『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』
7. 現実の物語も楽しんでほしい
- 岩田
- 今作の特徴をひとことで言うと
どんな感じになるんですか?
- 堀井
- 今回はわりと終わりのないゲームなんですよ。
これまでの『ドラクエ』も
エンディングが終わってからオマケがちょっとあったんですけど、
今回はエンディングの後がすごいんです。
- 岩田
- エンディングの後も
楽しめるようにしたかったんですね、堀井さんが。
- 堀井
- はい。やっぱりずっと遊べるというのは大事で。
マルチプレイで人と遊ぶんだったら、
どのようなタイミングから入ってきても
みんながいっしょに遊べなきゃなんないですし、
自分がクリアしていても面白くなんなきゃいけないので。
- 岩田
- 堀井さんのていねいな手ほどきで、
どんな人も遊びこめば
ちゃんとゴールにたどり着けるのと同時に、
それが終わったあとも、
みんなで遊べる場所も用意したんですね。
- 堀井
- 今回、気合いを入れて
マルチプレイができるようにしたのも
『ドラクエIX』の物語を楽しんだあとは、
ユーザーのみなさんにも、人と人との
現実の物語をつくってほしいと思ったからなんです。
そもそも『ドラクエ』には
たとえば、子どもが攻略できなくても、
親が代わりに助けてあげたりとか、
遊んだ人それぞれに、
いろんな思い出があったと思うんです。
- 岩田
- あそこでつまって、友だちに聞いて進めたりとか、
そういった話がとても多いですよね。
- 堀井
- そういうコミュニケーションツールとしての
『ドラクエ』というのもあると思うんですよ。
で、今回はその傾向がより強くなったと思います。
4人で遊べて、すれちがい通信もできるようになりましたし。
- 岩田
- そもそも、ゲーム機は
人と人とのコミュニケーションを生み出すための
キッカケになるということついては
わたしはすごく大きな可能性があると思っていて。
- 堀井
- 本当にそう思いますね。
- 岩田
- わたしたちは、これまでずっと
そういうことに挑戦してきたつもりなんですけど、
DSを活かすとなると、
やっぱり堀井さんも
自然とそういったことをやりたいと。
- 堀井
- だから、コミュニケーションのキッカケになるようなことは
いろいろ用意してるんですよ。
たとえば、すれちがい通信でも、
「え?こんなすごいプレイヤーもいたんだ!」とか
そんなことも起こるようになってますし。
- すぎやま
- すれちがい通信で、知らない人の
戦績などもわかるようになってるんですね。
- 堀井
- そこで「僕も負けないようにガンバロー」とか(笑)。
そんなふうにして、いろんなドラマが生まれてくれば
楽しいなと思ってるんです。
そうやってみんなとも遊べるんですけど
もちろんこれまでのように
ひとりでも遊べるようになってるんですね。
- 岩田
- 今回は、終わりのない『ドラクエ』であり、
人との物語をつくる『ドラクエ』でもあり、
もちろんいままでの『ドラクエ』としての
練られたシナリオもたっぷり楽しめて
さらに、そういった新しい要素もあるということなんですね。
- 堀井
- そうなんです。
- 岩田
- それでは最後に、これを読んでくださってる、
お客さんになってくれるかもしれない人たちに、
ひとことずつオススメの言葉をいただきましょうか。
まずは、すぎやま先生からお願いできますか?
- すぎやま
- オススメの言葉と言ってもねえ、
たぶん、みなさんはもうわかってらっしゃる。
『ドラクエ』は、理屈抜きに面白いです。
- 岩田
- (笑)
- すぎやま
- でも、僕がオススメの言葉としているのがあってね。
『IX』も面白いですよと。
- 岩田
- これまでのシリーズと同様に
『IX』も面白いということですね。
じゃあ、堀井さん、お願いします。
- 堀井
- いまの時代、インターネットとか
いろんな環境が整ってるじゃないですか。
だから、けっこう難しめにつくってあるんですね、実は。
いままでよりも、難しいですし、敵も強いんですよ。
なぜそうしたかと言うと、人に聞いてもらったり
ネットで調べたりするようなことも想定しているからなんです。
わかんないことがあればネットで調べる、
そういったことも一種のゲームだと思ってますし。
- 岩田
- 『ドラクエIX』のなかにある世界も
自分が存在する現実の世界も
それがキッカケで生まれる人とのコミュニケーションも、
その全部をひっくるめて
『ドラクエIX』というゲームになってるんですね。
- 堀井
- そうなんです。
- すぎやま
- あ、それともうひとつ。
いままでの『ドラクエ』と違う部分があるかというところで、
遊びとして“着せ替え人形の遊び”というのも、
あると思いますよ。
- 堀井
- マルチプレイもできますし、
やっぱり自分の格好を
人に自慢できるというのは大事でしょう。
- 岩田
- それに、DSなので
いつでもどこでも人に見せることができますしね。
そもそも『ドラゴンクエスト』というソフトは、
日本中のゲームファンの心のなかで
ものすごく大きな存在であることは、
この20年間、何も変わってないと思うんです。
ただ、大きな存在であるからこそ
さまざまな人に、さまざまな『ドラクエ』があると思うんですね。
- すぎやま
- いまや、どこに行っても、
『ドラクエ』世代がいたりしますから。
- 岩田
- そうなんですよね。
- すぎやま
- 昔は、仕事の現場にいる人は、
『ドラクエ』を知らない人ばっかりだったでしょう。
ところがいまは、あらゆる仕事の現場に
『ドラクエ』をやったことのある人がいるの。
それはもう、しみじみ思いますね。
- 岩田
- たとえばどんなときですか?
- すぎやま
- 先日は、自動車免許のことで警察に行ったんですけど、
そこの人がとても親切にしてくれて、
聞いてみたらその人、
『ドラクエ』で遊んでいたと言うんです(笑)。
- 岩田
- (笑)
- すぎやま
- それから和食を食べに行ったときも
板長さんが最後にお見送りに出てきてくれて、
「実はわたくし、『ドラクエ』やってます」と。
そんな感じで、あっちこっちに
『ドラクエ』世代の人たちが
ずらっといるように感じるんですよね。
- 岩田
- それはまさに『ドラクエ』による
ユーザー拡大の成果だと思うんですよね。
そのなかには、もちろん初代の『ドラクエ』から
ずっと遊び続けている人たちもいれば
20年前には物心がついていなくて、
最近になって『ドラクエ』を遊びはじめた人もいれば、
ここ数年はなんらかの事情で
ひょっとしたらお休みしてる人もいるかもしれないんですよね。
- 堀井
- そうなんです、いろんな人がいるんですよね。
だからこそ、DSで出す意味もあるかなと。
いろんな世代の人たちがDSを持ってますからね。
- 岩田
- 『ドラクエ』がDSで出ることになって
わたしがいちばん楽しみにしていることは
最初の話にも出た、“先生”や“宣教師”の物語なんです。
かつて、『ドラクエ』を遊んだ人が、
どんどん宣教師になって広まっていったようなことが
もう1回、いまの時代に
『ドラクエ』のゲーム人口拡大というカタチで
起こらないだろうかと期待してるんです。
- 堀井
- それはありますね。
ボスを強めにしたのも、そういうことなんですよ。
どうしてもボスを倒せない子どもや彼女がいると。
そんなとき、かつて『ドラクエ』に親しんだ人に
助けてあげてほしいんです。
しかも、かつてのように
ただアドバイスを言うだけではなくって、
自分が強いキャラクターをそのなかに送り込んで、
いっしょに戦って、助けることもできるんですね。
そうすると、やっぱりドラマが生まれると思うんです。
- 岩田
- 「お父さんが来てくれてたから、助かった」と
感謝されるようなことも起こるんですね。
- 堀井
- でも、そこでヘマをやったりして。
「何やってんの、お父さん」とか(笑)。
そういったこともまた面白いんです。
そんな笑い話も生まれたりとか、
今回の『ドラクエIX』で、
いろんな世代の人たちに、いろんな物語が生まれると
すごく楽しいなと思ってるんですね。
- 岩田
- そうですよね。
わたしも発売日が本当に楽しみです。
- 堀井
- ホントにね、今回は楽しみなんだけど、
ちょっとドキドキなんです。
どうなるんだろうみたいな(笑)。