『METROID Other M』
コラボレーション篇
- 岩田
- 早矢仕さんは、北裏さんと坂本さんの関係を
どのように見ていたんですか? - 早矢仕
- たとえば絵コンテの動きを説明するときに、
昔の怪獣映画を例に出して、
2人だけで盛り上がったりするんです。 - 岩田
- 世代が違うから話についていけなかったりするんですか?
- 早矢仕
- はい、そうなんです(笑)。
たとえば「ここはギャオス(※7)みたいな感じ」と言われても・・・。 - 岩田
- ああ、ギャオスですか(笑)。
- 北裏
- 2人だけはわかっているんです。
- 岩田
- 世代的に、わたしもわかります(笑)。
- 一同
- (笑)
- 坂本
- だから「ギャオスとは何か?」というところから
説明しないといけなかったんです。
ギャオス=大映の特撮映画に登場していた怪獣。初登場は1967年公開の『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』。
- 北裏
- でも、早矢仕さんはこの3人のなかで
いちばん大人だったと思いますね。
とってもクールですし。 - 坂本
- たしかに僕なんかは無駄に熱いだけなんです(笑)。
まあ、この3名だけのプロジェクトではありませんけど、
それぞれの持っている性格や持ち味が、
今回は、とても心地よく絡めているという感じがありました。
- 岩田
- では、クールな早矢仕さんにお訊きしますけど、
『METROID Other M』をつくってきて、
「これはいいぞ」という手ごたえを
最初に感じたのはどんなときでしたか? - 早矢仕
- 手ごたえといえば、まるでジグソーパズルのピースが
ピタッとはまったような瞬間がありました。
開発がはじまってからしばらくは、
アクション部分とムービー部分を別々につくってきたんですけど、
果たしてその2つがうまくつながるのか、すごく不安だったんです。
で、2008年の末くらいに、
ゲームの冒頭の部分をくっつけてみたんです。
すると本当にピッタリとはまったんです。 - 岩田
- アクションとムービーがシームレスにくっついたんですね。
- 早矢仕
- はい。それを見たとき、
坂本さんがずっと言われていた
「ストーリーをちゃんと見せるアクションゲーム」
というものの片鱗を感じて、
「これならいける」と思いました。 - 岩田
- 北裏さんはいかがですか?
- 北裏
- 僕も早矢仕さんとまったく同じです。
早矢仕さんのほうではアクション部分を
僕のほうでは映像部分を別々につくっていて、
その両方を客観的に見ていた坂本さんの頭のなかには、
たぶん完成イメージが見えていたとは思うんですが、
それを実際に合体させたとき、
「こういうものは、いままでにない」と思いました。 - 岩田
- 絵コンテをたくさん描いて、
CGをつくりながら次にどんなシーンが来るのかわかっていても、
北裏さんにとっては驚きだったんですね。 - 北裏
- はい。すごく驚きました。
- 坂本
- ジグソーパズルのように
アクションとムービーがピタッとはまったのは、
北裏さんに映像だけでなく、
ゲーム全体の演出をお願いしたことも大きかったと思うんです。 - 早矢仕
- そうですね。
「ムービー部分もアクション部分も同じサムスでなきゃいけない」と
北裏さんから口を酸っぱくして言われてましたから。 - 北裏
- やっぱりサムスは世界でひとりだけなんです。
こっちはムービーパートのサムス、
こっちはアクションパートのサムスというように、
片方だけが格好よくてもダメなんですね。
そういった部分でプレイする人が違和感を覚えないように、
僕自身、ゲームの部分を何度もプレイさせていただきました。
シームレスにすることが今作のテーマでしたが、
それはアクションとムービーの切り替わりという技術的なことだけでなく、
プレイしている人の気持ちの部分でもシームレスにすることが
すごく大事だと思ったんです。
- 岩田
- 気持ちの部分でもシームレスなんですね。
- 北裏
- はい。プレイしている人が、ストーリー部分もアクション部分も
気持ちが途切れずに楽しめることが大事だと思いました。 - 岩田
- 奇しくも、北裏さんと早矢仕さんのお2人は、
ゲーム部分とムービー部分がくっついたときに
大きな手ごたえを感じたとおっしゃいました。
そのことについて、坂本さんはどう考えますか? - 坂本
- 今回の『METROID Other M』の構造は
基本はアクションゲームではあるのですが、
アクション部分とストーリー部分をうまく融合させることで
いままでにない“アドベンチャーのようなアクションゲーム”
というものがつくれると思ったんです。 - 岩田
- 坂本さんはかつて、
『ファミコン探偵倶楽部』(※8)などの
テキストアドベンチャーゲームをつくったこともありましたよね。
『ファミコン探偵倶楽部』=ファミコンディスクシステムなどで発売された、アドベンチャーゲームのシリーズ。第1作目の『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』は1988年4月に発売された(前後編に分かれており、後編は6月発売)。
- 坂本
- はい。その経験からも、
「ストーリーをちゃんと見せるアクションゲーム」
をつくるうえでは、一見全然関係ないように見える
テキストアドベンチャーゲームの構造が、
実はアクションゲームにも活かせるんじゃないかと感じていたんです。
アドベンチャーゲームのときは、お話の合間に
コマンド選択で「しらべる」や「移動」などを
選んで実行していましたが、
それがアクションゲームでは、敵との戦闘だったり、
実際にキャラクターを動かしての移動だったりと、
自分で操作するアクションに置き換わるわけです。 - 岩田
- ジャンプしたり、弾を撃ったりする操作が、
アドベンチャーゲームのコマンド選択にあたると。 - 坂本
- はい。自分で動かす分だけ、ゲームへの没入感も
コマンド選択とはまた全然違ってくると思うんです。
それでお話の重要なところではストーリームービーがはじまって、
そこでまた意外な展開だったり、新しい謎に出くわしたりがあって、
次に進みたくなるようなモチベーションになって、
ストーリー上の緊張感だったり、
サムスの心情なんかを引きずったまま、
またアクションパートへ戻るという流れができると。
- 岩田
- なるほど。ムービーがアクションの合間に入る
単なる賑やかしだったり、演出上のデコレーションというのではなく、
アクション部分でもムービー部分でも同じ感覚で
一連の遊びとして楽しむことができれば、
それは新しい遊びになるんじゃないか、ということですね。 - 坂本
- そういったストーリーも楽しめる『METROID』が
今回は実現できたように思います。
操作性をシンプルにしたのも、
できるだけ多くのお客さんにこの
「ストーリーをちゃんと見せるアクションゲーム」
を楽しんでほしいと考えたからなんです。
ひとりでも多くの人に触れていただきたいと思っています。 - 岩田
- それでは最後に、
本作を待ちのぞんでいただいている
お客さんへのメッセージということで、
北裏さんからお願いできますか? - 北裏
- はい。できるだけ高いクオリティのCGを実現したいということで、
今回はがんばってつくってきましたが、
実はサムスの声優さんにも注目していただきたいです。
サムスという女性は、生きるのがちょっとヘタなところがあるんですね。
そこで声優さんも、技術的にうまいとかではなく、
自分の言葉で、ごく自然にしゃべることができる人を選びました。 - 坂本
- サムスの素に近い感じなんです。
- 北裏
- そうですね。あと、サウンドに関しても、
ストーリーをメロディに入れられる作曲家ということで、