『スーパーマリオギャラクシー』
Vol.4 宮本 茂 篇
- 岩田
- さて、最終回の今回は、
マリオの生みの親であり、
今作でもゲームデザインを担当されている
宮本さんから話をお訊きします。 - 宮本
- よろしくお願いします。
- 岩田
- 宮本さんには、いろいろとお訊きしたいことがあるのですが、
まず最初に、『スーパーマリオギャラクシー』の大事な要素である
アシストプレイについて、話を訊こうと思います。 - 宮本
- アシストプレイは、東京の開発スタッフががんばって
本当にいい形に仕上げてくれましたね。 - 岩田
- そもそも、2人同時プレイって
初代の『マリオブラザーズ』をつくった宮本さんにとって
永年の課題になっていたと思うんです。
わたしがハル研究所時代に
スーパーファミコンで『星のカービィ スーパーデラックス』を
つくっていたときに、宮本さんからお題をもらったことが
ヘルパーシステムができたきっかけでしたね。 - 宮本
- そうでしたね(笑)。
本当に2人同時プレイは永年の課題でした。
だから、『Newスーパーマリオブラザーズ』(※1)の
「マリオvsルイージ」(※2)も、長い間粘って
なんとかあのような形にしたんですけど。
『Newスーパーマリオブラザーズ』=DS用ソフトとして、2006年5月に発売された、横スクロールアクションゲーム。
「マリオvsルイージ」=『Newスーパーマリオブラザーズ』で遊ぶことのできる、2人対戦モード。
- 岩田
- だから、宮本さんにとっては、
『マリオブラザーズ』の誕生以来、
およそ25年間、ずっと課題にしてきた答えが、
今回のアシストプレイでようやく実現できたという
手応えを感じてるんじゃないですか? - 宮本
- そうですね。僕自身、
どんなソフトをつくるときも2人同時プレイに関しては、
つねに言い続けてきたようなところがありましたし、
スタッフも、その課題を覚えていてくれて、
どのチームもずっとチャレンジし続けてくれました。
というのも、先にやっておかないと、
そのうち僕から「あれはどうなってんの?」って
言われるのに決まってるという面もあったと思うんですけど(笑)。
- 岩田
- (笑)
- 宮本
- でも、僕自身があまのじゃくなところもあって、
そういう提案が出てくると、うれしいと思う反面、
甘く見てるなあと思ったりするんです。 - 岩田
- そんな簡単にはいかないぞって。
- 宮本
- そう。逆に食ってかかったりすることもありましたね。
でも、簡単じゃないぞと言いながらも、なんとかしたいとも思っていて、
Wiiではポインターが使えるようになりましたし、
その機能を使って、2人同時プレイでやりたいことを、
どんどん積み上げていったんです。 - 岩田
- 開発の最後の方で、宮本さんは
1人プレイでできること、2人プレイでできることを
きれいに整理されたという話を訊きましたよ。 - 宮本
- 1人プレイの方がすごく複雑になっていたので、
機能の何割かははずして、アシストプレイに持っていって、
それで、かなりスッキリしました。
「仲良く2人でプレイ」って、口で言うのは簡単なんです。
でも2人対等の対戦ならいいのですが、スクロールゲームで
片方に主導権がある作りだと、
2人目の人が本当に楽しめるのかということが
永年の課題のひとつでした。
どうしても、2人目のプレイヤーはやらされてる感があって、
あまり楽しくなかったりするんです。 - 岩田
- 1人目の楽しさと、2人目の楽しさが段違いだと、
2人目の人は接待していることになるんですね。 - 宮本
- そう、接待プレイになってしまうので、
2人目の人も楽しく感じられるものにしたかったんです。
もちろん、2人で遊ぶというのは、
その間になにがしかの関係があるので、
そこで補完されるところもあるわけです。
たとえば、仲のよい友達どうしであれば
なにで遊んでも楽しいわけですね。
けど、アクションゲームとして、
2人目もそれなりに楽しくあってほしいという気持ちがあって。
そこで、Wiiリモコンのポインターをうまく使うことで、
2人目の人も強い参加意識を持ちながら遊べるようになったと思います。
初期の段階では、アシストをする側も
Wiiリモコンを振って、スピンアクションが出せたり、
Aボタンを押すだけでジャンプができるように
していたこともあったんですけど、
そこまですると邪魔プレイになるし遊びにくい、
ということで、やめました。
実は、邪魔をするのも遊びのひとつになるんですが、
最終的には、接待機能も持ち合わせたアシストプレイとして
2人で遊ぶスタイルにまとめることができたと思っています。
- 岩田
- 今回は、たくさんのモニターの人たちに遊んでもらったようですね。
- 宮本
- それはもうたくさん。
子供たちと両親とで会社に来て一緒に遊んでもらったり、
50歳以上の人たちに遊んでもらったり、あっ、そういう私も
50歳以上ですが・・・
とにかくいろんな人に遊んでもらって、
観察したりレポートをもらったりしました。
「おもしろい」って書いてくれてるけど顔を見てると
そんなに面白がっていない・・・とか、
難しいコースほど面白いと答える人がいるとか、
色々分析しながらレポートを読みましたね。 - 岩田
- アシストプレイに関しては
どんなふうに遊ばれるというイメージがありますか? - 宮本
- もともとイメージしていたのは、
子どものそばに親がついていて、
たとえばお母さんが子どものアシストをすると。
でも、その逆もあってもいいと思うんです。
お母さんがマリオを動かして、子どもが
「お母さん、こっちに敵がいるよ」って
アシストするようなイメージも強くあったりします。
親子で助け合いながら、遊ぶことができたらいいなということは
これまでずっと実現したいと思ってきたことで、
今回の『マリオギャラクシー』では、
そういうことがだいぶできそうだという手応えを感じています。
横にいて、初心者の人には教えがいがありますし、
いろんな会話も生まれそうですしね。 - 岩田
- 3Dに慣れていない人に対しては、
ポインターを使って、「次はこっち」って言えるところが、
いままでになかったような「場」で遊ばれる感じはしますね。 - 宮本
- そう! それがとても便利なんです。「これ!これ!」とかね。