そうだったんですか?
- 一同
- (笑)
- 椎葉
- 知りませんでした。
僕がこのチームに参加したのは1年前からなので。 - 岩田
- けっこう衝撃が強いですよね、この名前(笑)。
まあ、大人の女の人が占いできるソフトという意味では
すごくわかりやすいですけど。 - 高橋
- 直球ですよね(笑)。
で、当時はまだDSが発売されて1年くらいでしたので、
ユーザー層を拡大するために
大人の女性にも遊んでもらえるようなものを
つくろうということだったんです。
そこで、名前とか誕生日を入れるようにして、
でも、それだけだとちょっと味気なかったので、
「似顔絵を入れるのはどうだろう」と。 - 岩田
- 誰がそんなことを考えたんですか?
- 高橋
- 言い出したのは僕だったんですけど、
そのときは2Dの福笑い的なものを考えていたんです。
顔の輪郭があって、
パーツがあって、
そのパーツを組み合わせることで顔ができると。
その方向でつくろうとしていたら、
中川さんたちが、
「どうせなら3Dでやりましょう」
と言ってきたんです。 - 岩田
- 中川さんたちは入社してすぐに
3Dの研修を受けてますからね。
腕をふるいたかったんでしょう、中川さん(笑)。 - 中川
- はい(笑)。
- 高橋
- そこでできあがった3Dの似顔絵ツールを
坂本さんに見せたんです。すると、
「よくできてるけど、自分みたいな
“規格外な顔”もつくれないの?」と言われて。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- で、坂本さんは具体的にはどうしろと言ったんですか?
- 高橋
- 「口はでかくして、目はたれるように」と。
- 中川
- 「鼻も大きく」。
- 高橋
- それで、顔のパーツを回転できるようにしたり、
拡大や縮小、
それに位置の変更もできるようにしたんです。
すると急激に似るようになりまして。 - 中川
- 坂本さんも「お、似てるやん」と(笑)。
- 一同
- (笑)
- 高橋
- そこで、坂本さんは大喜びで
岩田さんに見せに行ったんですよね。 - 岩田
- 確か・・・2006年の年明けすぐのタイミングでしたよね。
で、そのときから、みなさんのプロジェクトは、
思わぬ方向に振り回されることになるんですよね。 - 高橋
- はい(笑)。
- 岩田
- 振り回した張本人は
わたしなんですけど。 - 一同
- (笑)