『斬撃のREGINLEIV』
1. Wiiの発売前に開発がスタート
- 岩田
- 今日は、株式会社サンドロット(※1)の
みなさんにお越しいただきました。
『斬撃のREGINLEIV』について、
訊かせていただきますので、よろしくお願いいたします。 - 一同
- よろしくお願いいたします。
- 岩田
- まず、このソフトはCERO(※2)のレーティングで
「D」判定をいただいた17歳以上の方が対象のゲームです。
今日は、そのことについても話題にしたいと思っています。
それでは、みなさんがどんなことを担当されたのかも含めて、
自己紹介をしていただきたいと思います。
本間さんからお願いします。
株式会社サンドロット=2001年3月に設立された、ゲームソフト開発会社。これまで、巨大ロボットや巨大生物が暴れ回る3Dアクションゲームなどの開発を主に行ってきた。本社・東京。
CERO=「コンピュータエンターテインメントレーティング機構」の略称。ゲームソフトに含まれる表現内容を審査し、対象年齢等を表示するレーティングを実施している。レーティングには、全年齢を対象とする「A」から、18歳以上のみを対象とする「Z」までの5つの年齢区分と、「教育・データベース」等のその他の区分がある。
「CEROレーティングマーク」について詳しくはこちら。
- 本間
- はい、ディレクターの本間と申します。
ゲーム全体のディレクションをしまして、
シナリオもわたしが担当しました。
- 五十嵐
- グラフィックディレクターの五十嵐です。
今回、わたしは背景やキャラクターなどの
デザインの方向性を決める作業を担当しました。
また、マップ構成の原案を考えて、
こういう遊びを組み立てたら面白いんじゃないかというのを
いちばん最初に考える仕事もしました。
- 野口
- プログラムディレクターの野口です。
主にこのゲームのメインのシステム部分の構築と、
敵キャラクターやプレイヤーなどの
オブジェクトの処理を担当しました。
それと、自然地形周りの設計です。
また、Wiiリモコンを使用したアクションゲームは
どうあるべきかといった、ゲームの設計に時間をかけました。
- 岩田
- ありがとうございます。
では任天堂からの出席者のみなさんも、
自己紹介をお願いします。 - 吉川
- 企画開発部の吉川です。
任天堂側のディレクターとしてゲームをみたり、
タイトル名とかアートワーク関連のコーディネーションとか、
その他諸々、いろいろ何でもありの仕事をしました。
- 岩田
- このソフトを世に出すために
やらなきゃいけないことは何でもやる役割、
という感じですかね。 - 吉川
- はい、いろいろありましたが、
僕にできることは何でもやりました。 - 山上
- 企画開発部の山上です。プロデューサーをしています。
いまここにいるメンバーでできないことは、
全部僕がやるという役回りをしていました。
また、当初の仕様にはまったくなかったのに、
「本間さん、Wi-Fi協力プレイを入れませんか?」など、
途中からいろいろな無茶振りをするような役目も担当しました。
- 岩田
- 確かに無茶振りです(笑)、
Wi-Fi機能を途中から入れようというのは。
さて、この商品の話に入る前に、
任天堂とサンドロットさんとのご縁の話を訊きたいのですが。 - 山上
- いちばん最初の出会いは2004年にまでさかのぼります。
任天堂の業務部から紹介されたのがはじまりでした。
「町をつくって、その町を壊すデカいロボットを
つくるのがとても得意な会社があって、
代表作は『THE 地球防衛軍』(※3)です。
一度会ってみませんか?」という話でした。
そこでお会いすると、企画を2本提案されまして、
実はその1本が、DSで発売中の『超操縦メカMG』(※4)で、
もう1本が、今回の『斬撃のREGINLEIV』だったんです。
で、『斬撃のREGINLEIV』の元になった企画は
とても魅力的だったんですけど、
ものすごくスケールの大きい内容だったんです。
わたしにはそんなにデカい案件をいきなりまとめる自信もなく、
初めてのおつきあいということもありましたので、
「まずは携帯ゲーム機向けからはじめませんか?」
という提案をさせていただいて、
『超操縦メカMG』の開発からはじめることにしました。
『THE 地球防衛軍』=2003年6月に、株式会社ディースリー・パブリッシャーより発売されたアクションシューティングゲーム。これまでシリーズ3作が発売されている。
『超操縦メカMG』=2006年9月に発売された、DS用のアクションゲーム。MGとはマリオネーションギアの略で、プレイヤーが操縦する巨大メカのこと。
- 岩田
- サンドロットさんに最初にお会いしたとき、
山上さんの目にはどういうふうに見えましたか? - 山上
- ひとことで言うと、目つきが違っていました。
すごく失礼な言い方をするなら、こびを売らないんです。
だから、こっちの出方次第によっては、
「オレたちはお前らとはつきあわねえぞ」というくらいの
パワーと迫力を感じました。
ただ、それは僕も望むところでしたし、
これからつくろうとしているゲームの面白さを、
とにかく熱く熱く語ってくださったんです。 - 岩田
- 山上さんは、まるでその熱が乗り移ったかのように
わたしの部屋に企画プレゼンに来ましたよね(笑)。 - 山上
- はは、そうでした(笑)。
- 岩田
- あのときは、
「あなた、どこの会社の人?」という感じでしたよ(笑)。 - 一同
- (笑)
- 岩田
- それで『超操縦メカMG』ができて、
いよいよWiiでの開発がはじまることになったのですが、
最初はどんなやりとりではじまったんですか?
- 山上
- サンドロットさんから
「やはり最初に提案したスケールの大きい企画をぜひやりたい」と
またまた熱く語られまして、
わたしたちもその言葉にとても迫力を感じたんです。
それに、Wiiリモコンを振って斬るというアクションが
Wiiにとても合っていると思えましたし、
そういうタイプのゲームはまだありませんでしたので、
ひとつの新しいジャンルになるだろうと考えました。 - 本間
- そもそも僕がこの企画を考えはじめたのは
7〜8年前のことで、いつか実現したいと思っていたんです。 - 岩田
- 長年、温めてきた企画なんですね。
- 本間
- ええ。ところが物量があまりに大きすぎて、
その分、お金も時間もかかりますし、
つくるのは大変だと思っていたんです。
そこで、チャンスが来るのをずっと待っていたのですが、
幸運なことに、任天堂さんとご縁ができて、
「ついにそのときが来た!」と。
ですから、最初は簡単なテストバージョンを
つくるのがふつうなんですが、
力を入れて試作版をつくりました。
これまで自分たちのなかにためてきたノウハウを
最大限に注ぎ込んでつくることにしたんです。 - 岩田
- そのくらい、本間さんたちにとって
特別な企画だったんですね。 - 本間
- はい。
- 岩田
- 実際、この企画の開発がスタートしたのは
ずいぶん前のことになりますよね。 - 山上
- 企画にOKが出たのは
2006年の夏から秋にかけてのことですので、
丸3年以上たちました。 - 岩田
- Wiiをまだ発売していないときでしたよね。
その試作品を、わたしも見させていただいたのですが、
試作品としてはずいぶんと欲張りにできあがっていたので
驚いたことをよく覚えています。
その試作品でもっとも実現しようとしたのは
どんなことだったんですか? - 本間
- Wiiリモコンを振って敵を斬ったときの爽快感です。
そもそも、僕らがすべてにおいて求めていることは、
“ベースになる面白さ”なんです。
たとえば僕がむかし遊んだ『スーパーマリオ』は、
ただ動かしているだけで面白かったんです。
- 岩田
- マリオをつくっている人たちも
マリオを動かすだけでも面白くなるようにと考えて、
あのゲームはつくられていますよね。 - 本間
- マリオを自分で動かすことさえできればそれで満足で、
特別に複雑なことができなくてもいいくらいなんですね。
そのようにゲームの根本の部分で
単純なアクションをするだけで、
面白いものにする必要があると思うんです。 - 岩田
- 繰り返すこと自体が面白くなければ、
単なる作業になってしまったり、
イベントに依存したゲームになってしまいますからね。 - 本間
- そうですそうです。
ですから最初に試作品をつくる段階で、
「これが面白いんだ」ということを特定したかったんです。
Wiiリモコンで敵を斬るだけの動作が、
それだけで爽快感があるというふうにしなきゃいけないと。
そこで、基礎の面白さを出すために、
何度も試行錯誤を繰り返し
時間をたっぷりかけて試作品をつくりました。
しっかり土台をつくることができれば
そのあとに作戦や戦術みたいなものを加えることで、
どんどん面白さが積み上がっていくと考えたんです。