『スーパーマリオギャラクシー』
Vol.2 開発スタッフ 篇
- 岩田
- もともと『マリオ』というのは、
気持ちのよい操作ができれば、自由度の高いゲームだと思います。
はねマリオになって空を飛んだり、巨大化したり、
ときには、タヌキにも変身することもあります。
でも、今回は変身はとくに徹底してますよね。
ハチマリオなんて、反則のように思うんですけど(笑)。 - 一同
- (笑)
- 元倉
- ハチマリオに関しては、初心者救済の意味合いもあります。
ジャンプがうまくできない人でも、空を飛ぶことで、
ミッションをクリアできるようにしました。 - 岩田
- ハチマリオは、モニターの結果でも、
とくに女性に人気があるようですね。 - 元倉
- 実は、いまとはまったく違った姿をした
ハチマリオのときもありました。
でも、「これってマリオじゃないよ!」って
みんながすごく嫌がって、文句を言いにきたんです(笑)。
- 岩田
- それは変えてもらってよかった。
- 清水
- 最終的には、特定のアイテムで
ハチマリオに変身できるようになりましたけど、
最初は呪いで変身してしまう設定だったんです。
呪いをかけられて、いやいやハチの姿にさせられて、
しかも、マリオのアクションは制限されるんです。
だから、「早く元の姿に戻りたい!」って思うようなイメージがあって。
(くやしそうに)ところが・・・わたしが、
マリオアクションのプログラムをせっせとつくっている間に、
いつの間にか、方向が変わってしまって・・・。 - 岩田
- それはきっといい判断だったんですよ(笑)。
バネマリオも、なんか変な感じでいいですよね。 - 清水
- あれこそ、呪いが生きる姿だったんです。
- 一同
- (笑)
- 元倉
- ディレクターの小泉さんから、
ずっと跳ね続けるマリオをつくってくれと言われまして。 - 岩田
- やっぱりデザインより、機能が優先なんですね。
- 元倉
- どういう感じで跳ねるのかは、
いろいろ考えて、現在の形に落ち着きました。 - 清水
- バネマリオで、ふつうのコースを遊んでみると、
とてもおもしろかったんです。
プレイヤーの思うような動きにならない、というのも、
ゲームのおもしろさの一面だと思うんです。 - 岩田
- その気持ち、よくわかります。
カービィでわざと不向きな能力をとって、
それでクリアするようなことに通じるところがありますよね。 - 清水
- だから、開発初期のころは、
ハチマリオであれ、バネマリオであれ、
どこでも変身できるようにしよう、
という話もあったんですけど、さすがにそうすると、
ゲームのバランスが崩れてしまうからやめました。 - 岩田
- もちろん、いろんな姿に変身するのは、
これまでの『マリオ』にもありましたけど、
今回は、シリーズ最多の変身数と言ってもいいかと思います。
誰の仕業で、こういうことになったのですか(笑)。
- 林田
- やっぱり、最初のアイデアはディレクターの小泉さんですね。
「マリオが変身するとしたら、なにがいい?」という
お題を与えられた女性スタッフが、
「ハチマリオがいい」と言って、メモを貼っていたんです。
それを見た小泉さんが、とってもうれしそうに「ハチだよ?!」って。
「ハチマリオ用のステージをつくんなきゃあ」なんて言い出して、
この話がどんどん進んでいったんです(笑)。 - 岩田
- ハチマリオのアイデアひとつで
構成が変わっていったわけですね。
でも、それで仕事が増えちゃうわけですけど、
みなさん、すごく楽しそうに語りますよね。 - 林田
- やっぱり、バネマリオとかが動くところを
はじめて見ると、すごくおもしろいんです。
最初に見たときは、お腹をかかえて笑っちゃったくらいです。
でも、ハッと我に返ったときに、
「ああ、ステージ構成を考えるのはオレの仕事か」って。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- スタッフのみなさんが楽しみながら
『マリオギャラクシー』をつくった感じは、
商品からあふれ出ているように思います。 - 白井
- キャラチームから、
すごくおもしろいキャラクターのアイデアが出てきて、
マップチームの側も、それをいかに料理したら楽しくなるか、
お互いに意見を出し合いながら、つくりあげていきました。
だから、チームワークは本当によかったと思います。
オバケマリオのアイデアが出てきたときも、
「なんじゃ?こいつ」と思いながらも、
『ルイージマンション』(※5)のようなお化け屋敷をつくろうよ
という話でまとまっていくようなところがあって、
ステージ構成を考えるのはすごく楽しかったですね。
『ルイージマンション』=ゲームキューブと同時に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。2001年9月発売。
- 岩田
- 舞台が宇宙なので、
いろんなアイデアを入れる器としては、すごく得をしているんですね。
だって、星が異なれば、なにをしてもOKじゃないですか。 - 林田
- だから、リンゴの形をした惑星もアリなんです。
『ゼルダ』だと、リンゴの惑星なんか絶対に出せないですよね。 - 一同
- (笑)
- 白井
- ヨッシーの顔が宇宙に浮いていても、
ぜんぜん違和感がないんです。 - 林田
- でも、「ヨッシー顔の星を、出しちゃってもいいのかなあ」って、
ちょっと心配になりまして、宮本さんに聞いてみたら、
ひとことで「いいよ」って(笑)。 - 岩田
- 宮本さんは、
このプロジェクトにいろんな影響を及ぼしたと思うんですけど、
宮本さんがやったことで、作り手として
悔しい思いをしたことはありませんでしたか? - 清水
- 実はひとつだけ・・・。
開発初期のころ、マリオの周囲にあるコインは、
スピンでまとめて巻き取れるようになっていたんです。
ところが宮本さんは、これに賛同してくれなくて、
「マリオはコインに向かって、体当たりして取るのが正しい」
ということで、それが最終仕様になったんです。
でも、簡単にコインが取れなくなったのが、
そのときはとても悔しくて・・・。 - 一同
- (笑)
- 白井
- ぼくらとしては、コインをたくさんとっていくのが
『マリオ』のゲームだと思っていたので・・・。
初期のころは、コインはマップ上にたくさん置いてあったんです。
でも、「こんなにあっても意味ないよ」って、宮本さんに注意されて・・・。
そこで、コインは回復用のアイテムにして、数も絞り、
集めるものはスターピースに統一しました。
すると、ゲームのバランスがきゅっと絞られたんです。
その仕事ぶりを見たとき、宮本さんってやっぱりスゴイなと思いましたね。 - 清水
- コインの価値を高めることで、わざわざ取りに行かせた方が
ありがたみが出てくるということだったんです。 - 岩田
- コインを取りに行くという行為が「作業」になってしまうのか、
それとも、「価値のある行い」になるのか、
そのあたりの違いを、宮本さんは本質的にわかっていて、
そのような整理をしたんでしょうね。