『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』
5. 宮本茂からの挑戦状
- 岩田
- 宮本さんは以前、パブリックスペース利用チームのなかで、
「僕はちょっとまちがっていた。方針を変える」
と宣言したことがあるんですよね。 - 宮本
- はい。いままでイクスピアリ、教室、美術館、水族館・・・
と推進してきたんですが、ふと立ち止まって考えたんです。
僕が本当にやりたかったのは、
商店街や青年会でみんながイベントを考えたり、
遊びをしかけたりできるものだったんじゃないかな・・・と。
そんなとき、「DSiウェアにしてはどうですか」
といった提案がスタッフからあったんです。 - 岩田
- その提案が、今回、無料配信されることになったDSiウェア
『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』につながるんですね。 - 宮本
- そうなんです。
DSiウェアなら、『DSガイド』をもっと身近なものとして
つくったり、使ってもらえたりできると感じたんです。
それにDSiならカメラも音声録音もついているので、
DS1台だけで、すべてのデータがつくれるんです。
『うごメモ』(※27)のように無料で配る方向ではじめたら、
わりとトントン拍子でできたんです。
『うごメモ』=『うごくメモ帳』。2008年12月に配信が開始された、無料のニンテンドーDSiウェア。タッチペンで手書きメモを作成できる。また、何枚も書いたメモを再生して、パラパラマンガ(動画)をつくることができる。『うごくメモ帳』について詳しくはこちら。
- 西澤
- トントントンって・・・。
宮本さんからのプレッシャーはすごかったですよ(笑)。 - 岩田
- 西澤さんは、今回のDSiウェア版の開発も
担当されたんですよね。 - 西澤
- そうです。宮本さんから、
「地蔵盆(※28)や秋の学園祭までには配信するんだ!」って言われて
大変でした・・・(笑)。
地蔵盆=主に近畿地方で行われる夏の行事。地蔵菩薩の縁日である8月24日を中心に町内規模で行われる。
- 宮本
- ああ、それはそう(笑)。
結局、こだわり出していろんな機能をつけ加えていったら、
思ったよりも時間がかかってしまって、
残念ながら地蔵盆での肝だめしやスタンプラリーには
間に合わなかったんですけど・・・。
でも、自分でガイドをつくりたい人は
世の中にたくさんいると思うんです。
だからこそ、できるだけ手軽に
使ってもらえる環境にしたかったんです。
- 岩田
- (『DSガイド』を触りながら・・・)
まずはDSiカメラで写真を撮った後、『DSガイド』を起動して、
“編集モード”から“データ編集”を選ぶと、写真一覧が出てくる。
ガイド番号と写真を選んで、音を吹き込む。
あとは順番を入れ替えたり、繰り返したり、自由に設定する、と。 『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』紹介ムービーを見る - 宮本
- そうです。音声ガイドのように、パネルを選んで番号を押せば、
写真と音が出てくるんですよ。配信するなら、“配信モード”から
まず“再生ソフト配信”で『DSガイド』のプレーヤーを配信後、
自分で作成したものを“データ配信”で送るだけ。 - 岩田
- ずいぶん簡単ですね。
- 宮本
- はい。“スライドショー”機能(※29)というのもあって、
フォトフレームに音声ガイドがついたみたいな手軽さなんです。
サンプルをスタッフに渡したら、カメとカニのレースを描いてきて、
連続再生して“音声つきの4コマ漫画”をつくってきました。
“スライドショー”機能=DSガイドで編集したデータを連続再生する機能。
- 岩田
- ガイドとして使わなくても、使い方は幅広くて面白いですね。
- 澤野
- 絵本を写真に撮って、お母さんが子どもに
朗読してあげることもできるんですよ。
自分で紙芝居をつくって、それを写しても楽しいです。 - 宮本
- たとえば、まずは“我が家自慢”をつくりましょう(笑)。
リフォーム番組の音楽をバックに流しつつ、
「長い玄関のアプローチは、
お母さんのお気に入りの花で飾られています・・・」とか・・・。 - 岩田
- すごくいい我が家のプロモーションになりますね(笑)。
- 宮本
- いろいろと楽しいものがつくれそうなのでアイデアを募集します!
- 岩田
- ものをつくる手段さえあれば、つくりたい、
という大勢の方たちに面白い道具をご提案する。
それがDSiだけあればいいんですね。 - 宮本
- 昔からすると、夢のような時代だと思います。
1台のゲーム機だけで、デジタルなサービスや
遊びができるんですから。 - 西澤
- これをキッカケにDSを持ち歩いていただきたいですね。
- 宮本
- DSiウェアの『DSガイド』の場合は、
『DSガイド』の再生ソフトを配信し続けるDSiと、
自分でつくったデータを配信し続けるDSiの2台があると便利です。
お店のなかで、2台のDSiを置いて配信すれば、
次々と新しいお客さんに入れ替わってもつづけて使えて、
店長のブログやスタッフの声など、
いろんな手づくり情報を流せます。 - 岩田
- 写真なので、絵を描けない方でもOKですからね。
ちなみに、みなさんは今回のDSiウェア版の話が
進んでいくのを、どう思っていましたか? - 清水
- 僕は、宮本さんには以前お伝えしましたが、
自由にコンテンツをつくって配れるということ自体、
すごくチャレンジングだと感じています。
だからぜひ、みんなでいいものにして育ててもらいたいです。
- 澤野
- わたしは、昔、FMの小さな個人放送局を
つくったことがあるんです。
それが今、時代が進んでこんなにすごいことが
できるようになったんだなあと、しみじみ感じています。
商店街がこれを導入してくれたら、とても面白いでしょうね。
- 西澤
- 実は清水さんからもいろいろな提案がきましてね。
難しい提案だったんですが、清水さんのお陰で、
『DSガイド』の機能がさらに充実したものになりました。
- 宮本
- おお、うつくしい話だ(笑)。
- 清水
- 僕は東京なので、いつもテレビ会議でさびしかったんです(笑)。
あるとき西澤さんがロムを送ってくれて、喜んで触ったら・・・。 - 岩田
- 嬉々とした清水さんから、山ほど“建設的な提案”がきた(笑)。
- 宮本
- やはり、納期を間に合わせることと、使った人が満足すること、
どちらを優先するかといったら、僕は後者なんです。
「使ってよかった」と言ってもらえるからつくる意味があるので。
また、『DSガイド』のポイントは“告知”だと思っていますので、
こちらで配信告知のポスター(※30)をサイトにつくりました。
それをダウンロードしてプリントすれば、
手軽に貼れるようになっています。
配信告知のポスター=『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』から配信されるデータの受け取り方を告知する、案内用のポスターについて詳しくはこちら。プリントしてご使用いただけます。
- 清水
- 街に告知ポスターが増えれば、パブリックスペースで
DSが使われていることが知られて、持ち歩く方が増えますね。 - 岩田
- 何かを表現したい方に
この『DSガイド』という道具が渡ったとき、
どういったことが起こるのか、見極めたいというのが
宮本さんの今の気持ちでしょうね。 - 宮本
- そうですね。DSの技術があれば、昔からつくりたかった
デジタルな遊び道具をつくることができるので、
今後も積極的に取り組みたいと思っています。 - 岩田
- 今回のDSiウェア版は、宮本さんからの“挑戦状”であり、
パブリックスペース利用を広めるための新たなご提案ですね。 - 宮本
- まあ、僕は、あまのじゃくですから(笑)。
先生が「DSを学校に持ってきちゃダメ!」と叱られるところを、
「明日はみなさん、DSを持ってきてください」
と言っていただける世の中になったらいいなあって思ってます。
- 岩田
- 最後に宮本茂の野望が訊けました(笑)。
みなさん、今日はありがとうございました。
- 一同
- ありがとうございました。