『マリオカートWii』
5. 「マリオカートチャンネル」で広がる世界
- 岩田
- 今作の『マリオカートWii』には、
見えない部分にもいろいろと
新しい要素が詰め込まれているようですね。 - 紺野
- やっぱり、DS版のWi-Fi通信で実現できなかったこともあって、
スタッフのモチベーションがすごく高かったんです。 - 宮本
- DS版でやり残したことはもちろん大きかったんですけど、
ゲームキューブ版で、LANケーブルの対戦(※13)にチャレンジしたことも
大きなベースになったと思います。
LANケーブルの対戦=ゲームキューブをブロードバンドアダプタに接続すれば、複数のテレビモニターを使って、シングルプレイが最大8人、タッグプレイだと最大16人までが同時にプレイできた。
- 岩田
- ゲームキューブでのLAN対戦の基礎研究が
今回はすごく生きたということなんですね。 - 宮本
- そうです。もともと『マリオカート』のようなゲームでは
通信対戦が難しいと言われていた中で実現できましたから、
通信関係のスタッフはかなり自信を深めていました。 - 紺野
- ですから、対戦だけでなく、タイムアタックのランキングでも、
新しいこともやろうということになりました。
ただ、ランキングに関しては、岩田さんから
「“あなたは8万位です”と言われて、どんな意味があるの?」
と言われたことがありましたけど、わたしたちも同じ気持ちでした。 - 岩田
- はい、確かそれはWi-Fiコネクションの開発過程の
会議での発言ですよね。
オンライン対戦やランキングでは、少数の強者だけが幸せになって、
大多数の勝者になれなかった人たちが楽しめないかもしれないことが
課題だと思います。これは、Wi-Fiコネクションの開発を
始めた頃から、ずっと社内で議論してきたことですよね。
そこを何とか解消したいと思って、
『マリオカートWii』でも新しい試みを行ったんですね。 - 紺野
- そこでランキングは分布図マップにしてみました。
各タイムごとにMiiを積み上げるようになっていて、
自分がだいたいどのくらいの成績なのか、一目でわかるようなりました。 - 岩田
- 「あなたは83431位です」と言われるよりも、
世界中に似たようなタイムの仲間が、
こんなにいるんだとわかったほうが格段にうれしいですよね。
- 紺野
- しかも、世界と国内、それにWiiフレンドのメンバーとの比較も
簡単にできるようにしました。
さらに家族4人で遊べるようになっています。
その4人の位置関係も切り替えて見ることができますので、
たとえば、わたしと息子のタイム差もひと目でわかるようになっています。 - 岩田
- ランキングのほかにも、
どのような新しい要素を盛り込みましたか? - 紺野
- マッチングですね。先ほども話しましたけど、
DS版では対戦相手が次第に減ってしまうといった傾向にありました。
今回は最大12人で対戦できるようになっていますが、
1レースごとに、新たなプレイヤーが合流できるようにしました。
つまり、最初のレースでは6人で対戦したとして、
次のレースでは2人抜けたとしても、
新たに別のプレイヤーが参加してきて、
8人の対戦、あるいは一気に12人の対戦になることもあります。 - 岩田
- つまり、対戦相手が最初から固定されないということですね。
- 紺野
- はい。しかも、すでに対戦中の人たちに合流するときは、
次のレースがはじまるまで、その時点で行われているレースを
ライブ中継のように観戦することもできるんです。 - 宮本
- それに、マッチングするときは、地球儀が表示されるんです。
シアトルの人だったら、ちゃんとシアトルにMiiが立っていて、
どこの国の人か、一目瞭然なんです。 - 岩田
- それは、世界を相手に戦ってる感じがするでしょうね。
- 紺野
- 一方で「友達と遊ぶ」という面でも、今回はすごく強化しました。
たとえば岩田さんが世界の見知らぬ人たちと対戦していても、
フレンド関係にある宮本さんが、
岩田さんの対戦チームに簡単に合流することができます。 - 岩田
- それを実現するのが、「マリオカートチャンネル」ですね。
- 紺野
- ええ。だから、『マリオカートWii』のディスクを入れてなくても、
Wiiを立ち上げて、「マリオカートチャンネル」をチェックするだけで、
岩田さんがWi-Fi対戦をやっているということが
わかるようになっています。
そこで、宮本さんは「合流する」を選べば
岩田さんと一緒に対戦を楽しむことができるんです。
- 岩田
- わたしが見知らぬ人と遊んでいても、
そこに宮本さんが遊びにやってくるんですね。 - 紺野
- ですから、Wiiフレンドの多い方だと、
気がついたときには、対戦相手が全員フレンドだったということも
あり得るんです。 - 岩田
- どうしてそのような機能をつけようと思ったのですか?
- 紺野
- DSのときは、友達と一緒に遊ぼうとすると、
電話をかけてから「これから対戦しよう」と
申し合わせてからでないとできなかったんです。
それって面倒ですよね。でも、仕組みが便利になれば、
もっと友達と対戦を楽しんでいただけるようになるのかなと思いました。
また、「マリオカートチャンネル」には
ゴーストが配信されるようになっています。
ですから、初めて遊ぶ方でも世界最速のゴーストを相手に
挑戦するようなこともできるんですが・・・。 - 岩田
- たぶん相手になりませんよね。
アッと言う間に、背中が見えなくなっちゃいますから。 - 紺野
- そこで、自分のタイムに見合ったゴーストが
簡単にダウンロードできるようにしました。 - 岩田
- 自分よりちょっと速い人と対戦したほうが、
上達も早くなるんですよね。 - 紺野
- さらに、ゴーストバトルの要素も追加しました。
スマブラの「百人組み手」のように、
ゴーストとレースをするモードも入っています。
「マリオカートチャンネル」に、
ランダムにゴーストデータが送られてくるようになっていて
自分とほぼ同じレベルのゴーストと対戦できるんです。 - 岩田
- コンピュータのデータと競争するのとでは、
まったく違った体験になるんでしょうね。 - 紺野
- コースのライン取りから、キャラクターやクルマの種類も、
プレイヤーによって異なりますから、こんな近道があったんだとか、
いろんな発見があるでしょうね。 - 岩田
- ところで、あえて訊きますけど、
バイクとカートはどっちが有利なんですか? - 紺野
- お答えするのは難しいんですが、バイクも結構いいかもしれません。
コースによって、カートが有利な場合もありますし、
逆にバイクのほうが走りやすい場合もあります。
バイクはウイリーをすることでスピードがアップするので有利なのですが、
ウイリー中はハンドル操作が効かないので、
直線コースのみで有効だったりします。
コーナーが多いコースは、
ドリフトが使えるカートを選べばいいでしょうね。
プレイヤーの皆さんが、いろいろ試していく中で、
最終的にはこれが有利だったということになるように、
調整をしたつもりです。 - 岩田
- 紺野さんたちも予想もしないような走りをするプレイヤーがいて、
きっと度肝を抜かされることになるんでしょうね。
- 紺野
- 「マリオカートチャンネル」のゴーストを見るのが楽しみです。
- 岩田
- それでは、最後にお客さんへのメッセージをお願いします。
まずは芦田さんから。 - 芦田
- 僕自身、自分の息子と『マリオカートWii』を
一緒にプレイするのを楽しみにしています。
『マリオカートWii』にはWiiハンドルが1個しか入っていませんから、
ぜひ別売のWiiハンドルもお買い求めください。
できれば、家族全員肩を並べてWiiハンドルで遊んでいただきたいですね。 - 紺野
- みんなでワイワイ楽しんで頂きたいです。
「ニンテンドーWi-Fiコネクション」を使った遊びも充実しています。
家族や友達はもちろん世界中の人たちと
マリオカートWiiを楽しんで頂ければ
私たちもうれしいです。
あ、マリオギャラクシーから新キャラも
参戦していますのでお楽しみに・・・。 - 岩田
- では最後に宮本さん。
- 宮本
- 『マリオカート』は基本的にコミュニケーションゲームです。
表向きはレースゲームの顔をしてますけど、
レースでなくてもいいという商品ですので、
その意味でWi-Fiにつなぐことで、
これまでより4倍くらいに広がった感じがしています。
Miiが出てきたり、コンテストチャンネルにつないだり、
DS版でもやっていましたけど、世界中につながるという意味では、
今回はさらに世界を感じて遊べる
コミュニケーションツールになったという実感があります。 - 岩田
- それにしても今回は、紺野さんがしっかり話してくれましたので、
宮本さんから訊くことがあまりありませんでしたね。 - 宮本
- いや、今日はあまりしゃべらないようにしようと思っていたので、
その割にはしゃべったなあって(笑)。 - 岩田
- みなさん、本当にお疲れ様でした。
- 芦田
- あの、ちょっとお見せしたいものがあるのですが?
- 岩田
- はい、どうぞ。
- 芦田
- 先ほど、紺野さんがゴールデンハンドルの話をしていましたけど、
実際にあったらうれしいだろうなと思いまして
こんなものをつくってみました。 - 一同
- ほう!
- 紺野
- わたしもちょっとよろしいですか?
- 岩田
- はい、どうぞ。
- 紺野
- 今回、岩田さんは
恒例のちゃぶ台返しのことを訊いてくれませんでしたよね? - 一同
- (笑)。
- 岩田
- ちゃぶ台返しって、今回はあったんですか?
- 紺野
- ありませんでした。
- 岩田
- なかったでしょう。
わたしは端から見ていて、あったように感じませんでしたから。 - 紺野
- でも、これまでの「社長が訊く」を読み返してみると、
ちゃぶ台返しの話題が恒例になってますし、
読者のみなさんも、その話を期待してるのかなあと思いまして、
事前に宮本さんに相談したくらいなんです。 - 一同
- (笑)。
- 岩田
- 無理に、ちゃぶ台返しの話を見つける必要はないんですよ(笑)。
- 紺野
- でも、海外のスタッフと一緒に仕事をしていても、
よく話題に出てくるんです。
「この方向でつくっていったら、
ミスターミヤモトからちゃぶ台返しされるんじゃないか」って。 - 岩田
- 海外のスタッフにも、ちゃぶ台返しは有名な話なんですね。
英語で何と言うんですか? - 紺野
- リターン・ティー・テーブルとか言ってましたね。
そこで、海外のスタッフには
ちゃぶ台返しのことを心配しても仕方がないし、安心してほしいと。
なぜなら、わたしは「ちゃぶ台返し返し」を習得してるからって。 - 一同
- (笑)。
- 紺野
- そう言うと、「ちゃぶ台返し返し」ってどんなものなのかって、
真剣に聞かれるんです。
そこで、ちゃぶ台を返そうとする前に、宮本さんに泣きつくと。 - 宮本
- 泣きつかれても、僕は知りません(笑)。
でも、今回はちゃぶ台を返そうにも返すことがなかったんですよ。
僕は基本的に、ゲームはおもしろければいいと思ってますから。 - 岩田
- ちゃぶ台は返されないこともあるということですね。
ところで、芦田さんはこの話題に関して
ぜんぜん笑っていませんね?
やっぱりハード屋さんにとっては、
ちゃぶ台返しはかなり深刻な事態になりますからね。 - 芦田
- 本当に深刻です。
任天堂の製造部門・営業部門のスタッフはもちろん、
外部協力会社の大勢の皆さんに、
この事態を何と説明しようか、汗だくになりますね。 - 一同
- (笑)。
- 芦田
- だから、発売日が決まるまでは、不安で仕方がないんです。
とくに今回のWiiハンドルは同梱されますしね。 - 岩田
- でも、もう大丈夫なんでしょう?
- 芦田
- はい、ええ、たぶん・・・。
- 岩田
- みなさん、本当にお疲れ様でした!