『METROID Other M』
開発スタッフ篇
- 岩田
- プログラマーのチーフだった荒蒔さんは、
どんなことで大変でしたか? - 荒蒔
- いろいろありましたけど、
やっぱりWiiリモコン1本だけの操作にするというところで
いろいろ試行錯誤がありました。
途中から加わったスタッフからは、
「どうしてヌンチャクを使わないの?」と必ず言われるんです。
もちろん、Wiiリモコン1本だけでは
使えるボタンが少なかったので、
サムスの多彩な動きをどうやって操作するかで、
何度も何度もボタンの会議をやってました。 - 岩田
- ボタン会議ですか。
- 荒蒔
- はい。その結果、少ないボタンにもかかわらず
多彩な動きができるようになって、
みんなが使いやすいものができたと思います。
あと、今回はけっこうプログラムのスタッフが多かったんですけど、
みんなが「ゲームをよりよくしよう」と、
どんどんふくらませてつくってしまうんです。
ただ言われたことだけをプログラムするのではなく、
ひとりひとりがゲームを面白くするために、
それぞれがいろいろ組み立てていくようなこともしていたんです。
- 岩田
- プログラマーであっても
自分でアイデアを考えて、それを実際に組んでいたんですね。 - 荒蒔
- そうなんです。ところがちょっとやりすぎて
あふれるような感じにもなりまして、
みんながつくったものをどう残して、
それがちゃんと器に入るように、というところでも
今回は試行錯誤がありました。 - 岩田
- 善意でつくってくれたんだから、
無下に削るわけにもいかないし、という難しさですね。 - 荒蒔
- はい。で、Wiiのディスク容量に関してなんですけど、
二層を使わせていただけるのであれば、
最初は楽勝で収まるだろうと思っていたんです。
ところが、いろいろ追加追加で入ってきて・・・。 - 岩田
- ムービーもどんどん増えていきますし。
- 荒蒔
- ええ(笑)。しかもやりたいこともどんどん入っていくので、
終いにはディスクがいっぱいいっぱいになってきて、
最後はムービーの尺での換算なんですけど、
「あと何秒なら入ります」というレベルまで来てしまったので、
自分でも驚きました。 - 岩田
- わたしは「二層ディスクの容量がかつかつになっている」という話を聞いたとき、
何かの冗談かと一瞬思いました(笑)。 - 齊藤
- 最後は本当にギリギリでやっていましたよね。
「あと何分しか映像が入りません」と言ったら、
坂本さんは、自分で編集をしながら秒数をカウントされているんです。
「ここは2秒削りましたから、大丈夫ですね」とか言いながら(笑)。 - 岩田
- あははは(笑)。
- 荒蒔
- 最後は本当に秒単位で調整していました。
- 齊藤
- でも、すべて入りましたからね。
- 荒蒔
- 本当に入ってよかったと思いました。
- 岩田
- 秒数をカウントするくらい、
坂本さんの今作へのこだわりは大きかったんでしょうね。
わずかな粘りが、1年半、2年かけたものの価値を
ものすごく変えるときがありますから。
でも、「あらゆるところで粘っていたら永遠に終わらない」ので、
そのバランスなんでしょうね。 - 森澤
- それは本当に感じました。
僕は今回、『METROID』の設定をあずかる者として・・・。 - 岩田
- 森澤さんは、Team NINJAのみなさんや
ムービーを制作する北裏さん、永澤さんたちに
『METROID』の設定資料をつくって渡されていたんですよね。 - 森澤
- そうです。それこそ電話帳何冊分かの厚さになるくらいの、
ものすごいボリュームの資料をつくりました。
{:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"}
{:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} : というのも、今回は
「サムスの着ている服の素材は? コットンですか?」
「着ている服のボタンはメッキですか?」
「ここのフィールドの広さはどれくらいですか?」
みたいな問い合わせがすごく多かったんです。 岩田 : 服の素材もムービーで表現できてしまうからですよね。
そういうことを決めるとき、坂本さんとは相談しないで
だいたいのことは森澤さんに任されていたんですか? 森澤 : 任されてはいたんですけど、
坂本さんが絶対に譲れないポイントというのがあるんです。
なかでもけっこう印象的だったのが、
サムスのパワードスーツというのは、
それぞれアビリティを開放されることによってスーツの色が変わるんです。 岩田 : 変わりますね、はい。 森澤 : 最初は黄色、次に代表的なオレンジ色、
最後はグラビティスーツといって、身体が紫色になるんです。
それは任天堂のオフィシャルの設定ですので、
最後のパワードスーツは当然紫色でつくっていたんですが、
終盤に近いシリアスな演技をする場面で
紫色のサムスが登場するムービーを見ていた坂本さんが突然
「どうしてサムスは紫色なの?」と言い出したんです。 岩田 : そんなこと言われても、
そこはもとからそういう設定なんですもんね(笑)。 森澤 : ええ(笑)。
だから「グラビティスーツなので紫色です」と言うと、
「でも、こんなにシリアスな話をしているときに、
紫の人がちらちらするのはおかしいよ」と言うんです。
「でも、それは、設定ですから」
「いやいや、絶対おかしい」というやりとりになりまして。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : あははは(笑)。 森澤 : そこで北裏さんにも相談したんですけど、
「紫色はやっぱり変だ」とおっしゃったんです。
「ええー? じゃあ、どうしたらいいんでしょうか?」と。
そもそも僕が関わる前から、そういう設定だったのに、
「イヤだ。ここはオレンジのサムスがいい」と言うんです。
それで、僕もう〜んと頭を抱え込んでしまいました。 岩田 : それはハシゴをはずされたに等しいですね(笑)。
で、どうやって解決したんですか? 森澤 : 基本的にいろんなパターンの色を出してみるようにして、
ちょっと紫寄りにしてみたりしたんですけど、
それでは納得できないとなって、
やっぱりオレンジ色がいいということで、
最後はグラビティ機能を開放したときに、
胸のグリーンだったライトが、
少し紫がかったピンクのような色で発光するということで、
グラビティ機能が付きました、と表現するようにしました。
「サムスの着ている服の素材は? コットンですか?」
「着ている服のボタンはメッキですか?」
「ここのフィールドの広さはどれくらいですか?」
みたいな問い合わせがすごく多かったんです。 岩田 : 服の素材もムービーで表現できてしまうからですよね。
そういうことを決めるとき、坂本さんとは相談しないで
だいたいのことは森澤さんに任されていたんですか? 森澤 : 任されてはいたんですけど、
坂本さんが絶対に譲れないポイントというのがあるんです。
なかでもけっこう印象的だったのが、
サムスのパワードスーツというのは、
それぞれアビリティを開放されることによってスーツの色が変わるんです。 岩田 : 変わりますね、はい。 森澤 : 最初は黄色、次に代表的なオレンジ色、
最後はグラビティスーツといって、身体が紫色になるんです。
それは任天堂のオフィシャルの設定ですので、
最後のパワードスーツは当然紫色でつくっていたんですが、
終盤に近いシリアスな演技をする場面で
紫色のサムスが登場するムービーを見ていた坂本さんが突然
「どうしてサムスは紫色なの?」と言い出したんです。 岩田 : そんなこと言われても、
そこはもとからそういう設定なんですもんね(笑)。 森澤 : ええ(笑)。
だから「グラビティスーツなので紫色です」と言うと、
「でも、こんなにシリアスな話をしているときに、
紫の人がちらちらするのはおかしいよ」と言うんです。
「でも、それは、設定ですから」
「いやいや、絶対おかしい」というやりとりになりまして。 {:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : あははは(笑)。 森澤 : そこで北裏さんにも相談したんですけど、
「紫色はやっぱり変だ」とおっしゃったんです。
「ええー? じゃあ、どうしたらいいんでしょうか?」と。
そもそも僕が関わる前から、そういう設定だったのに、
「イヤだ。ここはオレンジのサムスがいい」と言うんです。
それで、僕もう〜んと頭を抱え込んでしまいました。 岩田 : それはハシゴをはずされたに等しいですね(笑)。
で、どうやって解決したんですか? 森澤 : 基本的にいろんなパターンの色を出してみるようにして、
ちょっと紫寄りにしてみたりしたんですけど、
それでは納得できないとなって、
やっぱりオレンジ色がいいということで、
最後はグラビティ機能を開放したときに、
胸のグリーンだったライトが、
少し紫がかったピンクのような色で発光するということで、
グラビティ機能が付きました、と表現するようにしました。
{:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"}
{:.border.border-radius width="250" height="150" loading="lazy"} 岩田 : つまり、スーツはオレンジ色だけど
胸のところのライトの色が紫がかったピンクに変わるんですね。 森澤 : はい。それはちゃんと説明書にも明記したんですけど、
『METROID』の設定をあずかる者としては
どうも腑に落ちなかったんです。
でもあとから、かつてゲームボーイアドバンスの
『METROID』をつくったときのことを思い出したんです。
そのときは、スタッフのひとりから、
「前の設定はこうだったのに、今回はこう変わってるけどいいの?」
と、逆に自分が指摘されたんですね。
そのときに、僕が思ったのは、『METROID』というタイトルは、
老舗のうなぎ屋さんのタレみたいなもので・・・。 岩田 : タレ・・・ですか?(笑) 森澤 : はい。うなぎ屋さんに行くと、「100年続いているタレです」
と言っていたりしますよね。
でも、100年前のタレがそのままあるのではなく
実は新しいタレを継ぎ足し継ぎ足しして、
時代に合わせて、味もどんどん変わっていると思うんです。 岩田 : その、「100年続いたタレ」のように、
「少しずつ変わっていってもいいんだ」っていう理屈を持ち出すことによって、
森澤さんは自らを納得させたというわけですね。 森澤 : えー、納得したというか、
そういう認識でいる・・・ということです(笑)。
でも僕は伝統を守りつつも、それにしばられないで
新しいものをクリエイトすることが大事だと思っています。 岩田 : 確かに、どんどん設定が細かくなるほど、
硬くなっていって、身動きがとれなくなるようなことはありますからね。
その意味で、『マリオ』というタイトルは
すごく大らかにやってる部分と、厳密にやってる部分との2面性があって、
もし『マリオ』が大らかさを捨てて、どんどん厳密になったら
きっといまの『マリオ』はこのようになっていないはずですから。
でも、ハシゴがはずされて大変でしたね。 森澤 : はい(笑)。 [6. やり残したことがないプロジェクト](/others/interviews/jp/wii/r3oj/vol2/6/) {:.read-more}
胸のところのライトの色が紫がかったピンクに変わるんですね。 森澤 : はい。それはちゃんと説明書にも明記したんですけど、
『METROID』の設定をあずかる者としては
どうも腑に落ちなかったんです。
でもあとから、かつてゲームボーイアドバンスの
『METROID』をつくったときのことを思い出したんです。
そのときは、スタッフのひとりから、
「前の設定はこうだったのに、今回はこう変わってるけどいいの?」
と、逆に自分が指摘されたんですね。
そのときに、僕が思ったのは、『METROID』というタイトルは、
老舗のうなぎ屋さんのタレみたいなもので・・・。 岩田 : タレ・・・ですか?(笑) 森澤 : はい。うなぎ屋さんに行くと、「100年続いているタレです」
と言っていたりしますよね。
でも、100年前のタレがそのままあるのではなく
実は新しいタレを継ぎ足し継ぎ足しして、
時代に合わせて、味もどんどん変わっていると思うんです。 岩田 : その、「100年続いたタレ」のように、
「少しずつ変わっていってもいいんだ」っていう理屈を持ち出すことによって、
森澤さんは自らを納得させたというわけですね。 森澤 : えー、納得したというか、
そういう認識でいる・・・ということです(笑)。
でも僕は伝統を守りつつも、それにしばられないで
新しいものをクリエイトすることが大事だと思っています。 岩田 : 確かに、どんどん設定が細かくなるほど、
硬くなっていって、身動きがとれなくなるようなことはありますからね。
その意味で、『マリオ』というタイトルは
すごく大らかにやってる部分と、厳密にやってる部分との2面性があって、
もし『マリオ』が大らかさを捨てて、どんどん厳密になったら
きっといまの『マリオ』はこのようになっていないはずですから。
でも、ハシゴがはずされて大変でしたね。 森澤 : はい(笑)。 [6. やり残したことがないプロジェクト](/others/interviews/jp/wii/r3oj/vol2/6/) {:.read-more}