『ニンテンドーDSi』
2. 任天堂っぽい手触りのあるブラウザー
- 岩田
- いま、仕上がった「DSiブラウザー」と、
以前の「ニンテンドーDSブラウザー」をくらべると、
どこがどう変わったと感じますか? - 古川
- 手触りです。
「DSブラウザー」とくらべると、
より「あ、任天堂っぽい」と思っていただけるような
手触りに仕上がったと思います。 - 岩田
- 古川さんが定義する
「任天堂っぽさ」ってなんですか?
押したらすぐに反応するということですか? - 古川
- うーん、言葉で言うと
そういう単純なことに
なってしまうのかもしれませんけど、
本当は、その裏にある、言葉で表しきれない、
ボタンを押したときの反応が
どのくらい気持ちいいかとか、
スクロールするときの適度な速度とか、
そういった、目に見えないこだわりの
積み重ねなんじゃないかと思います。
- 岩田
- それは、よくわかります。
しかし、それは、どうやったら伝わりますかね。
さわってるところをビデオに撮ったら伝わるのでしょうか。 - 高橋
- 操作しているところのビデオを観ても、
「あ、そんなに速くないじゃん」
って思われるだけかもしれませんね。
表示の速さとか、目に見えるところだけでとらえると、
スペック的にはPCやWiiに負けてますから。 - 岩田
- PCやWiiとは環境がぜんぜん違いますからね。
- 高橋
- あのう、身内でこういうことを言っても
説得力はないのかもしれませんが、
いま世に出ている携帯機とくらべてみても、
「DSiブラウザー」のほうが見やすいですし、
さわりやすいなあと感じるんですよ。 - 岩田
- それは使ってみて私も感じていますね。
どうしてそう感じるんでしょうね。 - 高橋
- あの、私の好みでいうと、携帯機のブラウザーは、
とにかく、文字情報だけでもいいから
速く表示してほしいんですよ。
ところが、多くの携帯機のブラウザーは
全体をキレイに表示させることを優先しているので
そのへんがもどかしいんですよね。
- 古川
- 「DSiブラウザー」には
インターネットを閲覧できるモードが2種類あるんです。
これはDSのときからそうなんですけど、
PCの画面がそのまま表示されるモードのほかに、
文字だけが、画面の横方向にはみ出すことなく、
ザッと縦に表示されるモードがあるんです。
で、このふたつを併用できるというか、
リアルタイムに切り替えることができるので、
たとえば、まず最初にザッと見て、
気になるページをくわしく表示させる、
という使い方もできるんです。 - 岩田
- なるほど。
わたしも、自分でしばらく触ってみて
文字が横方向にはみ出さない縦2画面で表示するモードを
主に使うことになるだろうと感じました。
十字ボタンでページ送りをできるようにお願いして、
とても使いやすくなりましたよ。
白川さんは、どのあたりが
「任天堂っぽい」手触りになっていると思います? - 白川
- 「DSiブラウザー」で閲覧するとき、
「通常モード」では上下の画面に
どのようにウェブページが表示されるかというと、
下側の画面が上側の画面の拡大だったり、
あるいはそれを逆に入れ替えて表示できたりするんです。
「DSiブラウザー」では、
ただそれを一瞬で入れ替えるのではなく、
それぞれの大きさが変わる
アニメーションを流してみたんです。
これが入ると、やっぱり、感じが変わるんですね。
そういうことが「任天堂っぽい」という
手触りの要因なのかなという気がします。
- 古川
- 「DSブラウザー」のときは、
パッと画面が入れ替わるだけだったんですけど、
白川さんのアイデアでアニメーションを入れたら、
「おーーー!」って言うくらい
はっきりとよくなったんですよ。 - 高橋
- あの、前のブラウザーを
否定したいわけではないんですけどね。 - 古川
- ええ、もちろん。
- 岩田
- うん、そのあたりは表現が難しいですね。
前のものを否定したいわけでも、
前の担当者を悪く言いたいわけでもない。
そもそもDSブラウザーの担当者と一緒に作っているわけですし。
ただ、前は、ハード的にできなかったことがあるんですよ。
それがニンテンドーDSiになって、
スペック的には拡張された部分があるので、
そのぶんだけ、いろんなトライが可能になってるんですよね。
そういう拡張がない環境でつくったものを、
単純に比較して、あれはダメだというのは
非常に、アンフェアですから。 - 白川
- そうですね。
2画面をどう使ってブラウジングさせるか、
という基本的な構造は、
「DSブラウザー」とまったく変わっていません。
ハードの強化といくつかの工夫で、快適に動くようにしたのが
「DSiブラウザー」なんです。 - 岩田
- そうですね。
- 白川
- あと、地味なんですけど、手触りということでいえば、
タッチペンで少し斜めに画面をなぞったとしても、
ぴったり縦方向か横方向へスクロールさせる機能を入れたんです。
まぁ、言われなければわからないくらいの
地味な工夫なんですけど(笑)。
また、DSブラウザーにはなかった機能として、
タッチペンを長く押し続けたあと、ウェブページ上の言葉をなぞると、
その言葉で検索をすることが出来るのですが、
これもあまり目立たない細かい改良点かもしれません。 - 岩田
- いや、そういうことの積み重ねが、
任天堂っぽい手触りになってるんだと思いますよ。 - 古川
- 地味なところでもうひとつ(笑)。
いろんな操作をアイコンで表示してあるんですけど、
そのアイコンをどんなふうにするかは
けっこう議論を重ねました。
PCでお馴染みのアイコンを、
深く考えずに流用すると、
インターネットに馴染みのない方には
なんだかよくわからなくなってしまうので。 - 岩田
- ああ、そうですね。
- 古川
- PCでは、いわゆる「インターネット」というと、
「地球儀があって光がピュンピュン飛んでいる」
というようなアイコンが一般的ですが、
知識のない人にはまったくピンと来ないので(笑)。
そのあたりはかなり気を遣いましたね。 - 岩田
- なるほど。
ところで、DSという携帯ゲーム機に
ブラウザーが内蔵されることの意味って、
なんだと思います?
- 白川
- 最近は例外となるものもありますが、
基本的にゲーム機というのは、
任天堂がつくったコンテンツであったり、
あるいは他のメーカーさんがつくられた
コンテンツが動くというもので、
その意味では、計算しつくされたコンテンツばかりが
動いている機械だと思うんです。
ところが、インターネットにつながって、
そこからコンテンツを拾ってきて表示させる場合、
当たり前ですけど
「なにが表示されるかわからない」ですよね。
そのあたりが任天堂の商品としては
すごくめずらしいかなぁと思っています。 - 岩田
- 古川さんはユーザーインターフェイスの専門家として、
ニンテンドーDSiにブラウザーが、
カートリッジではなく、内蔵できることの意味は、
どんなことだと思います? - 古川
- 個人的な意見になりますけど、
子どもさんたちが、はじめてインターネットを
体験できるマシンになればいいなあと思っています。
パソコンそのものではなく、
自分の好きなように使える携帯機で
インターネットを体験できることに
非常に意味があるのではと。
その子どもさんたちに安心して使ってもらうために、
別途、申し込みが必要になりますが、
有害なサイトをブロックする「i−フィルター(※2)」にも
対応しています。
i−フィルター=デジタルアーツ株式会社が提供する、安心してインターネットを楽しむための有害サイトフィルタリングソフト。
- 岩田
- 高橋さんは、いかがですか?
- 高橋
- 簡単にいうと、「DSi」を携帯して、
気軽にインターネットを閲覧することで、
ますます「マイDS」になっていくのだと思います。
ぜひ、気軽に持ち歩いて、いろんな場所で、
「DSiブラウザー」を立ち上げてほしいですね。 - 岩田
- さて、それでは最後に、
ニンテンドーDSiがソフトを
内蔵できるようになったことに関して、
みなさんからひと言ずつもらいましょう。
それでは、高橋さんから。 - 高橋
- やはり、DSのおもしろさというのは、
ゲーム機でありながら、ゲーム機の範疇から
どんどん離れていったことにあると思うんです。
もちろん、ゲーム機であり続けるのは
間違いないんですけど、それ以外の、
いろんなツールとしてのDSというのが、
このニンテンドーDSiの登場によって
より発展していくんじゃないかと思うんですね。
とくに、ソフトを内蔵できることで、
個人の、「マイDS」として持ち歩く意義が
よりはっきりとできてきたと思うので、
ますますカスタマイズされた機械になっていくことが
理想的な形かなと思っています。
- 岩田
- 白川さん。
- 白川
- そうですね、今回、ニンテンドーDSiに
本体保存メモリが内蔵されたことで
いままでのゲームの枠組みに収まらない、
さまざまなソフトが受信され追加されて
遊ばれることが可能になったので、
それによって、
ゲーム会社で働く開発者だけに限らず、
いろんなアイデアを持った方たちが
世の中にものを出すチャンスが広がれば
おもしろいんじゃないかなぁと思います。
- 岩田
- はい。古川さん
- 古川
- ニンテンドーDSiは、
いろんなソフトを内蔵することによって、
ひとりでもたのしい、
そして、みんなでもたのしいマシンに
なるだろうなと思うんです。
携帯電話をはじめとして、世の中には
ソフトをダウンロードできる携帯マシンは
たくさんありますけど、
「みんなでたのしめる」というのは
このニンテンドーDSiにしか
できないことだと思うので、
そのたのしさがニンテンドーDSiを中心にして
どんどん広がっていけばいいなと思います。
- 岩田
- ある人がニンテンドーDSiをはじめて見たとき、
「これは究極の宴会ツールだ」
って表現してたんですけど、
いま古川さんが話したことと近いかもしれませんね。
どうも、ありがとうございました。 - 一同
- ありがとうございました。